表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/33

第16話


 顔を青ざめさせながら暴れるルージュノウと周りの教会騎士たちが、慌てた様子でこちらを見てくる。

 ぱっと手を離してやると、ルージュノウが数度むせた後、顔を真っ赤にする。

 顔色がころころ変わって、信号みたいに忙しいやつだな。


「な、何をするいきなり!?」

「何をって……もしも俺がアレクシアを狙う邪教集団だったら……今のでおまえ死んでたんだぞ? 俺以下の雑魚を連れて回ってたら、そいつらを守るために仕事が増えて敵わん。邪魔だからお前程度の力でも同行の許可を出してくれる聖女の護衛にでもついてろ」


 俺が一方的に吐き捨てると、ルージュノウは驚いた様子ですぐに口を開いた。


「そ、それはいきなりこんな行動するなんて思っていなかったからで……」


 多少むせながらではあったが、そう言い訳を並べたルージュノウに俺は改めてため息を吐いた。


「それじゃあ、もしも教会内にスパイがいて、アレクシアを殺そうとしたときにも同じ言い訳をするのか?」

「……そ、その時は動いて守るに決まっているだろ!? 何を言っているんだ!」

「今動けないやつがそんなことを言っても説得力ないんだよ。とにかく、雑魚はいらん。アレクシアの今の聖騎士は一応俺だ。行くぞ」

「一応は不要です。申し訳ありませんが、そういうことですので。それでは」


 アレクシアがぺこりと頭を下げ、俺たちは並んで教会を歩いていった。

 さすがに、あそこまで言ったからかルージュノウたちが追ってくることはなかったが、ますます嫌われたようで憎々しげにこちらを睨んできていた。


 ただまあ……アレクシアは、ルージュノウたちを連れて行きたくはなかったみたいだからな。

 俺としても、さっき伝えた通り足手纏いは不要だ。


 これで、良かっただろう。



 教会を出たところで、アレクシアはフードを深く被った。


「聖女というのは外では街の人たちに挨拶をしながら歩き回るものとされています」

「じゃあなんで姿を隠したんだ?」

「面倒なので。そういうわけで、こっそり外に出て今日の仕事をしましょう。呪いを持った魔物の位置は分かっていますので、すぐに向かいましょう」


 アレクシアはにこりと笑い、俺の手を引っ張ってくる。

 まあ、俺としてもいちいち挨拶なんてしていたくはないな。アレクシアの意見に何の反対意見もない。

 彼女と共に歩いていくと、アレクシアはぽつりとつぶやいた。


「申し訳ありません。先ほどは嫌な役目を押し付けてしまって」

「え? 何がだ?」

「教会騎士の方々を、どのように断ろうかと迷っていました。それが、何やら悪役みたいなことをさせてしまったじゃないですか」

「安心しろ。人を痛めつけることは嫌いじゃないぜ」


 俺がぐっと親指を立ててやると、アレクシアは苦笑する。


「事実、彼が話すように聖騎士をつけたあとも数名の警備をつけるというのも珍しくはないので……間違ってはいないんですよね」

「んじゃあ余計なことをしたか?」

「いえ、助かりました。彼らがいるとなると、サボることができませんので。……彼らは、完璧な聖女様を尊敬していますからね」


 アレクシアはゆっくりと背筋を伸ばし、それから息を吐いた。晴れやかな表情だな。

 俺たちの格好にちらと視線を向ける人はいるが、それでも声をかけられることはない。


 この前。俺が街で強盗を捕まえたときに出会ったアレクシアは、すぐに街の人たちに囲まれていた。

 アレクシアがサボりたい、というのはこういうことなのかもしれない。

 そのまま特に問題なく街の外へと出たところで、アレクシアがフードを外した。


「ふう……さて、まずは呪いの魔物を倒しに行きましょう。あちらから禍々しい気配が感じられますので、向かいましょうか」

「了解だ」


 アレクシアが指差した方へむかってしばらく歩いていく。

 聖女というのは敵の位置を把握する能力を持っていて羨ましい限りだ。

 俺も多少は感知能力があるとはいえ、近くで戦っているやつがいれば気配で分かる程度のものだからな。


 王都の外に出たのは久しぶりだな。夜とかにこっそりと外に出ることはあったが、ここ最近はほとんどそういった機会はなかった。


「今回の呪いの魔物は、一度他の教会騎士と聖女たちで討伐に挑み、失敗しているそうですね。だから、私に仕事が回ってきた、と」


 アレクシアが受け取っていた紙に目を通す。


「それってつまり、ちゃんと仕事してくれたら俺たちの仕事も減ったってことだよな?」

「その場合は、別の仕事が振られていたと思いますね。私、優秀ですから」

「そりゃまた期待されてんな」

「ええ、そうみたいです」


 あまり、嬉しくはなさそうだな。

 ため息混じりに言った彼女が言った時だった。アレクシアの眉間が寄せられる。

 次の瞬間。俺たちの足元が揺れる。

 恐らくだが、アレクシアの聖女としての力に反応したターゲットが、攻撃を仕掛けてきたんだろう。


「スチルっ! 下にいます!」

「分かってる」


 俺はすぐにアレクシアを抱きかかえ、大きく跳びあがった。

 ちょうど俺たちがいた場所からトカゲのようなものが飛び出してきた。

 ぎょろりとこちらを睨みつけてくるトカゲの体には、黒いもやのようなものがかかっている。


「おお、こいつはアーストカゲじゃないか」


 この時代にもいるんだな。ゲームでは結構高レベルで出てくることもあった魔物だ。

 こいつの素材を使って土属性の武器を作れるので、もしも終盤初めで土属性武器が欲しくなったらこいつを狩りまくるといいんだよな。

 

 魔物とは定期的に戦っていたとはいえ、やはり対面すると俺の血が騒ぐってものだ。


「魔法の準備をします。スチル、時間を稼いでくれますか?」


 アレクシアの飛ばしてきた指示に、俺は少し不満を感じてしまう。

 いつも、俺が前に出て敵を狩りまくっていたからな。


「時間稼ぎか……それでいいのか?」

「え? どういうことですか?」


 問いかけてきたところでアーストカゲが飛びかかってきたので、俺はアイテムボックスから取り出した刀を振り抜いた。


「ぎゃ!?」


 アーストカゲの体を真っ二つにして、仕留めた。この刀は魔物を狩れば狩るほど攻撃力が上がっていく俺の前世からの愛用武器だ。

 めっちゃ強化しまくった武器だ。武器の耐久度は落ちないし、その他ダメージ強化系のスキルを盛りに盛りまくった最高傑作だ。


 一応、武器の火力だけでいえば、もう少し上げることはできる。耐久度が下がらないようになるというスキルが付与されているのだが、それを外してダメージ強化系のスキルを付与すればいい。

 ただ、このリアルの世界だと耐久度は結構大事だ。

 すぐに修復できないため、耐久度が落ちなくなるのはそれだけでかなりの価値があった。


 真っ二つになったアーストカゲの死体に視線を向けていると、ぽかんとした様子でアレクシアがこちらを見てきた。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ