【006】『職業安定所(下り坂?)』
シンプルな洋服に着替えて職業安定所に行く。何を着て良いか分からなかったから、一応紺色のスカートと白いブラウスにしてみた。思えば服も支給される職場が良いなと思う。服代が浮くしね? 重要だよね? つまり衣・食・住と全部浮くと嬉しいなという事である。結構厚かましい。でも具体的に考えておいて損はないはずだ。絞り込みやすいし。
職業安定所がどこにあるのかというと、公共機関が集まっている通りにあった。教会だとか裁判所だとか王立学園だとか。国の中心は王宮で、王族のプライベートエリアである内廷があり、その外側前面が外廷になる。そこに各政治機関があり、城となる。そしてその城の周りが準機関となる。だんだん外側に薄く大きく広がって行く。つまり学園や職安はその二層エリアにある。意外に近い。学園の学生課に行っても良かったかもしれない。今日見つからなかったら、明日は学生課に行って相談してみようと思う。
職安といっても、所謂貴族対象の職安かなと思う。男爵とか子爵とか。こぢんまりしていて割と綺麗な作りをしている。ギリギリ貴族で良かった。庶民だったらもう少し厳しい条件だったかもしれない。庶民用は冒険者ギルドの隣にあるので、ここで一週間見つける事が出来なかったら、そちらにも行く必要があるかもしれない。何か、坂道を転がり落ちていくようで怖くなる。何故に三日前まで第二王子殿下の婚約者だったのに、今は職安?
いやいやいや。考えるまい。私は受付で学生証を見せて登録した。これで使い放題!? かどうかは別にして、良い掲示があったら紹介して貰える。
私は掲示板を目を皿にして見ていた。募集が少ないのかチラホラしか貼っていない。この中から、住み込みか寮完備を選ばなくてはならない。住む場所が無いって虚しいわね。ちなみにシトリー伯爵家のタウンハウスは賃貸として貸し出している。財政がのっぴきならないのだ。背に腹は代えられない。
やっぱりメイドかな? 住み込みになるし、お仕着せもあるし、食事もついている。そうと決まれば心優しい主人の家で、メイド長も優しくて、虐めなどはないところが良いな? でもそういうのは目には見えない。どうやって選ぼう?
選ぶほど募集はないのだが、目を血走らせながら掲示版を見ていると、同じく掲示板の前にいた青年にぶつかってしまった。
「きゃっ」
三日前はドレスで全力疾走をしても転ばなかった私だが、掲示物の確認に身を乗り出し過ぎ、その上周りが見えていない所為で、平らな場所で転びそうになった。迂闊だ。
来たる衝撃に備えて目を瞑るという、何の解決策にもならない行動を起こして、私は空に投げ出された。