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【252話】光の袋とくじ引き。





入り口部分に麻袋でも吊しておけば?


 非常に理に適ってはいるのですが……納得はしかねる。ということで私は僅かな抵抗ということで、光の糸で網を縫っていた。これで麻袋?? という可愛さとオシャレさに欠けたアイテムを光の袋というアイテムに変換できる。麻袋だって頑丈で悪くはない。素晴らしいアイテムだと思う。ジャガ芋やなんかを入れるのには最適ではないか? そうは思うが、今は芋はない。流石に生野菜は用意していない。干した野菜とか干した果物とか干した肉とかだ。これにも麻袋は合うかもしれない。通気性がよいし。――つまり麻袋はもちろん活用するのだが。即席で作った光の網に麻袋も入れるという二重体制で行こうと思う。そうすればストラップに引っかける部分。つまり外側に見える部分が麻紐ではなく光の糸になり、雪玉草のポーチと互換性がよくなる。しかし……入り口付近に光の網が何個もぶら下がっている状態はやはりエレガントとは程遠いもの。よいアイディアが浮かぶまでの暫定と考えた方がよいだろう。まさか良いアイディアがずっと浮かばずに、ずっとこの暫定状態が常用状態になるなんて恐怖でしかないのだから。クロマルだって出入りしにくいはずだし。ついでに全部つるすとなると重量が……。体積ではなくストラップに吊す重量アウトの方が圧倒的に早くくる。重い物は涙を呑んで底に保管しよう。大変出しにくいが……。出すというか、つまり光の糸を一個一個の荷物に全部つけておいて、手繰り寄せて使うのだ。五十メートルも手繰り寄せるなんて、綱引き王者になってしまいそうだが……致し方ない。とにかく速く手繰り寄せる技術を早急に習得しなければ。


 纏めると、軽い物は手の届く範囲。重い物は光の糸を伸ばして五十メートル(暫定)手繰り寄せて使う。その為には網が必要なので編むと。


 ここ二、三日、ずっと光の糸にお世話になっているというか……。光の糸、意外に便利? メーターで売り出す? でも魔導師しか扱えないし、切ることが出来ないし………。いや、魔導師だけでも需要はあるかな? 魔法省とか定期購入してくれそうな予感? アレ? でも私って魔法省の準官吏だから、官吏の作ったものを買うなんて事はないかな? 時間給で買われるだけかも?


 となると、どこで売ろう? F級ポーションの横にひっそりと実験的に置いてみようか? 兎にも角にも一つずつ。一つずつこなしていこう。私はそう納得し、手を動かして作業を続ける。 


 しかし……。

 マジックバックというのは底と入り口はまだしも、空中の体積というのはどうやって使いこなすのだろう? 落ちるし、棚がないし、届かないという、安定のあの字もない空間だ。何に使う? 底よりも入り口よりも圧倒的に大きい体積だ。使わない手はないと思うのだが……。クロマルはどうしているのかな? 飛んでいるなんてことはなと思うのだが……。スライムだし跳ねているのだろうか? 跳ねると五十メートルくらい飛べる? 飛べない? スライムのイメージ的に、そこまで高くは跳ねない気がする。


 ずっとバックの中を覗いていたら分かりそうだが……。ずっと覗いているのが許される程、時間にゆとりはない。二十四時間バックの中を覗いて、クロマルが跳ねるのを待つなんて、考えるだけで気が遠くなる。遠くなるが出来ない? というジャンルのものでもない。迷う。暇になったらやってみようか? 忍耐力がいりそうですが……。



「ロレッタ?」


 なんですか? シリル様。

 シリル様は光の網作りを手伝ってくれていて、ルーシュ様は机で書きものをしていた。


「クジを作ったから引いてくれる?」

「え? クジですか?」

「そうクジ」

「何のクジでしょうか?」

「今日の夜、どこで寝るかのクジ」

「??」

「弟三であるミシェルもエース家の従者もいない。宿には僕ら三人になる。今日はこの部屋でロレッタも寝る」

「?」

「ベッドは二つだから、どっちのベッドで寝るかのくじ引き」


 どゆこと?


「ロレッタは侯爵令嬢で、男と同じ部屋で夜を過ごすことは許されない。なので、エース侯爵家の侍女として寝ずの番をするという名目で、この部屋で過ごしてもらう。けど、それは名目だから実際には寝る。なのでどっちのベッドを使うか決めておこうと思って」


「……ソファーで休めば良いのではないでしょうか?」

「ソファーは座るもの。寝るものではない」


 えー………。

 そこは融通? 融通を効かせるところでは?


「人は三人。ベッドは二つ。身分は上から王太子殿下、エース侯爵家令息。私は三番目です。その上、召使いですからね。ソファーが駄目なら床で」

「却下。床は床だし。寝る場所じゃない」


 じゃ、どうすれば?


「椅子をくっつける?」

「……ロレッタ巫山戯てる?」

「大真面目ですけども」

「君は今日、僕と寝るかルーシュと寝るか二つに一つ。他の選択肢はないんだよ?」


 選択肢少なっ。

 そんなに少ない状況では全然ないですけども。

 どうしてそこまで言うのかな?

 シリル様は何を考えているのかな?


 私は彼を見ながら熟考する。


 そもそも私達三人は一部屋に集まる必要はあるのだろうか?

 今まで通り、私は私の部屋で寝れば全ては丸く収まる。

 でも――

 一カ所に固まって寝る必要がある?

 何故?


「分かりました。私はこの部屋で夜を過ごします。エース家の侍女として御主人様を守ります。寝ません。だからベッドはいりません」

「ロレッタは昨日、聖魔法のお守りを作って寝ていない。僕らにはバレている。なので今晩は是が非でも寝て貰う」


 私の徹夜防止の為の処置だろうか?

 放っておいたら、また何か作り出して寝ないから? 見張る? というような意味?


「シリル様、安心して下さい。今晩はぐっすり寝る予定です。だって決戦前夜ですから? 前々夜かな? どちらにしても寝ておかないと困りますから」

「確かに明日シトリー領に入る……」

「はい。懐かしいです。六年ぶりです。弟に早く会いたいです」

「……会いたいね。君の弟」

「地味可愛い子です」

「……地味に可愛いよね」

「はい。シリル様は地味の可愛さを分かりますか」

「分かるよ。君の弟はいつでも地味系だ」

「?」

「そしていつも何故か弟がいる。そこが不思議といえば不思議なのだが」

「?」

「今期は水の魔導師なんだね」

「今期? というか前期や来期は分かりませんが、水の魔導師ですね」

「光は入ってない?」

「今のところは入っていません」

「……光が入らないのか……」

「はい」

「それ、本当に? 水専門?」

「………髪の目も水の配色をしていると思いましたが」

「実際も?」

「………」


 シリル様に言われて私は過去を反芻する。

 私のそして家族の思い込みということを言っているのですよね?

 配色が水。髪はブルーブロンドだし瞳も――だから水の魔導師だと思い込んでいないか? と。


 父であるシトリー伯爵は氷の魔導師。水の魔導師の一族であるセイヤーズ本家の人間だ。もちろん水というか氷の専門。母は光の魔導師。この組み合わせって光が強く出るのだったか……? 私は光と水で弟は水。どちらかというと氷を嘱望されていたのではないか? という空気を感じたことはあるが……。父と母にではなく親戚に。


 弟に魔法を教えたのは父と母。どちらかというと母がメインだったように思う……。光の聖魔法を出しているのは見た事がない。


「水なのだと思います」

「確実?」

「いえ、六年前のことですし」

「以後のことは分からないと」

「はい」

「そう。初代国王妃である大聖女の弟が光の侯爵家初代当主なのは知っているよね?」

「はい。あまり建国期には詳しく出て来ませんが、そういう事実だけは書いてありました」


 そう。光の侯爵家初代当主だけは特例。そもそも賢者の兄弟が侯爵家を名乗ることは許されていない。なぜなら七人の賢者その人に与えられた称号であり爵位になるから。他の賢者の兄弟は家など興していない。興したとしてもそれは伯爵以下。国を七つに割ったその一つを継承する大侯爵家に非ず。なぜ光の侯爵家だけが特例なのかといえば、それは賢者の一人、大聖女が侯爵家を与えられていないから。その分な訳だ。


「弟といえど、さすがに魔導師でなければ侯爵位は与えられない。つまり光の魔導師だった訳だ」

「……そうなのですね」


 大聖女様の弟ですから。光の魔導師である可能性は高い。


「……水ね」

「はい、私の弟の話ですから」

「……うん」

「弟は水魔導師です」 

「水」

「水です」

「………」


 シリル様は何かうんうん言いながら考え込んでる。


 いや、普通に水の魔導師が出る家系ですよ?

 そんな不思議なことでは???


 シリル様の手には2本の光の紐が持たれていた。

 アレがクジでしょうか?

 どちらかに何か目印がついているのですかね?

 どうなのでしょうか?






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― 新着の感想 ―
[一言] えーセクハラパワハラですよ…ルーシュ様が言い出したのも冗談でもセクハラだし王太子まで!同衾はつきあって同意してのちにすること!
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