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プロローグ
「この絵は私の遺作です」美術部の後輩・紗奈は、心地よい風が吹く教室でボソリとつぶやいた。私は彼女が底知れない闇を抱えていることに気が付き、彼女の秘密に迫る。そこに待ち受けていた衝撃の事実とはーー。
ある夏の日、彼女は首を吊って死んだ。
彼女の死については、私は一番最初に教師に伝えられ、今でもとても鮮明に覚えている。あの瞬間、教室の生ぬるい空気がとても心地よく感じた気がした。そして、彼女が私に向けて描いていた一つの絵を渡された。これは彼女の遺作だ。
彼女の遺作がメディアで公開されたのは、もうひと月も前のことだった。
私が教室に彼女の遺作を置きっぱなしにしている際に、クラスメイトがネットに投稿したのが発端であった。
世界中の画家たちが、その美しさに魅了されるほどの美しい絵。それは、彼女が私の為だけに描いた黒百合の絵だった。黒百合の花言葉は、復讐、呪い、憎悪。彼女は私を憎んでいたのだろうか。または自分自身を恨んでいたのかもしれないが、残念なことに私は二度とこの真相を知ることができない。