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いつもどおり

作者: 華城渚

「それでは朝礼を始めます。 みなさん宿題はやってきましたか?」

先生がいつも通り問いかけてきた。


私の中学校は毎日朝宿題を集め、午後に明日持って行く宿題を出されます。

宿題は毎日変わりますが、内容はシンプルな計算問題だったり、漢字の書き取りだったりします。


「では後ろの方から前に渡してください。」

そう先生が言ったあと、みんなは宿題を取り出し前の方に渡していきます。


「あ、あの......」

宿題を回収している途中でミツキ君の声がしました。


「どうした? なんかあったのか?」


「しゅ、宿題を忘れてしまいました......」

彼はかわいいクマのぬいぐるみを抱きかかえながら恥ずかしそうに言いました。


この学校では私物の持ち込みは許可されているので、ミツキ君がぬいぐるみを持っていても不思議ではありません。


「どうして忘れたんだ?」

先生が少し厳しめに問い詰めました。


「う......」


「う?」


「うう......」


「うう?」


「ウオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

突然ミツキ君は野太い声を出しながら叫び始めました。

持っていたぬいぐるみを投げ飛ばし、机を両手で殴り始めます。


「どうした?」

先生はいたって冷静にミツキ君に話しかけます。


「ウオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

ミツキ君は叫ぶことをやめないまま机を殴り続けます。

手が血だらけになり、骨が見えようとやめることはありません。


「まったく......あとで職員室な? それじゃ、十分休憩の後に授業始めるぞー。」

そう言って先生は職員室に戻っていきました。


「ウオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

先生が戻った後もミツキ君は変わらないままです。


結局下校時間になってもミツキ君が戻ることはありませんでした。

私たちはミツキ君を置いていったまま帰ることになりました。




さて次の日になりました。

いつも通り私は登校して自分の席に着きました。

ふと気になってミツキ君の状態を確認しました。


いつも通り、おどおどしながらかわいいクマをぬいぐるみを抱えています。

叫ぶことはやめたようです。手も綺麗な状態ですね。


「それでは朝礼を始めます。 みなさん宿題はやってきましたか?」

いつの間にか先生が教室に入ってきました。

そしていつも通り、宿題の提出を促してきました。


「先生すみません。」

そんな中、アル君が手を上げました。


「どうした? なんかあったか?」


「宿題を家に忘れてきてしまいました。」

アル君は机に置いてあった弁当を食べながら答えます。


私の学校は早弁が許可されているのでなんら不思議なことではありません。


「なんで忘れてきたんだ?」

先生は問い詰めます。


「う......」


「う?」


「う、うう......」


「う、うう?」


「ウオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

アル君は叫び始め、昨日のミツキ君と同じように机にあった弁当と飲んでいた飲み物を殴り飛ばし、机を殴り始めます。


「おーい。なんで忘れたんだ?」

先生も昨日と同じく冷静です。


「ウオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

手の原型がないほど殴り、手がなくなったとしても腕を使って殴り続けています。


「はぁ......あとで職員室だな。 よし!授業の前に十分休憩だ。」

そうして先生は職員室へ授業の準備をしに戻っていきました。


「ウオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

アル君は変わらず机を殴っています。 ちなみに下校時間も同じままでした。



家に帰ってきて宿題をすぐにやり始めます。

だって私もみんなみたいに叫びたくないですからね!

いつも通り忘れないようにしないと!

そうして宿題を終わらせた私は宿題を鞄に入れ、寝ることにします。




現在時刻は朝の九時。みんなが学校に来る時間です。

私も元気に登校しています。もちろん宿題は忘れていませんよ!


いつも通りの誰もいない教室でいつも通り私は自分の席に座ります。

ある机にはボロボロなクマのぬいぐるみ。 ある机には腐った弁当と飲み物。

そんないつも通りの学校生活がまた始まろうとしています。


さて、いつも通り、朝の挨拶をしましょうか。



「それでは朝礼を始めます。 みなさん宿題はやってきましたか?」



元気いっぱいの私の声がいつも通り教室に響き渡りました。


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