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第十七話 酔い止めポーションⅡ



 ポーションはシリル様の口元から体内に流し込まれた。

これで安心。

 やはりどこに出掛けるにしてもポーションの備えは重要だと思う。

 ちなみにこの鞄のストックポーションは孤児院に寄付するつもりで持って来た。

 沢山のことは出来ないけれど、自分が出来る範囲の事を出来ればと思う。


「おいシリル」

「なんだい小隊長殿」

「ロレッタはうちで雇用している侍女だ。勝手にダンスを始めたり、ポーションを飲むのに口移しを要求したり、誑かすなよ」

「人聞きが悪い。別に誑かしてなんかいない。丁度ダンスの練習をしたいところだったのだし、先程も体調が優れなかったんだよ」

「……自分で飲めない程か?」

「飲めるが、飲ませて貰った方が嬉しいという事」

「……甘えだ」

「ふん、甘えて何が悪い。人など相互に甘えて生きていくもの。この世は一人でなど生きていけない。そういう無理をするから生きるのが辛くなる」

「お前はもう少しガンバレ」

「必要な時は頑張るし、必要な時は甘える。僕が心の底から甘えられる人は少ないんだ。王太子と見れば寄って集って有能を要求する。もちろんある程度は応えていくが、全ての人間にそんな仮面を着けていては、休まらないだろ。側近とか六侯爵家の令息とか公爵家とか、人を見て適度に甘えるのも、王太子としての重要な責務だ」

「……責務ではないだろ?」

「緊張状態を強いると体調に影響する。体調に影響すれば政務に皺寄せが行く。そうでなくても妃である第一聖女とは狸と狐の化かし合いのような、腹に一物あるもの同士、笑顔で隠しているが、心も体も腹も真っ黒だ。疲れるんだよ」

「なんだ、その外交官のような遣り取りは? もっと仲良く出来ないのか?」

「出来る訳ないだろう? 化かされろと言っているのか? 女性として見た事は一度も無い。あれは政治家だろ?」

「そんなタイプなのか?」

「そういうタイプだ。外面は非常に気を遣っていて、煌びやかな容姿をしているが、腹の中では目まぐるしく色々な事を考えているタイプだ」

「……怖いな」

「ああ、怖い。だが容姿は綺麗だ」

「なら、一応惹かれてはいるのか?」

「まったく。容姿で惹かれたりはしない。そもそもだ。髪の色だとか、目の色だとか、目が大きいとか小さいとか意外にどちらでも良いタイプなんだよ。好きになった子の目が一重なら一重至上主義になる」

「なるほど……。分かる気がするな」

「分かるか?」

「分かるな……。背が高くても低くても太っていても痩せていても、どちらでも良いというやつだな」

「そう。どちらでも良いのだ。もっといえば、好きな子が背が高いか低いかすら気付いていなかったりする。言われてみればそうだね? くらいのものだ」

「……確かに」

「だから僕の推しが、目が吊っていようが、痩せていようが、髪の色が珍しかろうが、目の色がブリザードだろうが、僕に取っては全てが長所になる訳だ」

「…………」


 私は二人の会話を尊重し、窓から景色を眺めていたのだが、ルーシュ様に話しかけられる。


「おい。備えとけよ?」

「え?」

「シトリー伯爵が、急ぎ手続きをしているだろうが、確認だけはしておけよ?」

「……何を?」

「身を守る準備だ」

「身を守る準備ですか?」

「魔法だけではない。権力も身を守ってくれる。同じ轍は踏むなと言いたい」

「……」


 黙り込んだ私から視線を外すと、ルーシュ様は顔色の良くなったシリル様に向き直る。 


「シリル、ロレッタにちょっかいを出すのはここだけにしとけよ」

「……それは分かっている」

「王太子が第二聖女に興味を持っていると噂になってみろ? 彼女は完全に教会の後ろ盾をなくす」

「……教会の後ろ盾は既にないよ」

「…………」

「……でも…、今回の事でセイヤーズ家が表に出てくる。エース家の侍女としてエース家も付いている。六大のうち二家が味方につく。それは確実だ」

「セイヤーズとエースの仲がな……」


 ルーシュ様は渋い顔で呟く。

 やっぱり、そこ仲が宜しくない?


「エース家は塩で散々セイヤーズ家に辛酸を嘗めさせられてるしね……」

「……あっちは国内最大の塩湖があるからな……。あの湖の塩はブランド化されていて高値な上に、体の炎症を鎮める効果があると言われているんだ……」

「……炎症ね……。なんでそんな効果が添加されているんだろう?」

「知りたいが、入山規制されていて入れない………」


 ルーシュ様は難しい顔をする。


「……それにエース家とセイヤーズ家は唯一婚姻が持たれていない六大侯爵家なんだよな」

「まあ、それは相性だよね」


 シリル様は当たり前だ、といった様子で何度も頷いている。

 炎と水だから?

 やっぱり魔法の相性が最悪??






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