表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

287/433

第13話 魔術師の晩餐9





 私はシリル様にイチャイチャしていない宣言をしたのですが、伝わったでしょうか?

 彼の様子を窺うと、なんとなく何か考えているような雰囲気がした。



 話は大分それてしまったが、そもそもルーシュ様とシリル様でツーカーで分かり合っている件を私も知りたいということなのだが。そうだよ。私だってこの場にいたのに、分かっていないなんて、分かりたいじゃないか?


 特性理解が鍵か……。

 雷の魔術特有の何かが作用してああいった結果になったということ。

 意図してではないのだろうか?

 でも本を持って来るよう侍従に頼んだのはシリル様本人な訳で、そうなってくるとあの結果も頷けるのだが………。


「あの、シリル様は魔導書を一秒でも早く処分したかったのですよね?」

「まあ、そうなるかな」


 そうだよね? そうなるんだよね。

 出張初日はあんなにも気に入っていたのに。

 大切そうにしていたし、私達も知られざる古代魔術を使ったクイズなんかが面白くて、うっかり馬車ごと水を被ってしまったという……。


 それで影に怒られもしたのだけど、それも良い想い出というか、楽しいの一部だった。

 影にとっては大変迷惑な行いではあったと思うが。 


 あの時あの瞬間まで大切な本で、魔導書としても大変貴重。

 複製ではないから、今になってみても私からしたら本が惜しくて惜しくて仕方がない。

 何故処分しなければいけなかったの? と考えれば、この国の王太子殿下にとってあってはならないものだということを、時空間の魔導師であるアシュリに会って思い出したということになる。



 古代魔法を過去へ葬ったのは王家そのもの?

 そうなるよね?

 王家にとって古代魔法があるということは、困った何かが有るわけだ。

 現代魔法が古代魔法に取って代わったのは自然にではなく、必然だった。

 古代魔法の何が王家にとって、困る存在だったのだろう? 



 あんな貴重な本なのに――

 あんなに作者の思いが詰まったものなのに――


 一瞬で灰になってしまった。

 もうそこに描かれていた図案は読めない。

 消失してしまったのだ。

 本ごとこの世から。

 古代魔法の一部がまた一つロストしたことになる。



「シリル様は古代魔法がお嫌いですか?」

「嫌いなわけはない。これでも魔導師の端くれだからね」


 魔導師の端くれというよりセンターですけどもね?

 大本流ですよね?


「それでもね……古代魔法には光と闇がある。もっと言えば、その闇が深淵すぎる」

「つまり、ミリアリア・セイヤーズが闇の時空間を開いた魔法は古代魔法だと」


 私のその言葉を聞いてシリル様はフフフと笑った。


「君もあの場にいたから隠し果せるとは思っていない。その通りだ。水の魔導師が闇の時空間に干渉など出来ない。それは属性的に不可能なことなのだよ? でも彼女は辿り着いた。辿り着いたは辿り着いたけれども、結局古代魔法でも属性越えはタブー領域であることは変わりない」


 現代魔法でも古代魔法でも属性を超えることはタブー領域。

 でも――


「現代魔法はタブー領域に贖える手段がない中で、古代魔法は手段があると」

「ロレッタ」

「何でしょうか?」

「ある時代に灰色魔導師が大量に増えた時代があったんだよ」


 抹消された王国史の一部だろうか?


「…………人は人の領域を超えてでもやりたいことがある。それをすることが出来るならどんな方法を用いてでもやる。ミリアリア・セイヤーズがそれだ。助けたい人がいる。でも自分の属性では助けられない。それは神に与えられた領域ではないからね。だから魔法展開は神の目が閉じられた領域で行う訳だけど、目が開かれた時、それは罪を犯したことになるだろ? 領域侵害だ。神に与えられた制限のある領域を超えた。何が起こるかというと領域侵犯の代償は祝福のロスト。魔導師が魔導師でなくなることを意味する。生まれ持ってのものだから、その喪失感とは恐ろしいものなのだよ」

「…………」

「君にも分かるだろ? 灰色魔導師がなんなのか? 増産してはいけないものだということを。王家はそれを止める義務がある。なぜなら止められる力がある。国に統制を引きルールを変える力が。力があるならやるべきだと思わないかい?」


 つまり領域侵犯を続ける魔導師をなくす為に、古代魔法を封印したと。

 王家が主導してそうしたと。


 子供が病気になった。

 聖女の派遣が間に合わない。

 自分は魔導師で、でも属性が違い光の魔術は打てない。

 ならば――

 領域侵犯を行うということだろうか?



 それはそうだ。

 助ける力があるのなら助けるだろう。

 例え魔力を失っても。

 子供の命を天秤にかければ、命の方が大切だ。

 命は失ったらもう戻ってこないのだから。

 唯一で無二のものなのだから。

 もう会えないのだから。

 魔力はなくなっても、魔導師ではなくなるだけだ。

 天秤にもかけられない。

 だから大量に灰色魔導師が誕生する結果に繋がった。



 王家が禁止したものを、掘り起こしてしまった自戒の念を込めて。

 雷を落としたのかな?

 そうなのかな?



 私は雷の魔導師であるシリル様の皮膚に刻まれたリヒテンベルク図形を思い出していた。体内を電流が走ったその痕を―― 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック】『紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。@COMIC 第1巻 ~聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません~』
2025年10月1日発売! 予約受付中!
描き下ろしマンガ付きシーモア限定版もあります!

TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。コミック1宣伝用表紙
第3巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第2巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第1巻 発売中!! TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。1宣伝用表紙
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ