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第七話 紅い瞳の色



「ルーシュ様に一番お似合いになる眼鏡を買って、その場で色を入れる魔術を掛けて、梱包して、感謝の言葉を添えて贈りたいのです」

「……」


 眼鏡か……。確かに今回はシリルこと王太子であるシルヴェスターの眼鏡を借りて変装した。元々黄色の瞳を茶色に変える為の魔道具だ。レンズに青と赤が配合してある。つまり紅い瞳のルーシュが掛けると、青が入り紫へと変化する。変装として使うならば紫への変化は賢明とはいえない。紫と言えば闇の魔導師を表す色になるから。瞳の色と髪の色が鮮やかな紫だと闇魔導師と間違えられる。


 だが、今回わざわざ髪の色と瞳の色を変えたのは、紅の方が目立つからというシンプルな理由だ。紫なら室内で濃い色の髪に見えなくもない。もちろん意識をして見ればハッキリ紫だと分かるのだが。紅や黄色という色は色の三原色でも分かるように、それ以上の色に分解出来ないもっとも彩度の高い純色になる。太陽の下なら尚更、室内でも人目を引く色だという事だ。派手とも言うが。


 紅よりは紫の方が良いだろうという事で暫定的に紫にした訳だが、もちろん絶対多数の茶色ならその方が無難だ。茶色も透き通る紅茶を思わせる綺麗な色ではあるが、一般的に人目は引かない。髪も同じ事が言える。


 つまりは目の前のこの侍女は変装の精度を上げるために、茶色に変化する眼鏡を贈りたいということなのだろう。その方が変装として安全ではある。更に本人が言うお礼がてらというものかも知れない。


 ロレッタは大変に腰の低い侍女だが、侍女は主人を観光に誘ったりはしないから、心はまだまだ伯爵令嬢なのかな? と思う。そこが不器用でもあるが。

 そもそも主人である自分が完全な侍女扱いはしていない。侍女を隠れ蓑にしているだけだ。本気で侍女を極めさせるつもりもないが、隠れ蓑にしては多少弱い気もする。何と言っても今期のナンバーツーだ。熱りが冷めたら王家から何らかの打診があるだろうし、その内容は第三、四王子との婚約だろう。年齢的にも魔力素養から考えても第五の線は薄いので、第三王子か第四王子。そしてその話がまとまらなければ教会への所属だ。教会で聖女として働く。この二択だろうなと思うが……。


 一年も野放しにはしないだろうな? 第二王子と婚約破棄が成立した以上、内々には打診をしてくる筈だ。もちろん雇用しているエース家ではなく、シトリー伯爵家にだろうが……。伯爵は割とつかみ所のない人に見えたが、今回の婚約破棄騒動でセイヤーズ家が出てくるかも知れない。名前だけでもセイヤーズの養女にした方が大変守りやすく、更には動きにくくなる。聖魔導師で水の魔導師、聖女としてナンバーツーのフリーか。


 第二王子から婚約破棄をされたという事で、伯爵令嬢としては大々的にきず物になった訳だが、そんなものは六侯爵家は気にしないだろう。面子よりも魔力だ。貴族は大変面子に拘るが、六大侯爵家は面子より実質に拘る。必要な時は面子に拘るように見せるが、それは演技だろうと思う。


 更にいうと身分にすら拘らない。拘っているように見せる事もあるが、腹の中では順位は低い。そうでなければ、いくら魔導師だからとて、孤児を引き取って養子にするとは考えないだろう。


 魔力素養というのは劣性遺伝になるから、魔導師は父親から一つ、母親から一つ、計二つの因子を受け継ぐ事になる。つまり元第二王子のように魔法素養の因子を一つしか持っていないと発現しない。優性であるならば一つでも発現する。この魔法素養が発現していない一つの因子を持ち合わせた人間同士が子を成すと四分の一の確立で二つの因子を持った子供が生まれる。そして二分の一の確率で因子を一つ持った子供が生まれる訳だ。


 因子を一つ持った子が、自覚無しに子をなしていくと、ある日何処か遠い所で魔力素養を持った子が誕生する事がある。第一聖女はこのパターンだという訳だ。しかし仮に、王太子と第一聖女の間に魔力素養のない子が生まれた場合。これは有り得ないという事になる。第一聖女も王太子も魔力素養因子を二つ持っているから。


 つまり結論として、第一聖女が不貞を働いたか、もしくは彼女自身が光の魔導師ではないという事になる。どちらに転んでも第一聖女は終わる。ただし、彼女が祖母から受け継いだ魔法素養の因子を一つ持っていた場合、魔導師が生まれる確率は五十パーセント。二つに一つだ。出る目ではある。魔法素養のない子ならば、病気を理由に早々に里に出すかなにかして、産み続ければいつか出る数字。


 だがどれも危なすぎる橋だな? 橋は既に作られているのか? もしくは正真正銘の第一聖女な訳だが。第一聖女ならば王太子のあの態度はおかしい。子を成す気などこれっぽっちもないという言い方だった。あればまったく上手くいっていないというか、上手くいかせる気もない。


 教会は一大勢力。六侯爵家とは違った意味で敵に回してはならない存在。網の目のように国中に小さな勢力が広がっている。しかも表面上は庶民の味方。実際に傷病を治しているのは教会という看板なのだから。


 表立って第一聖女を蔑ろにするのは大変不味い。何故なら彼女は第二聖女とは違う。第二聖女は生粋の貴族であり伯爵令嬢だ。しかも庶民は知らないであろうシトリー家。しかし第一聖女は神官長の娘。聖女の頂点であり、教会のシンボルのような立ち位置にいる。もしかしなくとも庶民は王太子と第一聖女の子を心待ちにしているかも知れない。


 いやな空気だな? 茶色の眼鏡は必要だな。

 これを機に作っておくか。

 神官服も出番がありそうだ。

 この神官服は王太子が用意したもので、本物なんだよな……。

 上級神官、中級神官、下級神官、地方神官と何バージョンも用意してたぞ。

 それはそれできな臭い。






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― 新着の感想 ―
王太子は王太子でなんでそんなに用意できるの(笑)
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