第三十二話 ローラーを掛けましょうか?
私は聖女名鑑のローラー作戦を決行していた。時間が掛かるが正確な方法だ。でも推測の領域でローラーを掛ける部分を減らしてみるのはどうだろうか? と思う。洩れるかも知れないがスピードは速くなる。全領域でのローラーは聖女名鑑を見ながら遣った方が確実だ。ならば今は少し範囲を絞る。絞れる範囲指定は貧乏で身分が高いの二点。なんせ盗賊自身が自分の依頼主の事を貧乏なのではないか? と言ったのだ。危ない仕事は足の付かない金に限る。しかしお金というのはどこからか湧いて出るものではない。私はお金の無いむなしさとやるせなさを身を持って知っている。伯爵なんて名ばかりの庶民? ではないが、庶民でも私より裕福な人間はいるだろうと思う。商会長とか?
王家、公爵家、侯爵家、神官の内、王家と侯爵家は抜けるだろう。王家はそれこそ国の礎なのだから、王家が貧乏だったら国が危ないわ。自由になるお金がどれくらいあるかは分からないが……一応王家は省く。侯爵家はどこも金がある。というか金の力を高く捉えているというか……。金がなければ武器は買えない。武器が買えなきゃ国境線なんか守れるか? という非常に地に足の着いた考え方をしている訳だ。そもそも大きな産業を一つではなく二つくらい持っている。魔石だとか紙だとか茶だとか。侯爵家も抜く。残りは公爵家と神官か……。公爵家は王家の親戚筋だし、身分は高い。でも懐事情は分からない。富も有れば貧もありそうだが……。富んでそうな公爵家は抜こう。微妙に外からでは分からないが……。
残るは神官。神官は人によるかも知れないが、貴族ではない。貴族の次男坊三男坊が神官になることが多いが、爵位を継ぐ者はならない。そして給料制だ。官吏と一緒。ただし出所は国ではなく教会。教会は慈善事業なので金儲け至上主義ではもちろんない。けれど私が聖女科にいた頃の感覚では、かなりの拝金主義に見えた。なんといっても聖魔法執行料が高い。なんであんな高い料金なんだろうと首を捻る。おかしいじゃないか? 寄付やらポーションで潤っているのに、聖魔法代まであんなに高く設定しては庶民は執行を受けられない。庶民の収入の一ヶ月分くらい振り切っていた。あまり良い気はしなかった。むしろ嫌だった。教義に反する。教会が何のために税金を免除されているかと言えば、そのお金を慰問に使っているからの筈。神官は金持ちではないはずだが。少なくとも下級神官は普通だ。中級神官も普通に傍目からは見えるが。しかしあれだけの組織の長、つまり上級神官となればそれなりにお金はあるのだろうか? どうなのかな……。
これから行くのは孤児院だ。孤児院がどこの所属かと言われれば、それは孤児院による。教会の敷地内にあれば教会直轄だろう。侯爵領にあるものは侯爵家の所属である可能性が高い。今から行く孤児院は――王家だろうか? 何故なら私が学生時代慰問した事がない。慰問しているのは教会直轄だけなので、多分教会所属ではないのだ。
「……教会の関係者は、あまり裕福そうには見えませんが、どうなのでしょう?」
シリル様の質問に長々と考えた末の答えだった。
聖女とも聖魔導師とも繋ぎが取れそうで裕福ではない者。
でも――教会関係者が寄付金を襲わせるって考えられない? そもそもなんの得があるというのだろう?
首を捻る私に、シリル様は良い答えだねと言って笑った。








