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第15話



「むー、私以外の聖女を褒めるなんて私の聖騎士として失格ですよ」

「いいだろ別に」

「まあ、別に可愛さは必要ありません。ただ、私の場合は貴族としての立場も関係してきます。例えば、先ほどの教会騎士は私に狙いをつけ、私とともに仕事をする機会も多かったのです。伯爵家の方で、野心も強く仕事の終わりにはいつも食事にも誘われるなど、結構大変でしたね」

「あいつも貴族、だったのか」

「教会騎士の八割以上は貴族ですからね。貴族の方を聖騎士に任命すると、それはもう家との関わりも増えるので私としては却下です」

「なのに、俺を聖騎士にしようとしてたんだな」

「ラッキーでした、ちょうど家を追放されてくれて」

「それ、俺じゃなかったら悲しんでるぞ?」


 普通追放されて喜ぶ貴族の子どもは少ないからな。

 俺だって、安泰だった生活を失ったことを悲しんでいたんだからな。


 というか、だいたいの場合ここまで育てられたら政略結婚の道具くらいには使ってもらえることも多いからな。


 まあ、俺くらいまで無能ともなると、子どもにも悪影響が出そうとかで不人気になるのは仕方ない。

 この世界では、どうやら生まれてきた子どもに能力、才能もある程度引き継がれるようだからな。


 人間同士をうまく配合すれば、理想の才能を持った子どもが生まれてきそう、なんてゲーム的な考えを持ってしまっている部分もなきにしもあらずだ。

 昔、そんなゲームもあったな。


「あなたが悲しまないことを知っているから、言っているんですよ。家のこと、特に何も思っていなかったでしょう?」

「まあな」


 ダラダラ生活できる便利な環境だった、くらいにしか思っていなかったのは事実だ。


「それでは、おしゃべりはこの辺にして、さっさと仕事を終わらせに行きましょうか」

「さっさと終わらせられる仕事なのか?」

「まあ、そこは聖騎士次第、ですかね?」

「ほどほどにやらせていただきますよー」


 俺がひらひらと手を振り、ソファから立ち上がる。アレクシアもまた、立ち上がったあと大きく伸びをした。


「まずは、魔物の討伐から行きましょうか」

「魔物の討伐なんて、冒険者とかの仕事だろ? 教会騎士にふるとかはダメなのか?」

「ここ最近増えている呪いを持った魔物の存在はご存じでしょうか?」


 呪いを持った魔物、か。

 確かに増えているとは、屋敷にいるときに聞いたことがあるな。


「話に聞いたことくらいは」

「恐らくは邪教集団の仕業と考えられていますが、魔物の一部が邪神の加護を受けているそうなんです。そういった魔物は、聖女でなければ倒せないので、私たちに仕事が振られるんです」


 聖女の加護がなければ、邪神の討伐は不可能だ。ただし、聖女の加護を受けたものなら、誰でも戦うことは可能だ。

 だから、ゲームでは最低一人以上、聖女をパーティーに加える必要があった。

 ……まあ、別に、ゲームクリア後には聖属性が付与された武器を作れるようになるのでその制限もなくなるんだけどな。


 邪神は一度俺が討伐しているが、誰かが復活させようとしているのは間違いないようだ。

 せめて、強くなって復活してくれるのなら俺としても少しはやる気でるんだが、今の俺の能力だと恐らく一撃だからなぁ。


 こっちに転生してからも、クラフィたちにステータスアップ木の実の量産をさせ、定期的に運んでもらっていたので、転生前よりも強くなってるし。


 ……なんか、転生してからステータスの限界が伸びたらしくて、また一から強化できたんだよな。簡単にいえば、俺一人で二キャラ分のステータスを持っているような状況だ。


 もちろん、日々の鍛錬も怠っていなかったし、暇な時にクラフィたちに模擬戦も行っていた。

 今のこの時代に、俺をワクワクさせてくれる魔物がいるのかどうか。


「そうか。頑張ってくれ」

「はい。行きましょう」


 ぐいっと腕を組むようにして引っ張られる。柔らかな感触が俺の右腕にあたり、アレクシアがにこりと見てくる。

 こいつ、結構でかいんだよな。


「えっちですね。いきなり触ってくるなんて」

「当ててきてそれはないんじゃないか?」

「動く気がないものでしたから。スチルが有罪ですね」


 こうやって痴漢冤罪などは増えていくのだろう。理不尽なアレクシアに腕を掴まれたまま、俺たちは部屋を出ていく。

 部屋を出てすぐだった。教会騎士たちがアレクシアの方へとやってきた。

 先ほど仕事を持ってきた人もいる。数は全部で六人か。

 先頭に立っていたのは、先ほどの伯爵家の青年だ。


「聖女様。本日、魔物の討伐を行いますよね? 是非とも、私たちが護衛の同行をいたします」


 おお、こんだけ肉壁がいてくれるなら頼もしい。

 しかし、アレクシアはぐいっと俺の腕を抱き寄せ、微笑んだ。


「大丈夫ですよ。今日からは聖騎士がいますから」


 ぴくり、と教会騎士たちが眉尻をあげ、俺を見てくる。

 あんま喧嘩売るようなことを言わないでほしいものだ。

 ほらみろ、教会騎士たちが顔を顰め、こちらを見てきている。


「そちらのスチルベルトさんの能力は……正式な能力測定の結果を公表されていませんよね?」

「ええ、そうですね。それが何か?」

「まだ本当に能力があるのか分かっていない方一人に、聖女様をお願いできません。もしも、聖女様に何かあったら、どうするのですか? この国だけではありません。この世界の、損失になるんですよ!?」


 そう騎士が熱心に語ると、他の騎士たちもこくこくと頷いていく。

 正義感に溢れた良い騎士様じゃないか。

 俺の腕を掴んでいたアレクシアの力が、僅かに強くなった。


 込められる力はすぐに元に戻ったが、俺としてはその一瞬を見逃すことはできなかった。

 ……見逃してやってもよかったんだけどな。


「この私、ルージュノウ・アデヒドなら……あなたを確実に守ることができます! ぐえ!?」


 俺はそう叫んだルージュノウへ一瞬で距離をつめ、首を絞める。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

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