443【41】『どこから出すのでしょうか?』
ところで『地獄の業火と雷王の剣(仮)』は何処にあるのでしょうか?
今、アシュリ・エルズバーグがあっさりと
「じゃあ、『雷王の剣』から出すか?」
と言いましたよね?
やはりというか、なんというか時空間から出すのですよね?
紫の魔術師が言うのですからそうですよね?
これでその辺の倉庫から出された日には……すっ転ぶという……。
「あの、どこに仕舞ってあるか聞いていいですか?」
「いい訳ないだろ」
「え?」
駄目なんですかっ。
この流れで?
いや、私が代表して聞きましたけども、よくないですが? 至極一般的な会話の流れでしたよ? 唐突でもなんでもないですよ?
「紫の魔術師が仕舞ってあるというのですから普通に時空間としか考えられませんけど」
「だったらわざわざ聞かなくていいだろ」
「…………」
叔母様。私の大切なミリアリア叔母様。
この人のどこが良いんですか?
どこかに長所があるんですか?
無駄に喧嘩腰なのですが?
酷くないですか?
私、義理の姪なんですけどっ。
この人、私が親族だって分かってる?
分かってない?
あなたの愛しい妻の兄の子ですよ?
ワンクッション置いた感じの親族ですが……。
「私とミリアリア叔母様って似てないんですか?」
「……顔は似てなくはない」
なんだろ二重否定により肯定であってる?
「似てるんですか?」
私は色素配合は完全に父派ですからね。
「まあまあな」
そうなんですね。まあまあ似てるんですね。
私はシトリー領館で思い切り逃げられた姪なので、顔を合わせたことがない。
ミリアリア叔母様は父に似ているのかな?
「じゃあ、なんでそんなに意地悪をするのですか」
「お前は血が繋がっているというだけで親切にするのか? おめでたい奴だな」
「(怒っ)」
「王太子と王妃は血が繋がっているぞ。優しくするのか? あの魔女に」
魔女って。
魔導師女子はみんな魔女ですからね。
というか魔導師男子に魔女とか言われてもっ。どうなの? 同類じゃない?
しかし――王妃陛下という人は、別に私の優しさ何ぞは求めていない。
そういうタイプじゃないと思う。
光が全身から零れて落ちる程の美貌で、権力も最上位、魔力も高い元第一聖女で在らせられる。
「王妃陛下は私など視界に入っていません」
「いや、入ってるだろ」
「…………」
入ってはいるか。だからあんな嫌がらせを受けるんだし。
「ギリギリ入ってましたね」
「ギリギリどころかがっつりだ」
「……そうですか」
がっつりか。なんか落ち込むね。その言葉。
逃げるところが何処にも無さそうで。
だってあの人は、アクランド王国の王妃なのだから。
どこに逃げても、きっと追ってくる。
「がっつり嫌ですね」
「それは嫌だろうな」
「聖女よ安心するが良い」
「え?」
アシュリ・エルズバーグに続いて女王陛下が口を開く。
「ここは精霊の国、精霊樹が守る国。アクランド王国王妃の力など届かぬ」
確かに。だから第五王子の避難場所でもあるのだし。
「確かに安全ですね」
「亡命しても構わぬ」
「ん? …………亡命」
なんか凄いワード出た。
亡命。つまり…………流しの聖女。
それ一度憧れたことあります。
「……第二聖女が亡命ですか」
私は怖ず怖ずと聞く。
「第二聖女が故に亡命という手段になる」
「…………」
何故か女王陛下はハキハキとお答えになった。どうしてそんなに元気?
どうしよう、俄に『流しの聖女』への道が開かれそうな予感。
どうせ王妃陛下に無理矢理婚姻を迫られている身。
いっそ亡命してしまった方が、運命が開かれる?
第五王子殿下と共にこの地に逃げ落ちるべきだろうか?
ちらりとルーシュ様を見たら、目が笑ってない笑顔。
あの笑顔は、つまりは怒っていらっしゃる?
「ルーシュ様、亡命は……どうなのでしょうか? 意外と……」
「意外となんだ?」
「いえ、意外と名案では?」
「そんな訳ないだろ。どこが名案なんだ? 『流しの聖女』の事は忘れるように言った筈だが」
「…………」
ですね。
確かに忘れるように言われました。
「ロレッタ?」
「はい」
今度はシリル様に目が笑っていない笑顔を向けられる。
「精霊術と魔術は根源と崇めるものが違う。精霊の国では魔術はあまり相性が良くない。魔導師が生きる国としてベストではないのだよ?」
「?」
普通に使えますよね? 魔術。
だって紫の魔術師が女王陛下の目の前で転移魔法を……。
目の前って……。うん。
「陛下がお許しになっているから、魔術が見逃されている。つまり精霊王が許しているという状況だから制限無く使える訳だ」
成る程。
しかし、私が亡命した場合、女王陛下の管理下に入るのならば、あまり大きな問題ではなさそうな……。どうなのかな?
「聖女の魔術はこの国で使い放題。案ずるな」
あ、やっぱり。
でもシリル様が女王陛下を睨んでいらっしゃる。
あまり快諾して欲しくなかった案件なんですね。
亡命か。淡く甘美な響きだったな。……亡命。
何もかも忘れて、身ひとつで落ち伸びた隣国(アクランド王国の属国)。
属国というのが微妙かもな……。
でも同じ国内にいるよりはずっとよさげ。
「選択肢の一つとして大切にとっておきます」
「「取っておかなくていいし」」
ルーシュ様とシリル様の台詞が被った。
実際二人は息がぴったりという。
「仲良しですよね?」
私が微笑んでそう答えると、場に二度目の静寂が訪れた。
今年最後の投稿になるのではないかと思います。
皆様に支えられて、ここまで執筆を続ける事が出来ました。
ありがとう! 来年も良いお年を(ΦωΦ)









