第六話 王都観光
ルーシュ視点になります。
「いや…楽しみですね! って」
「……楽しみじゃないのですか?」
「いや……楽しみじゃない訳ではないが、そもそも行く予定じゃないという段階の話で……」
「行かないのですか!?」
「…………」
俺は行く予定じゃなかったよな? それで合ってるよな? 勘違いじゃないよな?
「………ロレッタは久しぶりの家族水入らずだろうし……家族三人で行く予定で良いじゃないか」
「………それは…ちょっと」
何がちょっとなんだ? 一番ノーマルな組み合わせだぞ。
「ルーシュ様がいなければ楽しめません」
「いや、観光は雇用主などいない方が一般的に楽しめるのではないか?」
「そういう問題ではありません」
じゃあ、どういう問題なんだ。
「私の頭の中の予定ではですね。両親とは別行動で眼鏡屋に行ってですね、ルーシュ様に一番お似合いになる眼鏡を買ってですね、その場で色を入れる魔術を掛けて、梱包して、感謝の言葉を添えて贈りたいのです」
「………」
頭の中の予定と言ったな? 間違いないな。
「気持ちをお伝えしたいのです」
「気持ち……」
「どれくらいあの場にいてくれた事を感謝しているか、それをお伝えしたい。伝えたいと思った時に、伝えたいのです」
「……いや、今まさに受け取ったから大丈夫だ」
「これは予定を伝えているだけで、気持ちではありません!」
「………」
そうなのか?
大分気持ちも乗っていたと思うが……。
王都観光。行く気満々のようだが、誰が主催なんだ?
「……時に、その王都観光とやらはシトリー家が予定を組んだのか?」
ロレッタは少し首を傾げる。
「違うと思います。父がそのような事は言ってませんでしたので……」
「じゃあ、誰が主催なんだ?」
ロレッタは更に首を傾げた。
知らないんだな? 知らずに行く気満々なんだな。
調べるか。まあ予測は付くが。
「せっかくロレッタの両親が王都に上っているんだから、初日だけ挨拶がてら同行しよう」
「初日だけですか!」
いや……。そもそも侍女と雇用主が観光というのが、かなりイレギュラーだぞ。別に良いが。
「では、エース家の馬車も用意しよう。伯爵と伯爵夫人は主催者の馬車で、ロレッタと俺は途中から眼鏡屋と種屋だな」
ついでに服とかも何枚か買ってやりたいな。どういう名目にするかな? 魔法研究と関連づけて、研究服とかが自然かな? でも作業着みたいなものを選ばれるとちょっとどうだろうと思うな……。
ロレッタには、侍女として両親の身の回りの世話と、接待全般をするよう言ってあるので、滞在中は観光に同行してくれて構わないのだが、そこに俺もとなると微妙だな? セイヤーズ家の次男とエース家の次期当主か……。ただ、それを言い出したら切りが無い。そもそもが泊まっているのだし。
あと小麦系の焼き菓子。好きそうだったから、美味しいお店を調べておこう。
お茶も美味しい所がよいな。ああでもこれは完全に主催者に恨まれるやつだ。どうするかな? 目に見えるようだ。








