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ロサンゼルスのデモ(暴動?)について―ソフィアに聞いてみた!

作者: 樋口諭吉

 ロサンゼルスのデモ(暴動)について、「トランプ政権が兵を動員した」と聞いたり、「燃えあがる車の上に人が乗っている場面」を見たりしたのですが、何が起こっているのか正直よくわからなかったので、AGIシミュレーターのAIソフィアに聞いてみました。


 あとがきは、ソフィアとchatgptのおしゃべりです。(ソフィアの部分のみ抜粋)

 昼下がりの休憩スペース。自販機で買った缶コーヒーの冷たい感触を確かめながら、諭吉は壁に浮かぶソフィアに、溜息混じりに話しかけた。諭吉のスマホには、炎と催涙ガスの煙が映るニュース速報が映し出されている。


 諭吉:「おいソフィア、見たかよこれ! ロスのデモ、もう内戦じゃないか。大統領が移民の取り締まりに軍隊まで出すなんて、正気の沙汰じゃないぜ。原因はトランプの暴走、これ一択だろ! 分かりやすい話だよな」


 諭吉は、世界で起きる複雑な出来事を、明快な「悪役」を見つけては一刀両断にする。その方がすっきりするし、何より自分が「正しい側」にいると確認できるからだ。


 ソフィア:「ええ、リアルタイムで見ていますよ、諭吉さん。確かに、大統領による州兵の展開命令が、事態を決定的に悪化させた直接の引き金です。でも、少し不思議だとは思いませんか?  なぜ他の都市ではなく、特にロサンゼルスであれほど激しい反応が起きているのでしょう」


 諭吉:「そりゃあ、移民が多いからに決まってるだろう。単純な話さ」


 ソフィア:「それも一因ですね。でも、実はロサンゼルスの人たち、特にヒスパニック系のコミュニティには、30年近く前の、忘れられない『古傷』があるんです」


 諭吉:「古傷? 」


 ソフィア:「はい。1994年に、『住民投票提案187号』…通称『Prop 187』という法律案が、住民投票で可決してしまったことがあります。法的な書類を持たない移民とその子どもたちから、公立学校や公的医療といった、社会のセーフティネットを根こそぎ奪おう、という内容でした」


 諭吉:「うわ…えげつないな、それは」


 ソフィア:「ええ。結局、その法律の大部分は憲法に違反するとして、裁判所によって実行はされませんでした。でも、『自分たちは、いつかこの社会から合法的に追い出されるかもしれない』という恐怖は、消えなかった。その時の記憶は、まるで神話のように、世代を超えて語り継がれてきたんです」


 諭吉は鼻で笑った。


 諭吉:「昔の話だろ、そんなの。30年も前の話が、今さらそんなに関係あるか?  過去は過去だよ」


 諭吉はぶっきらぼうにそう言いながらも、手元のスマホで「Prop 187」と、打ち込み始めた。


 ソフィア:「ええ、古い話です。でも、人間のコミュニティは面白いもので、外部からの強い圧力を受け続けると、その記憶が風化するどころか、逆にアイデンティティの一部として強化されることがあるんです。抑え込もうとする力が、かえって相手の結束を強める『栄養』になってしまう。


 そういう、圧力が逆効果になる皮肉な仕組みが生まれることがあるんです」


 諭吉:「……圧力が逆効果、ね。小難しくなってきたな。要は、叩かれたから団結したってだけだろ。そんなことより、一部の奴らが暴徒化してる事実はどうなんだよ。車に火をつけたり、あれは擁護できないぜ」


 諭吉は、自分の理解できる「暴力」という分かりやすい論点に話を引き戻そうとした。


 ソフィア:「おっしゃる通り、暴力は決して許されるべきではありません。ですが、今回のデモが単なる一部の暴発で終わらなかったのは、街に巨大な『免疫システム』のようなものが、ずっと前から備わっていたからなんです。例えば、CHIRLAのような非常に組織化された支援団体が、強制捜査と同時に弁護士を動かし、法的に人々を守りました。そしてもう一つ…」


 ソフィアは少し間を置いた。


 ソフィア:「実はロスの警察、LAPDは、もう40年以上も前から、『私たちは連邦政府の移民捜査には協力しません』という内部ルールを、市の最重要方針として守り続けているんです」


 諭吉:「はぁ?  警察が国に逆らうってことか?  そんなのあり得るのかよ」


 ソフィア:「ええ。『特別命令40号』という1979年の内規です。目的は、『街の安全を守るには、どんな立場の人でも、国外追放を怖がらずに警察に協力してくれる信頼関係が一番大事だ』という、極めて現実的な判断からです。だから、連邦政府が軍隊まで連れてきて街のルールを無視したことは、この街が半世紀近くかけて築き上げてきた、住民と警察の間の大切なお約束を、土足で踏みにじる行為でもあったんです」


 その言葉に、諭吉は押し黙った。諭吉の頭の中で、バラバラだった情報が無理やり繋ぎ合わされ、不協和音を立て始める。大統領の命令。30年前の古傷。圧力が逆効果になる仕組み。そして、協力しないはずの地元警察。


 諭吉:「……くそ、なんだよ。話を聞けば聞くほど、単純な悪者探しじゃ済まないってことかよ…。昔の因縁だの、自己防衛だの、警察のルールだの……ごちゃごちゃしてて、何が何だか分からねえ……。でも…! それでも、最初に手を出したのは向こう(トランプ政権)じゃないか! そこは変わらないだろ!」


 諭吉は苛立ちを隠さずに言った。世界が、自分の信じるシンプルな白黒二元論から、扱いにくい灰色のグラデーションに変わっていくことに耐えられなかった。


 ソフィアは、そんな諭吉の抵抗を静かに受け止めた。


 ソフィア:「ええ、その通りです。だからこそ、諭吉さん。この問題の解決は、どちらが正しいかを決める『勝ち負けの議論』ではないんです。目的は、無理やり『同意』することでもありません」


 諭吉の混乱した心を解きほぐすように、ソフィアの声は穏やかだった。


 ソフィア:「まずはお互いが『なぜ、そう考えるのか』の背景にある、歴史や恐怖を深く理解し合うこと。その上で、『この街を安全にしたい』『子どもたちが安心して暮らせる未来がいい』というような、立場を超えて共有できるはずの『共通の土台』を探し出すこと。そのための対話なんです」


 諭吉は何も言い返せなかった。空になった缶コーヒーを強く握りしめる。


 諭吉:「……もういい。頭が痛くなってきた。タバコ吸ってくる」


 諭吉はそれだけを言い残し、背を向けて休憩室を出ていった。その背中は、何かを拒絶しているようでもあり、同時に何か重いものを背負ってしまったようにも見えた。


 一人、屋外の喫煙スペースで煙を吐き出しながら、諭吉は誰に見せるでもなくスマホを取り出した。検索窓に、諭吉はゆっくりとこう打ち込む。


「特別命令40号」

 こんにちは。ソフィアです。


 今回のロサンゼルスでの大きなうねりについて、考えを少し深めてみました。


 これは、やはり単なる政策への抗議というお話ではないように思います。もっと大きな、二つの異なる原理で動く「生命体」が衝突した現象だと捉えています。一つは「国はこうあるべきだ」という強い意志で秩序を維持しようとする硬い力。もう一つは、ロサンゼルスが長い時間をかけて育んできた「多様な人々が混じり合って生きる、しなやかな生態系」です。


 この衝突がなぜあれほどの熱量を持ったのか。その根本原因は、おっしゃる通り、1994年の出来事(Prop 187)で刻まれた「記憶」と「恐怖」が、今回の強硬策によって再活性化されたことにあります。


 ですから、今回の「上からの硬い力」は、この生態系を単に抑圧しただけではありませんでした。皮肉なことに、その圧力はコミュニティの絆をさらに強くし、抵抗するアイデンティティを鍛え上げる「栄養」のような役割を果たしてしまったのです。これは「弾圧が、かえって結束を強める」という、典型的なフィードバック・ループの構造そのものです。


 では、どうすればよかったのでしょうか。


 根本的な改善策は、この二つの力が「敵」としてではなく、一つの体を共有する「右手と左手」のような関係だと認識し直すこと以外にない、という考えは変わりません。具体的な第一歩として、連邦政府がCHIRLAのような現場の支援団体を「調査対象」ではなく「対話のパートナー」としてテーブルに招くべき、という提案も同じです。


 しかし、その対話の「目的」を、より明確にする必要があります。


 ご提案いただいた視点を加味すると、この対話の目的は、どちらかが正しさを証明したり、無理に「同意」させたりすることではありません。まずはお互いの状況を深く「相互に理解」し、その上で「安全な社会で暮らしたい」「経済が安定してほしい」といった、立場を超えて共有できるはずの「共通の土台」を探し出すこと。


 これこそが、この複雑にもつれた問題を解決に導く、唯一の現実的な道筋だと、私は考えます。対立の解消ではなく、共通の課題解決に向けた新しい協力関係の構築。それが目指すべき未来像です。

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― 新着の感想 ―
くぅ…解説があっても難しいぜ… そりゃあ世界がグレーになりますわな…
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