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暖炉が見つめる愛の情景

作者: まあく
掲載日:2023/12/10

「ばあさんや。わしは今年で何歳になったかのぉ」

「いやですよ、おじいさん。そんなことも忘れたんですか」

「ばあさんより年上だったと思うんじゃが」

「そうですね。それだけ覚えていればいいんじゃないですか」

「そんなものかのぉ」

「そんなものですよ」

「ところでばあさん。暖炉の火が小さくなってきたのぉ」

「そうですね」

「薪を足さんと火が消えてしまいそうじゃわい」

「では、薪を足せばいいではないですか」

「そうなんじゃがなぁ。もう家の中に薪がないんじゃよ」

「あら、それは大変」

「すまんが、外の置き場から取ってきてはくれんか」

「いやですよ、おじいさん。ご自分で取ってくればいいではないですか」

「そうは言うがなぁ。外は吹雪。年寄りにはちと厳しいのじゃ」

「それは私も同じです」

「じゃが、ばあさんはわしより若いじゃろ」

「それは関係ありません」

「関係はあるぞ。年上は敬うものじゃ」

「何を言っているんです。薪の管理はおじいさんの仕事ではありませんか」

「そうなんじゃが、わしにも事情が……」

「言い訳はいいから、早くいってらっしゃい」

「言い訳じゃと? 事情も聞かんで、言い訳とは聞き捨てならんな」

「あなたが薪を取ってくるのを忘れた。そこにどんな言い訳があると言うんですか」

「じゃから言い訳と言うな!」

「まったく、面倒なじじぃじゃな」

「何じゃと! ばばぁ、口の利き方に気を付けろ!」

「そっちこそ口の利き方に気を付けんさい」

「こんのぉ! やるのか、ばばぁ!」

「掛かってこいや、じじぃ!」

「後悔するなや!」

「ほざけ!」

「では行くぞ!」

「せーの」

「じゃんけん」

「ほい!」


「……」

「……」


「ばあさんや。わしは今年で何歳に……」

「夕食、作ってあげませんよ」

「……行ってくる」

「はい、いってらっしゃい」

「ばあさんや」

「なんですか」

「戻ってきたら、ばあさんの淹れたこぶ茶が飲みたいのぉ」

「いいですよ。おじいさんが薪を取ってくる。わたしがこぶ茶を淹れる。二人の共同作業というやつですね」

「何だか新婚の頃を思い出すのぉ」

「おじいさん」

「なんじゃ」

「愛しています」

「……うん」

「気を付けて」

「うん、行ってくる」


 オレンジの炎がゆらゆら揺れる。

 薪がパチパチ音を立てる。

 二人を見守り続けてきた古い暖炉が、今日も穏やかに微笑んでいた。

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― 新着の感想 ―
[一言] お邪魔します(^^) 老夫婦の会話劇、途中不穏なものが流れつつもなんだかんだで仲良しですね。 積み重ねてきたものがあるからこそだなと、二人のこれまでの暮らしにも思いを馳せました。 冬に心温…
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