第4話 うちの子不良説
「いやー、ラジオ楽しかったねぇ」
「な。ただ駄弁ってただけだけど」
「そういうのがいいんじゃーん‼」
夕食後、さほろ、優、透花が後片付けを三人で分担しつつ喋っていたそのときだった。
「…………あれ?」
「透花?どうかした?」
「この紙って…………」
透花がタオルで手を拭き、あるものを手に取った。
そう、あの封筒である。
「え、なんであんの⁉」
「今日のお題はもうやったよな…………?」
「…………いや、もうやることは1つでしょ」
透花は封筒をそっと元の場所に戻した。
「あ、そういえばこの前さー…………」
「ごめん透花、ただでさえ混乱してるこの状況で、うちらにさっきまでの会話の続きはできん」
「え?そう?」
さほろは封筒を取ると、中身を開けた。
「カンペに〝お題は1日あたり1つ〟っていうのがあったよね。てことは、2つ目が出てきたことに対して何かしら説明があるはず…………」
「…………いや、待てさほろ。いきなりこんなとこに連れてくるような奴だぞ。そんな親切なことあるか?」
「うーん、確かに」
「親切だったらそもそも誘拐なんてしないよね」
酷い言われ様であるが、さほろたちからしてみれば当然のことである。
そのとき、優が、ん?と言った。
「…………いや違え、誘拐じゃねぇわ。〝ここは現実の時間が流れていない〟っていう設定あるじゃんか」
「あ」
「え」
そうなの⁉と叫ぶ透花にさほろが頷きながら、缶から出したカンペを見せる。
「ここ、見てみ」
「……………………チッ」
(SHITAUCHI)
透花の思いがけない柄の悪さに、さほろが衝撃を受けた。
と言ってもただの舌打ちで、誰だってするものだが。
「透花…………そんな子に育てた覚えはありません‼」
「おうおうどうした」
「優さんんー‼透花が不良になったー‼」
「いやまじで落ち着け?透花は元から不良だぞ」
「優ちゃんいけずー‼でもカワイイからいいや‼」
「カワイイはやめろ」
「…………で、何の話だっけ」
「この空間は現実の時間が流れてないから、周りは俺たちが誘拐されたと認識することはできないし訴えようとしても証拠になるものがないって話」
「え?そこまで話してたっけ?」
存在しない記憶は置いといて、という透花の切り替えの早さに対応したさほろと優の3人。
ごくりと喉を鳴らしながら透花が封筒を開けた。
「紙が2枚ある。お題と…………カンペだ」
「それじゃカンペからどうぞ」
「えーっとねー」
〝やってもやんなくてもどっちでもいいよ^^〟
「だって」
「なんか腹立つ~~~」
「^^が余計に腹立つな」
「因みにお題は好きなコスプレだって」
「あー、内容によっては規制かかるやつ…………」
「ピー音連発かもしれないギリギリのお題来たな」
「強制じゃないならやんなくても良いよね?」
「良いだろ。ピー音ばっかじゃつまんねえし」
「はいっじゃあやーめよっ!」
「紙開いて1分でその結論に至れる辺り、流石だと思うよ2人共」
さほろが苦笑いしながらそう言うと、透花は悪いことを思いついたようににやりと笑った。
「そりゃまぁ、私と優ちゃんで組とか統一させたし?やべえやつ全員ノしたことあるし?連携は随一って言うか?」
「やっぱうちの子不良…………⁉」
「おいこら、話盛ってんじゃねえぞ。ヤンキーに手ェ出したの俺だけだろうが」
「エッ何それどゆこと??????」
説明詳しく、と詰め寄るさほろに、優は何の気なしに軽く言った。
「俺、古都花っていう友達がいんだけどさ」
「うん?」
「そいつ、なんかヤンキーに絡まれてたんよ。カツアゲってやつ?」
「うおおマジか」
「で、一発かまして逃げてる間に仲間呼ばれてさ」
「おっとマジか」
「全員ぶっ飛ばした」
「流石にも程がある」
そのとき、さほろは気づいてしまった。
「…………透花、何の関係もなくない?」
「…………………………………………てへぺろ☆」
「だから言ったろ、話は盛るなって」
さほろが透花にデコピンをして、冷蔵庫から緑茶を出してコップに注いだ。
「今日は疲れたし早めに寝るわ。2人どうする?」
「俺も寝る。なんか眠い」
「私、今日寝れるかなぁ?楽しすぎて寝れないかも」
「あぁ、修学旅行の夜的な、興奮する感じ」
「そうそうそんな感じ!」
「大丈夫だろ、俺もさほろも初日から爆睡してるし」
「よっしゃ寝るべ。その前にお茶飲む人ー」
「はーい!」
「あ、俺にも」
「はいよー」
それぞれお茶をぐいっと飲み干し、寝室へ向かう。
「明日のお題は何だろうねー?」
「話しやすいやつがいいなー」
「それはそうなんだよな」