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第四十三話 第一聖女

第一聖女サイド



 第一聖女であり、王太子妃でもあるクローイ・ミルハンは王宮の一室で自らの夫であるシルヴェスター・エル・アクランドを待っていた。王太子付きの従者にお願いして置けば三回に一回は足を運んでくれる。


 クローイは自らの美貌に自信があった。誰にも負けない。第二聖女や第五聖女など相手にもならない。腰まで伸びたブロンドの髪に、透き通る蒼い瞳。ブロンドは薬をつけてそういう色にしている。本来は栗色だ。しかし王太子妃は華やかな容姿でなければならない。布などを白くする薬剤を髪につけて、栗色からブロンドに変えている。瞳は碧眼だが、碧眼という色は魔導師であるか魔導師ではないか見分けにくい色だ。碧眼と翠眼と黒に近いダークブラウンが見分けにくいと言われている。 

 碧眼は水の魔導師と見分けにくい色なのだが、聖女としても無しではない。実際第二聖女も蒼系統の色をしているし、水の魔導師と光の魔導師は古来より性質が混ざり合いやすいと言われている。建国の王が愛したと言われる初代国王妃の瞳も淡いブルーだ。


 スタイルも均整が取れており、聖女の中では一番男を魅了するであろう、体つきをしていた。故に王太子殿下も私に夢中だと思いたい。いつでも彼の言動は穏やかで優しいし、あの黄色い瞳で笑いかけてくれる。私は何が何でも彼の婚約者になりたかった。いえ、なるべき人間だ。いずれアクランド王国の頂点に立つ王子。彼を初めて見たのはまだ幼少の頃、父と共に来た王宮でまるで光のような御子様に会ったのだ。目が離せなかった。雷の魔術を顕現させた王家が待ち望んだ王子。髪の色も瞳の色も唯一無二の魔導師としか思えない高貴な色を持っており、顔は大層整っていて、切れ長の目元は涼やかだった。


「こんにちは」


 思い切ってそう声を掛けたら、少し微笑んで挨拶を返してくれた。今思うと私は不敬な子供だったのだが、彼はそれを咎めることは無かった。


 それからだ。それから。聖魔法が発現していない私が、聖魔法使いになる為の訓練を開始したのは。私の出自は祖母が第九聖女。無し寄りの有りだ。きっと父の中に魔法素養が半分、そして母の中に偶然にも半分あったに違いない。両親が共に魔導師ではなくとも、子は魔導師になれるのだ。私は人工魔導師だけど、自分の事をあの日から聖魔導師だと思い込んでいる。


 しかし人工聖女とは金が掛かる。一度慰問に行けば、庶民の十年分の稼ぎが吹っ飛ぶくらいの額が飛んでいく。ポーションは買っても買っても追いつかない、作っても作っても足りないのだ。第二聖女の聖魔法よりも効き目の高いポーションを使わなければならない。そうで無ければあやしまれるから。第二聖女より聖力が上の聖女の作ったポーションといえば、今上王妃陛下の作ったポーション、もしくは光の侯爵家当主の作ったポーション等、つまり銘入りの高額ポーションになる。これが馬鹿みたいに高い。高いが患者はポーションで治ろうが聖魔法で治ろうが治ればどちらでも良い筈。買いまくって使いまくった。慰問の度に侍女に持たせ、上手く発動させるのだ。その道ではプロだ。


 本当は教会所属の聖女に作らせれば只なのだが……、聖女等級審査により聖力の高い聖魔導師は王家や公爵家が所持している。


 自分は王太子妃で身なりにもお金が掛かるし、侍女や侍従にもお金が掛かる。王家から出るのは王家が用意した使用人のみ。人工魔導師の維持に王家の使用人は使えない。髪を染めたりポーションを用意するのは我が家の使用人でないといけないのは当たり前。

 実家の財力が如実に出る。お金はいくらあっても足りなかった。






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