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俺は勇者召喚で転生した  作者: K0-OTO
第一章 勇者召喚というのは突然で
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お勉強はやっぱり必要です




「俺たちは異世界に召喚された。理解できているか? 同志たちよ」

「ああ。我らは顕現した。天からの救済を求めるこの世界に」

「これで大嫌いな勉強ともおさらばでござる!」

「と、思っていたんだがな……」

「フッ、なんと勉強は……」

「「「こっちでも必要だったの()ござる(ある))!!!」」」



 クラス全員が集まっているこの部屋の一角で、三人のゲーム好きがいくつものキレッキレの決めポーズを決めながら、謎の寸劇をしていた。

 水月 龍次郎と黒部(くろべ) (せん)と夏冬 清三郎の三人組だ。

 見事に決まったからか、三人ともドヤ顔である。


 冷めた鋭い視線を送ってくるクラスメイトが周りにいるのだが、そんなことは気にしない。

 どんなにドン引きされていても気にしない。

 やさしい目で見られていても、逆に煌めいている目で見つめ返してくる。

 彼ら三人は、己のためだけに生きている自由人(中二病)なのだから。



「あれって……」

「ああ、色んな意味で有名な中二病三人衆(痛々しい三人組)だ」

「異世界に召喚されたせいで悪化しちゃったみたい」

「前はこんなに堂々とやっていなかったのにね」

「もう私たち、中三なんだけど……」



 いつも笑顔な恵美でも、この時は真顔になっていた。顔から気持ちが抜けている。

 まるで、六段のトランプタワーが完成したと思った瞬間に、パタパタと音もなく崩れ去った時のような。


 誠司は死んだ魚のような目で、三人のことを見ている。

 きっと一年と少し前の自分の姿がフラッシュバックしたのだろう。顔色も真っ青で、冷や汗も出ている。



 大まかにまとめると、あの三人があの寸劇をしてまで伝えたかったのは、【勉強はやっぱり必要だった!】ということだ。


 まあ、当然のことではある。

 異世界に召喚されて、魔王を倒すことになっても、この世界の常識などは覚える必要があるはずだからだ。

 今日はその異世界の常識の一つ。世界の昔話を教えてもらう分けなのだが、勉強から解放されたと勘違いしていたのがあの三人なのだ。

 きっと他にも三人と同じことを思った人がいるとは思うのだが、脳がショートしてでも、異世界のことを勉強しようと意志を強く持ったのだろう。



 恵美は、今日の勉強のことを少し楽しみにしていた。

 勉強があまり嫌いではないというのもあるが、別世界の昔話は、地球とどう違うのかが気になっているのだ。

 やはり、神話や伝説にあるような戦いがあるのだろうか。

 まだ知らない異世界の昔話を想像して、実際の昔話に胸を膨らませる。






「はい、異世界の勇者の皆さんこんにちは。今日からこの世界の常識を教える教師になる、ガレット=アリーシスです。頑張ってわかりやすく教えていきますのでお願いします。頼むので教えている最中に堂々と寝ることだけはやめてください。あれ、本当に傷つきますので」

「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」



 異世界から召喚された恵美たちの前に立って一礼したのは、ガレット=アリーシスという片目を隠した銀髪の少女。恵美たちとほとんど同じ年に見えた。

 彼女は、この世界の知識を教えるためにやってきた教師である。

 ただし豆腐メンタルだが、やればできる教師だった。



 ◆◆◆◆



 これから語るのは、この時代に勇者を召喚することになったきっかけの話。

 まだ、人がステータスを持っておらず、危険から逃げることしかできていなかった争いの時代。


 今から3000年以上前。 

 隣接する二つの大陸同士で、大きな戦争が起きた。

 その戦争にはこの世界の神も関わっており、その争いは、歴史上最も激しいものとなった。

 右の黒の大陸ストラシス側からは、三柱の魔神率いる魔族が世界を支配しようと緑の大陸に侵攻していた。

 左の緑の大陸ハーティア側からは三柱の天神率いる人族が支配されないよう抗っていた。


 互いに衝突し、命を散らしていた。


 ただ、戦争の主役は人族と魔族ではなかった。

 主役は、数は少ないものの圧倒的な個の力を持っている正反対の種族、天人族と魔人族だった。

 どちらも人族と種族の名前が似ているが、全く別の種族だ。


 天神側についていた天人族は、背中に真っ白な翼を持っている。当たり前のように空を飛べる種族で、空中からの圧倒的な魔法攻撃は、地形を変えてしまうほどのものらしい。

 一方、魔神側についていた魔人族は、耳が少し尖っており、頭から角が、尻近くから尾が生えていた。角は、魔力を溜め込む性質があるため、攻撃の一つ一つが強力だ。その上持久力もあるため、人族から恐れられていた。

 

 天人族と魔人族の戦力はほとんど同じ。

 だが、戦勢は天神側が押されていた。その上、三柱の天神のうち一柱は、すでに魔神側に倒されてしまっていた。


 理由は簡単だ。

 天人族と魔人族以外の戦力が偏っていたためだ。

 魔神側は、ついてきた種族に、かつては同じ種族だったと思えないほど強化を施し、力と数で押してきた。

 天神側は、その強化に挑戦することができなかった。そのため天神側についた人族たちは弱いまま。天神側に見切りをつけて魔神側に寝返るものも多かったため、いくら天人族が強くても、勝つことができずにいた。

 

 そんな時に天神が人族に授けたのは、ステータスという自身が努力することで強くなることができる力と、異世界から圧倒的な力を持った者を召喚する魔法陣だった。

 ステータスの力で、天神側は少しずつ魔神側を押し返していった。


 それと同時に、人々は天神から受け取った魔法陣を使って異世界の人を召喚した。この時召喚された異世界人の少年が、後に伝説の勇者と呼ばれるリント=ハスガウラである。

 だが、召喚されたばかりの頃は、まだまだ勇者としては弱すぎた。当然のことだった。勇者が暮らしていた場所は、物理的に傷つけあう争いなど起きていない平和な場所だったのだから。

 

 まだ弱かった勇者は、ある時、不意打ちされそうになった一人を庇い、瀕死の重傷を負った。

 死にかけている勇者を助けたのは、まだ幼い天人族だった。


 それから、勇者は幼い天人族の少年と共に、魔神側と戦った。勇者もレベルを上げ、メキメキと強くなっていった。


 そして、魔神側を追い詰めた。


 あと一歩、……というところで、魔神の一柱が命を犠牲に呪いを発動させた。

 呪いの対象は、天人族。呪いの種類は死の呪いだった。

 ほとんどの天人族があっという間に命を落とした。黒くて禍々しい呪いで苦しみながら。

 勇者と共に行動していた幼い天人族も例外ではない。幸い、死ぬことはなかったものの、倒れてしばらく行動不能になるほど弱体化した。真っ白だった翼も真っ黒に染まってしまった。天人族は、ほぼ全滅してしまった。

 最悪の状況になっても、勇者は諦めなかった。


 そんな勇者に、翼が黒く染まってしまった天人族はついていった。二人で魔神側の戦力を削り、ついに魔神を倒すことができた。

 勇者リント=ハスガウラは、この時本当に勇者になった。その勇者と共に行動した黒い翼の天人族は、やがて黒翼の天人族と呼ばれるようになる。


 緑の大陸は平和になった。一時的なものかもしれないが、今生きる者にとっては嬉しい知らせだったのだろう。 

 人々は皆、勇者と隣にいた黒翼の天人族を褒め称えた。


 そして、世界を救った二人は姿を消した。

 どこを探しても見つからず、亡くなってしまったのかと思われはじめた頃、隣にいた天人族が、友の、勇者の死を知らせた。

  

 緑の大陸が平和になってから、10年目の出来事だった。


 勇者の死を伝えたあと、黒翼の天人族は再び行方不明になる。だが、それと同時にさまざまな場所で目撃情報が見つかった。

 それから3000年以上経っても、目撃情報が途切れることはない。一定の間隔で、どの地域でも目撃されている。


 この世界には長命の種族も多い。だからこそ、この勇者の物語は、昔からほとんど変わることなく伝わっていた。







大陸について


 大陸は、現在知られている中では二つ。

 左にある【緑の大陸ハーティア】と右にある【黒の大陸ストラシス】だ。

 形は、全体的に見てみると中心にヒビが入って壊れかけている心(♡)のような形をしている。

 色も、大陸の名前の通り、緑と黒の二色。



設定的なおまけ

 名前のネタは緑の大陸がハート。黒の大陸がストレス。

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