ほのお
あの子と出逢って恋の炎が燃えあがった。
でもいろんな人が、女どうしだからだめだと言う。
わたしは炎を消そうとしたけれど、なかなか消えてくれない。
怒られたり辱めを受けたりするのがとても恐かったので、無理やり固めて秘密の場所にしまいこんだ。
炎なんて無かったんだと自分に言い聞かせているうち、あの子の姿は宵闇の影のように消えていた。
子どもでいたくても冷酷なほど大人と見なされるようになり何年も経ったころ、わたしはあの子だった女性と出逢った。
――元気だった?
――まあまあね。
わたしたちは唇を細い月にして笑った。
彼女の小さな住居から、鳥の糞に似た臭を残して男が去ったばかりらしい。
彼女の体には、冷たい模様のように、青痣があった。
夜、おたがいの仄暗い箇所を合わせて探りあった。
そしてそこにかつての炎があり、自由な姿と熱を取り戻していくのを見出した。
わたしたちは泣いた。涙のなかで炎はいっそう燃えあがり、もう消えることはないと思われた。
小さな住居の下で鳥のような男が静かに腐敗していくのを知っていても。
おわり
旧稿をあらためました。