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404【02】『昔の私と今の私Ⅱ』



 昔はどこにあるのだろう? 

 私の歴史は十七年弱。

 そんなに長くは……ない……よね?

 みんなそんな感じだと思うのだが。


「シリル様は『昔』をご存知なのですか?」

「……全然」

「え?」

「全然ご存知じゃありません」

「ご存知じゃありませんって?」

「それはご存知じゃないだろう? ご存知だったら吃驚じゃないか」

「……そうです? ね」

「そうだよ。ルーシュと君の『昔』はご存知じゃありません」

「…………」


 あまりにもキッパリとした宣言に、私は逆に首を傾げた。


「……実は少しだけご存知だったりするのですか?」

「そんな訳ない」

「そんな訳ないですよね?」

「うん」

「私、少しだけでも知りたいな? とか思ってしまいました」

「……そうなんだ」

「そうなんです」

「少しだけ?」

「そうです。少しだけ」


 私が伝えるとシリル様はコホンと一度咳払いをした。


「言い伝えレベルでは少しだけ知っている」

「言い伝えですか?」


 それって伝説?

 言い伝えとは話が大きくなり過ぎでは?

 親伝えの間違いでは?


「私の父や陛下、エース長官から聞いたとかではないのですか?」

「…………」


 私達は一応? 貴族の子女なので、幼少期に何かしらの関係があったという可能性もなくはない?

 記憶が定かではないくらいの幼少期とか?


「七大賢者の子孫はそれなりに繋がっているといわれている」

「…………」


 私とルーシュ様の『昔』がどこまで戻るんですか? 建国期まで戻るのでしょうか?

 『昔』とはそういうレベル??


「初代アクランド王と初代王妃と初代紅の賢者は同じ村出身なんだよ?」

「……そういいますね」

「つまり幼少期を一緒に過ごしていることになる」

「そうなりますね」

「……つまり初代王妃の聖魔法を何度も何度も幼少期から体験していることになる」

「……なるほど」

「子供同士のことだから色々な戯れもあるということだ」

「え……――」


 それだとどうルーシュ様に繋がると。

 しかも子供同士の戯れって。

 そんなことあるのかな…………。


 私も一応聖女ですけども、記憶の限りでは幼少期の戯れなんてありませんけども。


「……つまり、そういう古の記憶が脈々と受け継がれ、突発的に蘇ったと。そういうことだろう」


 えー……。

 なんですかそれは?

 本当に伝説レベルですね?

 内容は全然伝説でもなんでもなく、巷級ですけども。


「シリル様、そんな古の記憶の突発的な蘇り? といわれましても。子孫は別人だという」

「ロレッタはお伽噺は嫌い?」

「いえ、どちらかというと好きです」

「魔法は魔法で、伝説は伝説で、お伽噺はお伽噺。色々あるから」

「…………」


 色々あるのですね?

 つまりルーシュ様の『昔』は、お伽噺の中――という流れなのでしょうか?

 有耶無耶になりそうです。


「『昔みたいにして』は目的語が抜けている」

「目的語ですか?」

「そうそう。何をという話。ついでに主語も抜けている」

「ほうほう」

「なので凄く曖昧」


 確かに、取りようは幾通りかある。


「そういう曖昧な部分は言った本人にしか分からないので、深追いのしようがない」


 自信満々にシリル様は言ったが、言われた当人である私はその部分は理解しているつもりだ。

『私がいつもみたいに聖魔法をかけて』という意味だ。私が主語で聖魔法が目的語。


 問題は『昔みたいに』という追憶の部分だが、その部分もルーシュ様の行動によって答えは出ている。聖魔法を口と口の接触によって展開してくれという意味だ。


 口と口の接触。

 唇と唇の接触。


 つまり――


 そこまで考えて『きゃ』となり、体がクネクネする。

 なにか照れと恥ずかしさにより自動的に体がそういう反応に。

 発動効果長いね? 永遠に続きそう。

 思い出すと何度でも幸せな気持ちになるというか。

 ドキドキするというか、多幸感というか。


「つまりルーシュ様の遠い祖先が、聖女とそういった戯れの幼少期を過ごした関係にあったのではないかというのがシリル様の推測ですか? それが何かの弾みで血統継承者にフラッシュバックしたと」


 最早壮大なロマンになっている。


「もちろん僕の中にもあるはず。だって王の后はいつでも聖女だから。それは今期も変わらない。今期だってその期の最上の聖女が王太子妃になる。そしてそれは第二聖女である君のこと。サクッと結婚しちゃう?」

「はい?」

「もう四の五の面倒なこと考えないでサクッと結婚する?」

「四の五のって」

「難しく考えないで直感とか?」

「私、誰とも結婚せずに直感で侍女を全うします」

「やっぱりそれ?」

「やっぱりこれです」

「ロレッタの意志ははっきりしてるね?」

「はい」

「僕はね、本当のことを言うと外堀を埋めたり、根回ししたり、本人の知らぬうちに取り決めることは得意だったりするんだけど」

「…………」

「しないって決めているからしない。王太子がフェアなんてありえないんだけど、もう後手後手になってしまうんだけど、らしくないんだけど、それでもね――」


 シリル様は少しはにかむように微笑んだ。


「泣かしたら意味ないって話」



 シリル様が私を見て優しく微笑む。






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