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第8話


 ……なぜここで笑顔を浮かべるのか。

 こいつはこいつで、理解に苦しむ思考回路をしている。……一見しただけの俺を誘うあたりもな。


「その回答は予想していましたよ。理由を聞いても?」

「俺は聖騎士が……いや、教会が嫌いなんだよ」

「どうしてですか?」

「それは――面倒そうだからな」


 ……この時代の教会は知らないが、カインの時代の教会は酷かった。

 魔族の研究を率先して行っていたのが、教会であり、魔族をいたぶるような人体実験を行いまくっていた。

 それを知ったからこそ、俺は教会をぶっ潰し、お尋ね者になってしまったというわけだ。


 それに何より、こいつラスボスだし!


「面倒、ではありますね」

「だろ? それに皆が皆、聖女や聖騎士に好意的じゃないって話だ」

「それはそれは、残念ですね。ただ……なおさら、あなたを聖騎士にしたいと思いました」

「……は?」


 訳が分からない。

 俺の疑問にアレクシアは後ろで手を組みながら、つかつかと歩く。


「私の聖女としての崇高な目標を教えてあげましょうか?」

「……いや、別に聞きたくはないけど」

「私の目標はずばり、世界平和です」

「人の話まったく聞かないじゃん……で、世界平和ねぇ」


 一方的すぎるアレクシアの発言に呆れながらも、聖女らしい理由だと納得する。

 だが……アレクシアの口ぶりから、それが本音ではないというのは良くわかった。


 聖女として、表向きの理由を言っているにすぎない、と。

 ただ、こちらから質問すればアレクシアもノリノリで話を進めようとしてくると思うので、俺は無理やりに打ち切る作戦だ。


「それはご立派なことで。それじゃあ。……腕掴むな」


 しがみついてきたアレクシアをじとりとみる。


「あくまで、表向きの理由は、です。私の真の目標をお話ししますね」

「いや、いいから」

「拒否権はありません。聖女命令です」

「……職権乱用すんなよ」

「私の目標は――のんびり自由に自堕落に、まあ普通に生きることです」

「……それ、普通か?」


 ていうか、俺と同じかよ……。

 アレクシアが笑顔とともに語った内容に、ちょっと共感して協力してもいいか? と思ってしまった俺。

 ……人間誰しも自分の好きなように生きられるのなら、生きたいだろう。


 だが、その生活には金がいる。

 金がなければ家も食事も手に入らない。場合によっては恋人だってな。

 だから、多くの人は自由を代償に、金を稼ぐ手段を得る。

 ……もちろん、自分の好きなことで生活していける人もいるが、それは本当にごく一部の才能ある者たちだけだ。


 そしてアレクシアは、そんな自由な生活を望んでいる、と。


「皆の知ってるアレクシアからは、ありえない発言じゃないか?」


 聖女は人間教育の手本になるような人たちだ。

 真面目で、素直で、優しく、誰に対しても弱みを見せなければ、愚痴もこぼさない。

 常に笑顔を振りまいて、人々を元気づける。

 それが、聖女様だ。


 ……もちろん、それはあくまで表向き。近しい人には愚痴をこぼすこともあれば、強い力に恐怖することもある。

 ただ、世の多くの人たちによって聖女という偶像は作られている。

 先ほどのような偶像の存在から、大きく逸脱するようなことがあれば、教会、あるいは近しい人たちから叱責されることになるだろう。


 俺の感覚からすると、聖女はアイドルみたいなものだと思っていた。


「そうですね。ですので、私の目標を理解してくださる人を、聖騎士に置きたいのです。ですが、中々そんな人はいませんよね?」

「まあな。聖騎士をわざわざ目指すような人たちは、皆やる気に溢れてるからな」


 ……そういう意味では、昔の俺は恐らくアレクシアの望む聖騎士ではないな。

 真面目にメインストーリーを進行していた優秀な聖騎士だったからな。


「私は必要以上に仕事を抱え込みたくはありません。さっさと仕事を終わらせたら、あとは休んでいたい。そんな聖女です。ところが、他の聖女たちは、皆やる気満々であっちこっちに仕事へ向かいます。それは、私の理想としている聖女ではありません」


 滅茶苦茶なことを言っているが、彼女の本音はすとんと心に響く。

 誰だってラクして金を稼げるのなら、必要以上の仕事はしたくないだろう。

 俺だって同意見だ。


「つまり、俺を聖騎士にして、共に最低限の仕事をしながら生活しませんか? ってことか?」

「まとめるとそういうことになります。あなたの能力は……とても低い、という話でしたが……私の目は誤魔化せません。……どう考えても、あなたにはかなりの力があると感じました」


 ……こいつ、かなりいい目をしている。





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