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【005】『私の履歴書(ヤバイ)』

 私は机の前に履歴書を広げて、様式を見ていた。雇用主が雇用したいと思う履歴書とはどんなものだろうか? まずは字を丁寧に書こう。読むのに無用なストレスは与えたくない。私は履歴書を書くのは人生初めてな訳だが、卒業と同時に就職を考えていた人間は書いていたように思う。


 ただ聖女科は書いていない。学年に一人だから分からないが、第一聖女の先輩は少なくとも書いていなかった。進路が自動決定してしまうからだ。貴族の嫡男も書いていなかっただろうか? これは家の方針によりまちまちだった気がする。嫡男でも何年か省庁に文官として従事する場合もあるし、騎士として武官になる者もいたかもしれない。


 取り敢えず聖女科入学が十一歳の春。そのまま六年在学で卒業となる。そこは工夫をしようもない所なのでそのまま記入。卒業研究は『体内の魔力制御』だ。魔力コントロールは非常に重要な部分で、私は体内の魔力量では第一聖女様に後れを取ったがコントロールは得意としていた。


 体内の魔力を要領よく使いこなす技術だ。これは二属性が顕現した事によって、外せない技術になったのだ。水と光、相互に上手く使わないとあっという間に魔力が枯渇してしまう。少ない力でそれなりの効果を。平たく言うと省エネ研究だ。平たく言うといまいちなので、履歴書には平たくは書かないこと推奨。


 特技はなんだろう? 速読とかかな? 教科書関係はやたら速く読めるようになったが、これは雇用主の利益に繋がる力になるだろうか? 仕事のルール本は速く読めるが、それと覚える技術は違う。うーん。暗記ってのも特技と書くほどではないし、料理や掃除としとこうか。なんせ貧乏貴族だったから、身の回りの事は全部自分でこなしてきた。ついでに幼い弟の分もしていたくらいだ。結構な特技と言えるかもしれない。


 趣味は……。勉強か? いや趣味が勉強なんて嬉しくない。雇用主的にも。ここは雅なご趣味ですね? 的なものがいいよね。しかし、私ってこうやってみるとあんまり取り柄がないというか、ガリ勉というか、悲しいかな履歴書までグレー色だ。もっとピンク色のハッピー人生を演出したいが、人生自体はグレーどころか婚約破棄で真っ黒なので、グレーを演出出来ればよしとする。


 それで趣味は……園芸とでもしておく。別にさ、可愛いお花とか育てた経験は全くないのだが、聖女科って広大な畑があるのよね。そこで薬草なんかを育てているから、まあ畑仕事も得意な訳だ。こんな所かしら。


 あと資格。資格……資格か。なんかあった? 馬車の御者台とか上れないから御者の資格とか持っていないし。でも取っておいた方が何かと便利な気がしてきた。だって例えば盗賊とかが襲ってきて、御者が一番に狙われても、ご主人様、お任せ下さい。私も御者のライセンスを持っておりますので、なんて言って、胸のポケットからライセンスが出てきたら格好良いわよね? いかにも使えるメイドという感じで……。


 脳内妄想が違う方面に振り切った所で、私は資格のところに、ポーション生成薬剤師免許F級と書いておいた。AからFまで等級があるが、初歩の初歩F級。聖女科は卒業するとF級が自動的に取れる。唯一の売りね? ポーションの単位を大学で追加するとD級まで取れる。……取っておこうかな……。就職が出来て落ち着いたら単位だけ取りに週に一回大学に一コマだけ受けに行こうか? むしろお金を貯めて夜間大学コースに通おうか? 


 ずっと自分の力を頼りに生きていくのなら、F級は少し心許ない気がする。C級から錬金術師と呼ばれ、A級は特級錬金術師だ。国にも数えるくらいしかいない。格好いい! 流しの錬金術師! それもありかな……。食べていくのに一生困らなくなるし。国から国へ渡り歩き、病人を治しながら報酬を得るの。そしてみんなに感謝されて。


 そんな脳内プランに陥ったところで、普通に流しの聖女で良くない? と思って気勢が逸れる。いやちょっと肩書き聖女って目立つのよね? 放浪生活には向いていないかもしれない。やはりここは世を忍ぶ仮の姿として錬金術師という隠れ蓑があった方が便利だ。そうだよ、聖女が放浪していたら、まるで国から婚約破棄された問題児みたいじゃないか……。いや……まさにその問題児なのだが。色気と真実の愛が無いため、婚約破棄! みたいな。


 ともすれば思考が傷心の傷をえぐる方向に行きがちになるので、思考をストップする。とにもかくにも今は就職。寝る場所の確保。私は履歴書を書き終えると、いそいそと出かける準備をした。




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