【253話】いざ、くじ引き。
シリル様の手には2本の光の紐が持たれていた。
「シリル様、それがクジですか?」
「そう。どちらか一方を引いてね。目印が付いていれば僕、ついていなければルーシュだよ?」
「目印とはなんですか?」
「それはね」
「はい」
「僕の愛」
「?」
私は首を傾げる。
「シリル様、愛は見えません」
「渾身の告白がスルーされた」
「え?」
「いや。見えるんだよ? 具現化されているから」
「??」
愛の具現化?
それって、えっと。
「具現化された愛情がクジの先についているのですか?」
「そう」
「……ちょっと意味が理解出来ないのですが」
「大丈夫。深く理解しなくともクジは引ける」
そういう問題!?
「えっと………」
困ってシリル様を見れば、彼は爽やかな笑顔で返す。
王太子スマイル?
非の打ち所がないのですが……。
「取り合えず引いてごらん」
引いてごらんと言われましても?
愛ってなんですか?
光の紐の先に愛?
それって何?
愛って紐の先に付く?
お手頃?
お菓子とか花とかですかね?
そうは言ってもこのままでは話が進まない。
引く?
引いとく?
謎ですけども……。
クジを構えたままの王太子殿下を優に五分くらい待たせてから、ロレッタは怖ず怖ずと右側のクジを引いた。その先には愛情――ではなく、小さな黒猫のアクセサリー? が付いて来た。小指の爪くらいの大きさで、可愛らしいサイズ感。
私は手のひらにそれをのせる。耳飾りだろうか? 耳朶に挟むタイプの。
「……これは」
私がシリル様に聞くと、彼はニコリと微笑む。
「愛情」
「…………」
いつ買われたのでしょうか???
シリル様とはずっと行動を共にしていた。
買う隙とか合った?
「これは?」
どこから出てきた?
「影が探してくれた」
あー………。影が……護衛任務の影が………王太子殿下の私用を……。
えー………。
「あげるね。着けてみて。というか僕が着けてあげる」
そう言って、私の横髪を掬う。
右耳にシリル様の手が触れる。
温かくて滑らかで少し擽ったい。
私はその手の感触にほわほわと赤面する。
「とても似合うよ?」
シリル様が私の耳元で囁く。
………ー。
擽ったくて首を竦めた。
左耳はというと、もう1本の光の紐の先に合った。
「…………」
両方とも同じじゃないですか!?
クジの意味ないですよ、シリル様っ。
そんな私の心の突っ込みは届くことはなく、シリル様は左耳にも耳飾りを着ける為に髪に触れる。
シリル様の触り方ってどこか甘い。
柔らかいというか優しいというか大切そうにというか、それを全部合わせた感じ。
そんな風に私とシリル様が耳を触ったり、髪を触られてりしていると、机の方から視線を感じた。あ、ルーシュ様。ルーシュ様がじーっと見ていらっしゃる。
「シリル、クジは不正だからな。ロレッタは今晩は俺のベッドに入るからな」
ルーシュ様が言い放つ。
不正。
確かに不正。
両方とも同じようにアクセサリーが付いていたのだから。








