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第1話 裏話

「ってことで、裏話をしろとは言われたけど…………」

「なんかあるかなぁ」

「要は、皆も知らないようなことを話せってことでしょ?」

「うーん…………知らないようなこと…………」


あ、と呟いたのはさほろだった。


「お、何かあった?」

「うん、めっちゃくだらないことだけど」

「じゃあトップバッター、どうぞ」


そんな仰々しくしなくても…………と苦笑いをしたさほろが、するっと髪紐を解く。


「これ、うちの手作り」

「え⁉⁉⁉⁉⁉」

「手作りって言っても組紐だから、めっちゃ簡単なやつだけどねー」


そう呑気に笑うさほろに優は驚きを隠せないでいた。


「え、これ手作りだったのか⁉すご‼」

「やば、めっちゃ自己肯定感上がる」


笑顔を隠しきれないさほろがによによと笑ったまま頬を抑える。


「…………あー、でもそういう系か。なら俺もある」

「おぉ!じゃあ優さんどうぞ」

「俺の父さんと母さん、総合格闘技で世界一になったことがある」

「⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」


あっさりと初耳情報を言う優に、さほろがフリーズした。


「えっ…………え?そうなの?」

「因みに非公式」

「ヘイどういうことだい????」


理解が追い付かないさほろに、えーとな、と優が言う。


「なんかさあ、道端で総合格闘技世界チャンピオンに会ったらしいんだよ」

「その前提がまず意味わからんけど一旦スルーするわ、続けて」

「で、当時高校生だったうちの親ズ(恋人関係)が興奮して試合を頼んだ」

「んな命知らずな」

「そしたらノッてもらえたから、勝ちに行ったら勝てたらしいんだよな」

「一から十までよくわかんないけどよく生きてたね」

「それな。んで後日、道場破り的な感じでまた乗り込んで来たらしくてさあ」

「うん、なんで?」

「知らん。父親はまた完封して母親は女性チャンピオンも倒したんだよ」

「なんで????」

「まぁ非公式だし、チャンピオン倒したからって一概に世界一とは言えn」

「言えるだろ、てか言ってくれよ」

「(元)世界チャンピオン(御年85)だぞ?」

「う~~~~~ん…………それは、う~~~~~ん…………」


さほろが腕を組んで考え込んだ。

元世界チャンピオン(85のご老体)VS素人(現役DK)はどちらが勝つかと聞かれたら、悩ましいがDKな気がする。


「因みにその次の次の次の…………次?あたりの世界チャンピオンが俺の師匠」

「通りで強い訳だわ!!!!!!!」


「で、その師匠を完封したのがうちの親」

「難波夫婦に教わった方が良かったんじゃね?」

「やだよ、説明が擬音しかなくて意味わかんないし。因みに今の目標は母親撃破」

「え?師匠は?」

「撃破済み」


そりゃ強いわ、とさほろが納得していると、


「他に何かないか?こんなんで終わるのちょっと勿体無いだろ」


と優が言った。


「んー…………あ、うち犬と猫両方アレルギーだよ」

「アニマルセラピーの恩恵に与れないのか…………」


その後も、


「俺のファンクラブがあるらしいんだけど」

「は?何その全人類入るべき組織、発案者天才だな」

「大袈裟かよ。それに全人類入られたら困るんだが」


さほろと優による、


「えーと、えーと、うち実はクラスで2番目に背が高い!」

「俺はクラスで2番目に背が低いよ、こんチクショウ」


裏話暴露大会は続いた。


「…………そういえばさあ」

「うん?」


さほろの呟きに、優がチョコを口に運びながら応えた。


「優さんって姿勢良いよね」

「さほろもだろ」

「うちはほら、短足…………だから…………」


胴体が長いだけ…………と虚無の笑みで落ち込むさほろに、優があわあわしながらフォローする。


「いや、でも背ぇ高いじゃん⁉俺は羨ましいよ、小さい…………から…………」

「いやごめん、これは本当にうちが悪い」


優さんだって強いじゃん、格好良いじゃん、と今度はさほろがフォローする番になった。


「なんか腹立って来た。もうポテチもないし、他の開けるか」

「開けよ開けよ。ジュースも無いかなあ、炭酸飲みたい」


椅子から立ち、ぱかっと冷蔵庫を開ける。


「……………………大変だ優さん」

「どしたん」


食料棚からポテチを選定する優がさほろを見ると、さほろは青ざめていた。


「ちょ、こっち来て」

「?」


優が手を止めて立ち上がり、さほろの元まで行く。

首を傾げながら冷蔵庫を見ると、息を呑んだ。


「炭酸だけじゃない…………お茶もコーヒーも、卵に肉に魚、ケーキにエクレア、シュークリーム。冷凍庫にはアイスと冷食、野菜室には一通りの野菜が揃ってる…………」

「もうここから出たくねえな」

「それな、呼んで貰えてラッキーすぎる。炭酸で良き?」

「良き」


さほろが感激し過ぎにより、泣くどころか一周回って笑いそうになりながらジュースを出す。

折角だしアイスの種類でも見ようかな、と再び冷凍庫を開け、目を見開いた。


「ちょ、優さん優さん優さん‼‼‼」

「今度は何だ?」

「これっ…………アイスケーキまである‼‼‼」

「楽園かよ」


さほろは気分的にバニラアイス、優は小豆のアイスを選び席まで戻った。


「優さん小豆なんだ。意外」

「今は硬いもんをバリボリ食いたい気分なんだよ」

「うん、それ硬すぎてバリボリどころか噛めない気がするな」

難波夫婦の世界一事情はフィクションです。

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