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第四十話 伝説のアレ。



 子供にぶつかってぽよんぽよんが上空に飛んだのだが、その後、私を追って走って来ていたシリル様がぶつかってくる。子供と私が微妙に目を回していると、シリル様だけが「役得」と言って、二人をぎゅーっと抱きしめる。? 今、抱きしめる必要ありますか? 全然無い気がするのですか!? というか減速していたシリル様がぶつかる必要も無かったような? 


 そんなもみくちゃになっている三人に、黒い綿飴みたいな雨が降り注ぐ。親指の爪のサイズくらいになってしまった無数のぽよんだ。小さくても猫のような耳と尻尾がついている。破壊力抜群の可愛さだ。私は胸にぽよんをぎゅっと抱くと、更に弾け飛んで雨粒くらいのサイズに。


 どんどん小さくなって行くんだ。可愛い可愛すぎる。これは間違いなく伝説のアレだ。あれあれあれあれ。


「「ブラックスライム」」


 シリル様と私の声が揃い、少年は目を丸くしている。


「お姉ちゃん、スライム知ってるの?」


 知ってますとも! 絵本の中で!

 初めて聞いた少年の声は意外に可愛い上に、言葉も綺麗だった。孤児なのに実の親の有りように染まっていないのだ。赤ちゃんの時、拾われたのだものね。あの失礼な院長がお母さん代わりなのかな? 失礼は受け継いでいなのかな? 


「ブラックスライムを見たのは初めてだよ? もしかしたらアクランド王国を隅々まで旅すれば会えるかも知れないね」

「……お姉ちゃん。やっぱりあんまり知らないんじゃない? これ魔界の生き物だよ?」

「………」


 あ、うん。そうね魔界の生き物ね……。お姉ちゃんのは本の中の知識ですから。

 やっぱり……はっきり言う所とか院長っぽくない? 


「この子は特別な子なの。僕が召喚した僕の使い魔。だけどそれだけじゃない。特別な魂が入っているの。この子は僕の魔術が生命。だから僕が死ねばこの子の魂は元の場所に帰る。僕たちは同じ命を共有しているの。分かる?」

「……分かるよ? うんなんとなく分かる。召喚だけではなく君の魔力が注がれた存在なんでしょう?」

「……それは僕の言ったことのまんまだね」

「………」


 まんまでオッケーでしょうよ? 理解しましたイエスサーという遣り取りの場面だし。この子、チビ院長に見えてきました。教育が行き届いている事で……。


「命の共有物。僕が死んだら使い魔も死ぬけど、僕が死なない限り使い魔も死なない。ダメージを受けるだけ。それは僕が未熟だからなんだよ? まだ闇魔法を全然知らないから。お姉ちゃんのは闇魔法素人でしょ?」

「……うん。闇魔法は素人。だけど水魔法は玄人。君と同じ魔法士だからね。相談には乗れるよ?」

「違うでしょ? 白の魔術師の玄人で蒼の魔術師のひよこでしょ?」

「………分かるんだ?」

「分かるよ。闇はそういうの分かる属性なんだから。嘘とか嘘とか通用しないよ?」

「嘘じゃないよ? 光と闇は反属性だから、君を怖がらせないように水と言ったんだよ? でも君にはそういうのは良くないと分かったから、次からどストレート直球で行くね!」

「……そうして」


 そうこうしている内に、ぽよんが全て集まり、元の大きさのぽよんになった。


「ぽよん君、元の大きさに戻ったね」

「ぽよんじゃないよ。クロマルだよ」

「クロマル君?」

「そう。黒くて丸くてふわふわで、賢くて優しくて、誰よりも温かい存在」


 誰よりも温かい存在か……。

 その一言で、どれほど大切な心の一部なのか分かる。

 つまり院長はクロマルを一緒に保護してくれる人を探していた。

 あの院長はどこまでも常識に縛られない人だ。普通は保護が決まれば森に捨てて来いとか言いかねない。それはしてはいけない事だと理解している証拠だ。だから色々考えあぐねて、伝を使ったのだろう。伝を使わなかったら、きっと魔物は魔物と扱われてしまう。ホントは友達なんだよね?


 魔物だから王家と教会はやっぱり難しい。エース家一択かな? ルーシュ様という人は見かけでは分からないが、心が広い。それは間違いない。行き場を失っている私を助けてくれたのだから。身分も申し分ないし、財力もある。そして彼は間違いなく強い。この少年を守れる力がある。面倒事を抱える事が出来る人。私は彼の侍女だから、そんな彼を支えたい。






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