表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

第2話 ラジオ

翌日、さほろと優は起床した。


「おはよー優さん」

「おはようさほろ」


〝朝は絶対に白いご飯!〟と言ったさほろの要望通り、朝食は白米と味噌汁、漬物である。


「今日のお題何だろーね」

「な。食料棚を見たけど、何も無かったし」

「え、これまさか、指示書の位置って毎回変わる感じ?」

「そうじゃね?」

「うーわダルぅ…………毎回探さなきゃじゃん」

「まぁここにいたら運動の機会も減るし、探す分だけ運動できると思えば健康的だろ」

「動きたくないんだよお」

「わかるわかる。私だってやだもん」


いつの間にか椅子を用意して座り、食卓に肘をつきながらうんうん、と頷くのは透花だった。


「…………え、どっから来た⁉」

「どこからって、あのドアから」

「あのドアって外に出る用じゃねえの?」

「違うよ。あれ、外〝から〟のドアだもん」

「??????」


さほろは理解できないと思いつつ理解できないという顔をしていると、優が口を開いた。


「…………さほろ、昨日のカンペあるか」

「え?う、うん。ここに…………」


昨日、クッキーを2人で食べ尽くしたさほろと優は、空いた缶にお題とカンペを入れておいたのだ。

さほろは缶をぱかっと開けると、カンペを取り出した。


「えーと……………………あった」

「?」

「昨日読み上げた内容にもちゃんと書いてある。〝外()()の扉は1つだけです〟って」

「じゃあ、あれ…………うちらが出る用じゃないってこと⁉」

「そういうことだな」

「嘘だろ‼‼いや此処は思った以上に快適だったけど‼‼」


朝確認したら、食べたはずのポテチもクッキーもジュースもアイスも全部元の数に戻っていた。

どういうシステムなのかはわからないしわかりたくもないが、便利なものである。


「って!違うだろ、俺らはお題も探さないと!」

「あっ、そっか」

「お題?」


優とさほろの会話に、透花が聞いた。

あぁそうか、と納得しながら、さほろは透花に昨日のことを話した。


「かくかくしかじかうんぬんかんぬんって訳だよ」

「へー、めっちゃ面白そう!やりたいやりたい!」


ノリの良い子で良かったと、さほろは心の底から思ってしまった。


「よし、じゃあお題探しますか」

「おー」

「おー!!」


取り敢えず全部のドアを開けるか、と棚からクローゼットからと全ての扉を開けて回った。


「ない!!」

「透花ー、そんな堂々と言うことじゃないよー」


透花が開けて回った扉を、さほろが閉めて回る。


「じゃあ1つずつ奥の方まで見てみるか。昨日は食料棚の奥の方に貼り付けてあったからな」

「りょ!!」


そう言った透花が最初に飛びついたのは、冷凍庫だった。


「なんで1番寒いとこから行くの⁉」

「アイスあるかなって…………」

「あるけども‼」


趣旨変わっとるがな、と呟いたさほろは、


「あ」


と言葉が漏れ出てしまった。


「さほろー?どした?」

「…………あった」

「え⁉」


優が秒でさほろたちの元まで来る。

さほろは、アイスケーキの上で冷気の所為でひんやりした便箋用の封筒を手に取った。


「へえー、これが噂の」

「早速開けてみるか」

「うん。とその前に、何かおつまみを…………」

「じゃ俺は飲み物用意するわ。透花、皿出して」

「はーい」


あれよあれよという間に諸々の準備が完了し、それぞれの椅子に座る。

今回はさほろが見つけたので、お題を最初に見るのもさほろだ。


「えーと?今日のお題は…………」


封筒から中身を取り出して開く。

そこには至ってシンプルな6文字が書かれていた。


〝ラジオをやれ〟


「…………なんでやねん」


さほろが突っ込み…………というより、呆れながら呟いた。




食卓の上には、ラジオ放送用の器材が用意されている。

さほろはヘッドセットをつけ、声を出した。


「はい!という訳で始まりましたー〝ジョッシーズラジオ〟~」

「ナビゲーターの透花でーす!」

「優でーす」

「さほろでーす。よろしくお願いしまーす」


まずは形からということで、模擬セットを用意してもらったのだ。

〝外には出られないが、大抵のことは叶う〟という部屋の性質を利用したのだが、これがなかなか便利なものである。


「えー、今回はお悩み相談ということで、いくつかお便りが来ております」

「マジか。ありがたいな」

「んね」

「お便りって言っても、AIに考えてもらったらしいよ?」

「えぇ…………何だよその悲しい裏話…………」

「ちょ、透花。そういうことはしーで」

「はーい」


こほん、と咳払いし、気を取り直してさほろがお便りを読む。


「はいじゃあ1つめ、ラジオネームたぬきさんからのお便りです」

「たぬきさんあざまーす」

「あざまーす‼」

「えーと、〝最近、クラスメイトの男の子に告白されました。断ろうと思っているのですが、どう断ろうか悩んでいます。彼は見た目が怖いので断りにくいです。どう断ればいいですか?〟だって」

「え待って、たぬきさん告られたん?その人から私に乗り換えない?」

「おいこら透花やめろ」


ぺしっと透花の頭を叩くさほろを見た優が、笑いながら言った。


「んでもって断ろうと思えんのもすげーよな。〝返事に悩んでいます〟じゃなくて〝どう断ろうか悩んでいます〟だし」

「もうシンプルにごめんなさいで良いような気もするけど…………」

「いや‼ダメだよさほろ‼やるならもっと強く‼大胆に‼」

「えでも見た目怖いんでしょ?」

「関係ない‼強気で行くとしたら、さほろならどう断る⁉」


透花の圧に気圧され、むむむ…………と考えたさほろは、1つの答えに辿り着いた。

それは、


「〝3次元なんかお呼びじゃねーんだよ〟」

「怖」

「それされたら泣くわ」

続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ