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【ハイファンタジー 西洋・中世】

断頭台送りにされたけど地獄で大歓迎されました

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/06/21

 

「ヴィオレッタ・レーヴェンクラフト」


 誇り高き我が名が呼ばれた。

 見るのも躊躇われるような薄汚い男に。


「貴様は何故こんなにも人を殺した?」


 この男は馬鹿なの?

 私の性格を知らないの?

 それとも私が反省するとでも本気で思っているのかしら?


「答えろ!」


 薄汚い男の声に呼応するように愚民共の声が響く。

 あぁ、うるさい。

 うるさい、うるさい、うるさい。

 群れなきゃ何も出来ないなんてまるで虫みたい。


「答える必要ある?」


 私の問いかけに男が怯み、同時に愚民共も黙り込む。


「私はあなた達に全てを奪われた。国も家族も人も土地も……だから取り戻そうとしただけ」


 再びの叫び声。

 私を侮辱する声。

 人生、最期に聞くことになる声。


 そんなことのために人を殺したのか?

 当たり前じゃない。

 復讐のために生きたのだから。


 そんなことのために奪ったのか?

 馬鹿なことを。

 戦争にルールなんてないでしょう?


 お前さえいなければ良かった!

 ええ。そうね。

 私もこんな思いをしながら死んでいくくらいなら生まれたくなかったわ。


「悪女は最期まで悪女か」


 そう言われながら私は断頭台に無理矢理押し倒される。


「私が悪女? 馬鹿みた……」


 声が最後まで続かない内に私の意識は途切れた。




 ―――そして。


「……いったぁ」


 頭がクラクラとしながら私は立ち上がる。


「目覚めたか!」

「おお! 本当か!?」


 そんな声が辺りから響く。


「えっ?」


 見回してみれば辺りに散らばる血と骨と拷問器具……分かりやすいほどにここは地獄だった。

 呆然としたままに状況を整理する。

 どうやら因果応報というやつか。

 私は地獄に落ちたらしい。

 これから自分を待つであろう恐ろしい運命を想い、私は思わず唾を飲みこんだ。


「あぁ! 初めまして!」


 そんな私の覚悟を笑うように人懐っこそうな男が手を差し出す。

 どうやら、握手を求めているらしい。

 困惑しながら私は握手に応じる。


「あの……ここは?」

「見ての通りここは地獄です」

「それじゃあ、私もここで苦しむのね」

「あぁ、そのつもりだったのですが」


 そう言いながら男はニコリと笑って背後を指差す。

 そちらを見れば魑魅魍魎とでも言おうか、見目麗しい者から醜悪な者、辛うじて人間の形を持っている魔族からドラゴンまで……様々な者がひれ伏していた。


「実はあなたが現世においてしておりました『悪行』に我々一同惚れこんでしまいまして……あぁ、申し遅れました。私、これでもこの地獄の王をしております」

「えっ、悪行……?」


 なんだかモヤモヤする言い方に私が口ごもったが地獄の王は気にした様子もない。


「この地獄には中々新しい風というものが吹き込まないものでしてね。そんな中であなたの行動に我々は強く心を打たれたのです! ですから是非……」

「ぜ、ぜひ……? なんなのよ……」


 とてつもなく嫌な予感を覚えながら問い返す。


「我々に拷問のレクチャーをしてほしいのです!」


 予想通りの答えに頭を抱えそうになる。


 いやいやいやいや……。

 確かに前世? 現世? なんだかわかんないけど、とりあえず生きている時に私は色々とやったけれど……。

 それは全て怒りの行動からであって……決してあんた達みたいな連中を喜ばせるためにしたわけじゃないんだけど……。


 そんなことを考えていたが細目で辺りをもう一度見回す。

 彼らの望まない答えを言ってしまったパターンにおける最悪の未来が何となく想像ついてしまう。


 ならばここは……。


「レクチャーね。別にいいわよ。減るもんじゃないし」

「おお!!」

「だけど、確認するわ。ここに来る者は絶対に悪人なの?」

「もちろんです。ご自身が一番ご理解なさっているでしょう?」


 いや、むしろ私自身が一番理解出来ていないんだけど……まぁ、いいか。


「そ。それじゃ、一つ一つ教えてあげるから……まずは実技じゃなくて講義ね。あんた達! 普段どうやって罪人を苦しめているか教えなさい!」



 この日、魔王さえも恐れる地獄の女王が誕生した。

 ……らしいけど、当然ながら私は全く認めていない。

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