表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/433

第十四話 男爵令息と侍女。




 私はシリル様が用意してくれたお仕着せに着替えていた。

 動きやすくて軽い。エース家のお仕着せも品が良くて大好きだが、この男爵令息の侍女という肩書きのお仕着せも可愛い。くるりと回りたくなる仕様だ。


「……実はロレッタ」

「なんでしょうか?」

「僕は卒業記念パーティーに参加する予定でいたんだよね?」

「そうなのですか?」

「そうそう。でも急な仕事が入ってしまって……非常に残念だが参加できなかったという訳だ」

「……なるほど」

「その時に、君にダンスを申し込もうと思っていたのだよ」

「…………え?」


 まさか自分にダンスを申し込んでくれようとしていたなんて驚きだ。

 ちなみに私のダンスは上手くも下手でもない。中途半端な…というか至って普通という出来だ。何で踊れるかというと一応伯爵令嬢だから。どうして上達しなかったかというと貧乏だから? だと思う。


 しかし、卒業記念パーティー直前三ヶ月で猛特訓した。婚約者である第二王子殿下と踊る予定でいたからだ。そのまま結婚する流れだった………。今考えるとなんでそんな運命だったのだろう? 全然好きでもない人と政略結婚。理由は第二聖女だから……。


 もし彼と結婚していたら、どんな人生が待っていたのだろう? 浮気されるなど日常茶飯事。側妃はどれくらいいたのだろう? 王太子ではないから、側妃を沢山持つ必要などないので、ただの愛妾かもしれない。子供の数はきっと二桁。私は最初から最後まで呼ばれる事も無く、王宮の片隅で朽ちていくのだろう。


 王宮の片隅で忘れられるというのは、そんなに悪くは無い。

 彼に会わずに済むのだから。自由だし?


「それでね?」

「……はい」

「一曲踊らない?」

「え?」


 シリル様、今なんて言った?


「僕と一曲踊らない?」

「??」

「ここで」

「??」

「踊ろうよ?」

「??」


 戸惑って立ち尽くす私の手を引き、シリル様はエスコートする。

 イヤイヤイヤイヤ、曲は??


 シリル様がパチンと指を鳴らすと、ヴァイオリンを持った侍従が現れた。

 嘘! 待機してた!? もの凄くスムーズに出てきた。


 シリル様の手がそっと腰に当てられる。

 私はドレスではなくお仕着せだ。

 いったい自分たちは何をしているのだろう。


「ね、練習だと思って一曲踊ろう」


 耳元にシリル様の口元が近づいて囁く。

 いやでも。

 私は困惑していた。

 あれよあれよとダンスをしそうになっている自分と。

 魔法省の制服を着て、入って来たルーシュ様の姿に。


 制服!?


 何故、王都観光に制服!

 制服を着ているという事は、仕事だという事だ。

 緊急の仕事が入った? でもその割には急いでいない。


 ということは――


 ルーシュ様はヴァイオリンを止めさせると、何事もなかったように声を掛ける。


「早く着替えて来い」

「?」


 つまりは魔法省の仕事だが、魔法省に出勤する訳ではないという事。

 音楽が止まったので、シリル様も足を止めてルーシュ様を見ていた。


「つまりは、聖女の制服ですね!」


 私はシリル様の手を離し自室に駆け出した。

 多少、はしたなかったでしょうか?

 急ぎだ。


 シリル様は膝を突いて絶望していた。

 すみません! 主の命令です! ダンスは後日!


 そんなシリル様に、お前も着替えてこいとルーシュ様は淡々と告げていた。

 昨日、ルーシュ様が着ていた神官服ですね! きっとお似合いです!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック】『紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。@COMIC 第1巻 ~聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません~』
2025年10月1日発売! 予約受付中!
描き下ろしマンガ付きシーモア限定版もあります!

TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。コミック1宣伝用表紙
第3巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第2巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第1巻 発売中!! TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。1宣伝用表紙
― 新着の感想 ―
[一言] シリルの無念たるや…(笑) 憧れの真の聖女とのダンスが…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ