【043】『あなたの価値』
「バーランド君」
お父様がまだまだ喋る気でいます。もちろん敬称なしです。少し慣れてきました。
「君は、この大量の慰謝料に疑問を感じているよね? 何故シトリー家へこれ程払われる? と思っているかな? もちろんミドルトン家預かりのココさんが同じように婚約破棄されてもこんなに大量の慰謝料は払われないよ?」
お父様がミドルトン男爵の前でとんでもない事を言い出した。男爵が目の前に居るの忘れてる? それともわざとなの!?
「この慰謝料は、王家が娘のロレッタに付けた価値だよ。彼女の聖魔法と水魔法を使いこなす価値をお金に換算しているんだよ。ロレッタが今後生むであろうポーション、治癒代、治水開発代等々、挙げれば切りが無い。これを算出するには聖女科在学時の成績表が参考にされる。ロレッタの成績はS。オールSだよ。なかなか取れないよね? 親として誇りに思うよ。彼女の努力への証。目に見える評価。だからココさんの成績はそれほど良くないよね? 才媛だなんて聞いたことないし、急ぎ調べたけど、勉学には熱心じゃないと聞いているよ。だからそんなに慰謝料は出ないんじゃないかな?」
調べたんですね? 多分セイヤーズ家のお兄様が……。
「そして彼女は腐っても伯爵令嬢。伯爵家の長女だし、戸籍もロレッタ・シトリーとなっている。当たり前だけどね、当主と本妻の子だよ。だから慰謝料はこの家に対する価値という部分でも計算される。二つ目の評価ポイントだよ? シトリー伯爵家なんて弱小だけどね、まあセイヤーズ家の一部みたいなものだから、セイヤーズとして価値基準を決める訳だ。六大侯爵家は建国からの王の盾。水の魔導師の一族。国境線を守って来ている訳だよ、代々ね。王家への貢献もミドルトン家とは比ぶるべくもない。ミドルトン家が守れるの? というのが正直な所だし」
凄いミドルトン家をこき下ろしてる。ミドルトン男爵はこの話をどう聞いているのだろう? 私が男爵へと視線を移すと、小刻みに震えていた。怒りではなく六大侯爵家を敵に回してしまったという恐怖で青ざめ震えている。
「そして三つ目。彼女の中に流れる魔法素養。彼女の中に流れるのはセイヤーズ家つまり水の魔導師直系の血統。それだけでも将来産むであろう子供への価値は大変高く評価される。そして彼女の母親は公爵令嬢であり、光の継承も入っている。祖母は王女で曾祖母は第一聖女であり、王妃であり国母。その血統への価値が高く評価されているんだよ? だって彼女は魔導師と結婚さえすれば魔導師を産む可能性が高いからね。だからねーー」
そこまで言うと、お父様は私に向かって分厚い書類の束を見せ微笑んだ。
「これは君の価値なんだ。素晴らしいよね」
まるで自慢の娘を見るように優しく微笑む。
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