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ラスボス聖女様の聖騎士 〜転生した俺は、強くてニューゲームで続編世界のラスボスに好かれてしまったようです〜  作者: 木嶋隆太


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第21話



「話終わりでいいか?」

「半分冗談ですが、半分は本当なんですよ? 私、生まれつき可愛いし、おまけに聖女としての才能である聖魔法の使い手でもありました。だから、家族たちは私にばかり構うので特に姉妹たちが嫉妬していて……」

「……あーなるほどな」


 確かに、嫉妬を集めそうではある。

 特にこの世界の貴族たちの育ち方からして、自分こそが世界で一番と思うような自己肯定感に溢れた奴らが多いからな。

 それが、アレクシアとう、明確に負けている部分がいくつもある存在がいるとなれば、その悔しさ、嫉妬といった感情は理不尽だがアレクシアに向けられるだろう。


 自分が成長して彼女の上になることは難しいが、相手を蹴落として自分より下に落とすのはそこまで難しくないからな。


 アレクシアが話したように、それだけの才能を兼ね備えているのだからそうなってしまうのも想像できなくもない。

 実際、俺も他の教会騎士たちからは似たような嫉妬を浴びているわけで、それがいくら家族だからといって同じような視線を受けないとも限らない。


「私としては……別に聖女としての立場がなくても、普通の家族として暮らしたいという気持ちはありますけどね」

「普通の家族、か」


 アレクシアはそう言って、俺の手を掴み、無理やり頭を撫でさせてきた。


 この世界に転生する前の俺は、アレクシアが想像するそれに一番近い家族がいた。

 両親がいて、兄弟がいて、小さないざこざはあっても仲良くやれていた。


 ……ていうか、アレクシアくらいの子がそんなに色々抱えて、誰にもその悩みをこれまで打ち明けられないって、周りの環境に問題ありだろう。


 今こうして俺に色々と話しているのも、彼女が無理やりに俺を聖騎士に任命したのも、特に気にしなくてもいい立場の相談できる人間がほしかった、くらいの感覚なのかもしれない。


「贅沢な悩みなのかもしれないとも分かってはいますけどね。もしも、私が何も知らないまま、例えば姉や妹に聖女の力があって、私になかった場合、今の彼女らのように嫉妬していたかもしれませんし」


 ……それは、そうかもしれないな。


「贅沢な悩みだろうと、望みたくなる気持ちも分かる。まあ、とりあえずは今みたいにほどほどに……自由にやっていけるよう、俺も協力してやるよ」


 俺がそういうと、アレクシアは一瞬目を少し開いてから嬉しそうに口元を緩めた。


「自由に、やっていいんですね?」

「ああ、ほどほどにな」

「分かりました。それではともに自由に、頑張っていきましょうね」


 俺の手をぎゅっと掴んできたアレクシアが、だらしなく笑う。

 ……ちょっと相談に答えすぎて調子に乗らせてしまったかもしれない。

 とはいえ……アレクシアの悩みを聞いて、もう少しは力になってやってもいいか、と思わされてしまったのも事実だ。



 夕食の後、俺とアレクシアは入浴の時間となった。

 教会では、部屋につけられたシャワールームだけではなく、大浴場もある、


 そもそも、この時代は平民の家でも風呂はわりとあるそうだ。

 ただ、住んでいる人たちの意識的な問題か、あまり風呂に浸かるという人は少なく、シャワーのみで済ませる人が多い。


 俺のいたモスクリア家でも、風呂に浸かる人は少なかった気がする。

 そんなことをぼんやりと考えながら男性用の公衆浴場へと向かうと、がらんと空いていた。

 誰もいない。これだけ広い空間を堂々と使えるのは素晴らしいな。

 どうやら、教会にいる男たちもあまり長居するのはいないようだ。

 まあ、彼らの仕事は聖女の警備だったり、護衛だったりだ。


 俺は仮面をつけたまま大浴場へと入る。

 おっ、見覚えのある教会騎士が頭を洗っていた。

 アレクシアと初めてきた時に見かけた、まだ幼い中性的な顔たちの教会騎士だ。

 彼の後ろに立ち、頭を洗っている上からシャンプーを垂らしてみるが、彼は気にした様子もなく頭を洗う。

 シャワーを流しながらの彼に、シャンプーを注いでやると不思議そうにしながら頭を洗って……、途中で目を開けた。


「うえ!? な、何をしているんですか!?」

「ちょっとシャンプーを垂らしてたんだ、よっ、久しぶり。最初に会ったよな?」

「お、覚えていてくださるなんて光栄です!」


 彼はぴしっと背筋を伸ばし、敬礼をした。

 俺は彼の隣に座り、シャワーを出す。


「こんなところでそんなかしこまらなくてもいいって。名前は?」

「ぼ、僕はグランドといいます! す、スチルベルト様ですよね?」

「スチルでいいし、様は必要ないぞ? 年齢だって近いんだろうし、敬語も必要ない。俺は平民だからな、よろしく、グランド」

「そうは、いきません! よ、よろしくお願いします!」


 真面目な奴だな。

 ぺこり、と頭を下げてきたグランドは少し緊張した様子でシャンプーを流していく。

 声をかけたのは俺は友人が少ないからな。これからもここで活動していくなら、友人の一人二人、いたほうがいいだろう。


「グランドは、平民なのか?」

「は、はい」

「大変じゃないか? 周りからこう、平民のくせに……的な扱いよくされないか?」

「えーと……それは……その、まあ……ないことはない、ですね……」


 あはは、とグランドは頰をかいていた。

 まあ、教会側としては貴族平民による格差はない、としているからな。

 口には出しにくいわな。


「大変だよな。俺も色々とあるもんでな。周りから嫉妬されまくって面倒なんだよ」

「でも、凄いですよ……いきなりブルーナル家の聖女様ですもんね……!」

「周りからしたらそれが面白くないみたいだけどな。あと、その言い方うちのお姫様は好きじゃないみたいだからな。せめてアレクシア様、って呼んでくれ」

「で、でも……いいんですか? 聖女様のことをそんなに気安く呼んじゃっても……」

「アレクシアは気安くとかそういうのは気にしてないみたいだから大丈夫だと思うけどな。グランドは、聖騎士になるのが夢なのか?」

「……はい。僕、田舎から聖騎士に憧れて……教会に来たんです」

「教会での直接採用ってことは見習い期間が結構大変なんじゃないか?」


 教会騎士には見習い期間があり、ここが地獄すぎて辞める人がかなりいるとは聞いたことがある。


 先輩騎士によるいじめ……ではないな、教育が施されるだろうし、大変だろう。

 ただ、直接教会騎士になれば、それだけ聖女と関わる機会も増え、アピールの場は生まれるのでメリットもないわけではない。それに、学園に通う費用も必要ないので、平民から教会騎士を目指す場合のほとんどはこのルートだ。


 年齢だって、グランドのように若いうちに教会騎士になることも可能だしな。



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