第二十五話 教えて下さい。
✾書籍化✾
✾コミカライズ化✾
決定いたしました。
ここまでお読み頂いた読者様のお陰で、書籍化させて頂く事になりました。
ポイント、ブックマークをして頂いた一万人以上の皆様、一人一人の方の事を、ずっと大切に思っております。
「雨の粒にぶつかりながら落ちてくる訳だ」
シリル様の言葉を反芻する。
雨の粒にぶつかりながら落ちてくる。
真っ直ぐに落ちれば直下型雷で、威力が半端ない。
その場にいるものが全て吹っ飛ぶ勢い。
瞬時に決着がつきそうだ。
……湾曲やジグザグに落とす事で生まれる利点とはなんだろうか?
雨粒を弾きながら落ちてくるという事は、軌道変更に水魔法が有効になる。
地上に水で道を作った場合、直ぐに地面に吸収されてしまう。
空中に作った方が良いだろうか?
直線ではなく、雨粒のような水滴で作る?
どうすれば有効なのかを考えてると、シリル様が付け足すように続ける。
「君が水魔法を使うときの注意事項は、自身を基点に展開しない事。これは凄く重要だし、遣りがちな事だから気を付けて……」
それはその通りだ。そうでなければ自分が感電する。
でも遣りがちだ。自分を始点にする事など日常茶飯事。
水弓だって水槍だって全て自分が始点だ。
あさっての方向から出す訳じゃない。
「特に水系で戦いに慣れていないと、危険なんだよ?」
「………」
水が一番感電しやすい系列になるだろう。
炎も風も闇も光も土も感電しない。
水と雷って……。
相性? 抜群??
共闘に慣れる必要がある。
練習しないと。
まずはシリル様の魔法の特性をしっかり学んだ方が良い。
その為には、魔法省に出向いて、訓練を見学させて貰えば良いだろうか?
では、週に一回の休みの日に実行してみよう。
休みの日は聖女科の畑に行き薬草の確認をした後、王宮に行き第三聖女と第四聖女に会い第五聖女のお見舞いを勧めて、魔法省で見学をさせて頂く。
なかなか充実している。
ついでに、ルーシュ様の魔法展開も見せて頂こう。
礼拝堂で一度見ているのだが、あの時は、場合が場合だった所為か、まったく展開感覚が分からなかったのだ。私もそれどころではなく、人生の危機だったという事も多分にあるのだが。
魔法省での見学なら、心の準備が出来ている。
今、放ちますよ? 展開しますよ? という親切状況だ。
きっと式を読み込める筈だ。
そうすれば次にやることは、ルーシュ様の周囲の水分量を減らすこと。
結果、事前事後でどの程度の違いが出るのか? 比較して以後微調整だ。魔法省の責任者というか、それはルーシュ様のお父様なので、ルーシュ様に直接見学許可を取れば良いだろうか? もしくは正式に申請する?
「だからね?」
「え?」
シリル様の話は普通に続いていた。
彼の左手がすっと伸びて、私の髪飾りを取る。
左利き?
そういえば、サインも左手で書いていただろうか?
いや……右手で書いていた気がする。
意図している時は、右利きに見せているんだ。
左利きの雷の魔導師……。
ふと、どこか遠い昔、左手で自分に触れる懐かしい手の感触を思い出す。
髪飾りを取られ私の髪は、元のシルバーブロンドに戻った。
「?」
変装中ですけども?
シリル様??
これだと変装がちぐはぐな事に……。
シリル様は取ったリングを小さな木箱にしまってから、私に返す。
「このリングを着けるタイミングは、馬車から降りる時にしてね?」
私は首を傾げた。
何故?
馬車から降りる時、というのは孤児院に着いた時という事?
今でもその時でも大差がない気がするのは私だけだろうか?
「……銀は雷を良く通すからね」
確かに良く通りそうではありますが……。
「剣とかさ、金属物を基点に落としたりするから……」
「??」
つまり、雷を落とすときに、剣や金属物を狙うということですね?
だから一応金属である髪飾りも取ったと。
でも、何故今??
今は雷の魔術が発生する時ではなさそうなのですが……。
孤児院に向かって、焼き菓子を持って行く、三人の魔法省官吏という状況ですよね?
そして制服を着ているのは、教会ではなく魔法省に話を通したいという孤児院の意向を汲んだ証明のようなもの……。
雷を金属に落とす可能性があるので、外すというのはどこに繋がる?
「君は、馬車から一歩も降りてはいけない。窓に近づいてもいけない。全てが終わってから、このリングを着けて制服を靡かせながら降りてくるんだ」
「え?」
いよいよ私は分からなくなった。
全てが終わってからって………。
全てとは?
それについての疑問を発そうとした時、馬蹄の音が何十も響いた。
私の頭の中で、いくつかの点が線に繋がった。
孤児院で魔法省に上がってきた気になる報告とはなんですか?








