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冥合奇譚 ~月龍の章~  作者: 月島 成生
第十一章

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第一話 気づき


 月龍(ユエルン)は一人、卓を囲む(こしかけ)に座ったまま酒を煽っていた。

 卓にはいつものように、(レン)が用意してくれた食事が並んでいる。本当ならば今頃、二人でこれを食べていただろうか。

 それとも食事を終え、夜の儀式に入っていた頃かもしれない。

 考えて、身が竦む。蓮は今まさに、違う男を相手にしている可能性があるのだから。


 ――まさか。

 手にした盃を一気に煽って、さらに酒を注ぐ。


 あの蓮が、嫌う男に体を許せるはずがない。以前のことは、相手が亮だったから辛抱できたのだ。亮も言っていたではないか、蓮は泣いていたと。

 あの亮を相手にさえ泣いたというなら、楊闢(ヨウヘキ)で耐えられるはずがない。まず間違いなく、逃げ戻ってくるはずだ。


 蓮が謝ってきたら、これでよかったのだと抱きしめよう。試してしまったことを詫びて、本当は愛しているのだと囁いて――


 自分勝手に考えながらも、不安が残る。蓮が逃げ戻ってくるのは、月龍のために恥辱に耐えられなかったときだ。

 そのときにはもう、気づいてしまっているのではないか。月龍という男に、蓮が身を犠牲にするほどの価値などないのだと。

 そうしたらきっと、帰ってくるのと同時に別れを言い渡される。


 どうすればいい。どうすれば蓮を引き留められる?


 考えている途中で、思う。

 もし蓮が月龍を見限らず、「命令」を守るために楊闢を受け入れてしまっていたら――と。


 ぞわりと、言い知れぬ恐怖が足元から這い上がってくる。そのようなはずがない、彼女はあの男を嫌っているのだからと、結局は思考が戻る。


 しかしふと、ある可能性に気づいた。もしかしたら蓮も、月龍を試しているのではないか、と。

 月龍が、逃げ戻ってくる蓮を待っているように、蓮も月龍が引き戻しに来るのを――出世よりも蓮を選び取るのを待っているのではないか。


 思いついた瞬間、立ち上がる。何故今まで気づかなかったのだろう。蓮の期待を――そして後を追い、蓮を止めることが想いを伝える手段になると。


 時間は――どれくらい経っているのだろうか。思考の袋小路に迷い込み、酒を飲んでいたせいで時間の感覚がよくわからない。

 けれどまだ、深夜と呼ぶには早いくらいではないか。


 だとすれば、間に合うはずだ。


 月龍は意を決して、踵を返した。

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