1-4.取立人が帰ってきた!?
「はぁっ!はぁっ!こ、これで外壁はキレイになったぞ!」
「今度の署長は中々できるようですね。ここまで水魔法を使えるとは驚きです」
「おい!?スタイアは何もしてねえじゃねえか!?お前もやれよ!?」
「私は秘書ですから、署長の行動を記録するのに多忙なのです。他のセクションの清掃状況の確認もあるので」
「突っ立って見てただけじゃねえかよ···」
「心外ですね。とりあえず今日はこれで終わりとしましょう」
「え?もう終わりか?まぁ、オレの魔力も空っぽに近いみたいだしな」
「いえ、終業時刻です。残業したら署員に残業代を支払わないといけなくなります」
「そっちかよ!?」
「我々の給料は国民から搾り···、ゴホン。大事な税金が原資なのですよ?全員に1時間残業させたら総務部から『基本給だけじゃねえのかよ!?給料計算が大変になったじゃねえか!ゴルァ!!』とクレームが来ますし、それこそ納税した何人もの税金が使われてしまうのです。回収するのにどれだけ脅迫する労力が必要か···」
「···もはや隠す気もねえのかよ?えげつねえなぁ〜。じゃあ、今日はやめだ」
「お疲れ様でした。失礼します」
「お前もかよ···」
「公務員ですから。それでは」
昼過ぎから全員で清掃活動を行なった。まずは外壁をキレイにしようと思って、オレは水魔法で高圧洗浄してみたのさ。これがめっちゃ良かった!
某深夜の妙にハイテンションなテレビショッピングの製品のように、くっきりと汚れてるところと洗浄した後が違ってたんだよ。
あまりにもキレイになったので、調子こいて全周やっちまってヘトヘトになっちまったが、いい仕事した!って気分になってたんだ。
そしたらだ。さっきのスタイアのセリフだ···。元の世界では残業代で生活を支えていたオレとしてはビックリだったが、これが本来の形なんだろうなぁ〜。
まぁ、ちょうどいい。オレも疲れてたので、今日はここまでにした。そして帰る道中にあった食堂にメシを食いに行った。
食堂の名前は『にゃんこ亭』。かわいい名前だなぁ〜。
「いらっしゃい!」
予想通り猫の獣人さんがご主人だったわ。見た目でも癒されるなぁ〜!
「一人だけど」
「空いてるカウンターに座ってね!何にする?」
「···初めてだからオススメ定食で」
「はいよ!オススメ一丁!」
なんだか日本の某お店に似てるなぁ〜。異世界なのに異世界の感覚がしねえよなぁ〜。
···あっ!?そうか!この世界の神は日本人のおっさんだったな。だから日本っぽいんだな。まぁオレとしては雰囲気が似てる方が過ごしやすくていいけどな。
そんな事を考えてたら定食がやって来た。
「はいよ!オススメだよ。880ジールね!」
「じゃ、これで」
「まいど〜!」
この世界の通貨の単位は『ジール』。1ジールは1円って感覚だな。これはありがたいな。海外に出かけると為替考えたりで面倒だったしな。
さて定食は···?こ、これは!?
···さっぱりわからん肉を使った焼き肉だった。牛?豚?鳥?それでもなさそうだわ···。
とりあえず注文したんだから食ってみるか···。んっ!?こ、これは!?
「うまいっ!!」
食感もよくわからんが、これはやみつきになりそうだな!酒が飲みたくなってくるぞ!
「すいませ〜ん!お酒ってあります?」
「ビール、焼酎、ウイスキーがありますよ〜!」
「じゃあビールで!」
「はーい!追加ビールいただきました〜!」
そして出てきたのは瓶ビールだった!なになに?銘柄は···?
···おい?この銘柄考えたヤツ!わかってやってるだろ!?異世界だけど権利問題発生しかねんぞ!?ラベルに書いてあったのは···、
『ユウヒ アルティメットドゥラァアアィイ!!』
···方角が反対の銘柄は好きだったけどさ。これもあの神の仕業だな!?
これも頼んじまった以上、飲むしかない!そう思って飲むと···!?
「のどごしさわやか〜!」
···ここを常連の店とする!メシも酒もうまぁああいいぃ〜!
ほどよい酔い加減で満足して家に帰って寝ました。
翌日···。
オレは出勤すると、署長室の片付けをすることにした。床の血の跡もなんとかキレイにできた。なんで殺人現場の片付けをしてるんだ?オレ?
ちなみに他の連中には自分の机周りをキレイにするように命じた。これでだいぶキレイになったな!やっぱり人が来る施設はキレイでないといかん!整理整頓できていれば仕事の効率も上がるし、キチンと仕事してるって来客に見せれるからな。
昼になり、出勤時の道中にあった惣菜屋で買ったサンドイッチを部屋で食べる。すると、ノックがされた。
「どうぞ〜!カギはかかってないよ」
バァーーン!!
勢いよく扉が開いた!おいおい···。扉の前に誰かいたらふっ飛ばされる勢いだったぞ?扉の蝶番、大丈夫か?
「おー!?お前が新しい署長だなーー!?なんか弱っちそうだけど···、大丈夫か?」
「え~っと、どちら様です?」
「おっと!?あたいの事聞いてねえのかよ?ヴェロッタってんだ!この貧乏税務署の唯一の取立人だぜ!」
···取立人?あぁ~、そう言えばあのギャングが怖がってたのが···、この少女?背中には背丈に見合わないドデカい大ハンマーがあるけど?何に使うのさ···?
それに、昨日の昼に帰ってくるってギャングが言ってたけど1日ズレたなぁ。何かあったのかな?
「え〜っと、ヴェロッタ?オレはコウってんだ。話によると、昨日帰って来る予定って聞いてたけど?」
「あぁ〜!それな!あたい方向オンチだから、迷って帰って来れなかったんだよなぁ!ははは!」
「···え?それじゃあ、どうやって取り立ててるんだ?」
「わからん時は人に聞く!」
「それじゃあウソつかれたらダメじゃん」
「聞く時にはこの愛用の大ハンマーを突きつけてるからな。正直に話さなかったらぺしゃんこになるってみんなわかってるから、ウソつかれたことないぜ?」
「それ脅迫!!」
「あのな···?あたいは取立人なんだから使える手はすべて使う!ぜーきん取る時は実力行使も許されてるからな!」
「取立する人以外に実力行使はダメだろうが!?」
「···今度の署長は神経質なヤツだなぁ〜。隠し立てしたら犯人隠匿で堂々と殺れるじゃんか〜」
「本当に知らなかったらどうすんだよ!?」
「そんなもんは目を見ればわかるって!」
「目?」
「そう。隠したい事があるヤツはだいたいあたいの目を見ない。な?簡単だろ?」
そう言われてもオレにはできんぞ?
なるほどなぁ〜。ここまでの話を要約すると、取立人はかなりの権限を持っている事と実力行使OKって事ね。
···おっそろしいわぁ〜。元の世界の『マルサ』もびっくりじゃねえかよ?命まで取るって···。まさに某世紀末の伝説に近いぞ!?
「ヴェロッタ。次の取立てはオレも立ち会うぞ」
「え?来んの?面白くもねえぞ?」
「仕事なんだから面白くする必要はねえよ。どんな仕事なのか知るのも署長の仕事だ」
「変わってんなぁ〜。初めて言われたぜ···。まぁいいけどな。スタイア!次の目標は?」
「4丁目の『エチゴヤ商会』ですね。粉飾決算して所得隠しが判明したので、37億5647万ジールを追徴課税してます。督促もしましたがまだ支払われてません。明日の昼が支払期限です」
「おっと!?久々に大口キターーー!!そんじゃあがっぽり稼いでくるぜ!!」
···こいつら、全員感覚おかしいわ!税金は稼ぐもんじゃねえわ!!
この王国では時間内に仕事を終わらせるのが常識です。いや、それが当たり前なんですが、日本は残業代で稼がないと···、という会社が無数にありますからね。
時間内に終わらせられない=仕事できないか上司が無能って海外では思われるようですよ。残業代が会社の利益を食っちゃいますからね。海外は厳しいのです。
ですのでこの王国の公務員はかなりハードです。残業すれば税金泥棒扱いされちゃうのでね。市民から···。魔獣に対する防衛費が高いから予算も厳しそうですよ。
さて、お気づきになったかと思いますが、追徴課税の金額、『皆殺しな!』の語呂ですね(笑)!殺意ある金額ですよ~。
さて次回予告ですが、コウくんはヴェロッタについて行って取立の強制執行に立会います。
現場に行くと、野次馬がいっぱいでした!ショーでもないのにどうして集まったんでしょうか?
それではお楽しみに〜!




