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【245話】街の薬草店3





 別名第二聖女店……て。




「ルルルルルーシュ様、ルーシュ様」



 シリル様や店主を放って、店内を見回していたルーシュ様に助けを求めるように縋る。



「何か、何か理解不能な言葉が綴られているんです。あちらの方で………」

「まあな……放って置けば良いだろ」

「放っておけばといいましても、自分事といいますが、何度も何度も第二聖女とか連呼されるといいますか、むしろ話の中心は私の偶像といいますか、放ってなんておけませんよ? 不吉言語が何度も出ているのですよ? 第二聖女の専門店とか売っているものの八割は第二聖女のグッズだとか。今、聞こえない振りをして放っておいたら大変なことになりますよね?」

「第二聖女は一般人に非ずだ」

「はぁっ!? そうなんですか」

「そうだとも。聖女はこの国のシンボルというか、支えというか、神の使いというか、奇跡の御技を有するもの。治癒の女神だ。専門店くらいあるのではないか? ちなみに王族の専門店ももちろんあるぞ」


 あるんだ……。

 そういうの。

 あったんだ。

 王族もあるから聖女もあるだろみたいに言われても。


「エース侯爵家の専門店はあるのですか?」

「あるわけないだろ? ロレッタ、大丈夫か?」

「…………」


 ないんじゃないですか!?

 エース侯爵家だって七賢者筆頭の系譜。あったっておかしくないじゃないですか!


「誰が買うんだ、そんなもの」

「私が買います」

「え」

「え?」


 コ、コホン。

 私は空咳をして自分を落ち着かせた。

 だってあったら欲しいじゃないですか?

 ルーシュ様の姿絵っ。

 欲しいです。

 待ったなしです。


「それをいうなら私の姿絵だって誰が買うんですか」

「いやー。マニア? はどこにでもいるんじゃないか?」

「………」

「蓼食う虫も好き好きというし」

「………」

「つまり……好き好きだ」


 ルーシュ様。蓼って毒草ですよ?

 毒草ですら好む虫もいるという。

 微妙に慰めになっていませんよっ。


「………ルーシュ様はご贔屓にしている聖女はいるのですか?」

「………えー……それはいるだろ」

「いらっしゃる!?」


 贔屓の聖女がいらっしゃる。


「誰ですか?」

「それは考えなくても分かる」

「……全然分かりません」

「………えー……」


 考えると分かるんですか!?


 今期の聖女で考えれば、第三聖女と第四聖女は王子なので抜かす? と考えて。


「年上ですか?」


 年上なら、元第一聖女様か、もっと前の聖女様になる。つまり前王の時代の聖女様。


「どっちだと思う?」


 ルーシュ様が少し笑いながら聞いてくる。


「……どっちと言われましても。ルーシュ様の好みを知らないので。どんな女性が好みなのですか?」

「……えー……。聖女の話がどうして好みの女性の話になる?」

「だってですね。ヒントがないと」

「ヒントが欲しいのか」

「はい」

「……ヒント……」

「そうですヒント」

「ヒントは…………歳はそんなに離れてないな」

「え?」


 歳が近い。

 今期の聖女はみんなルーシュ様と割合近い。


「一息に言っちゃって下さい!」

「一息に言ったらつまらないだろ」

「そんなことはありません。私、気になって今晩眠れません」

「へー」

「へーじゃありませんよ。今晩寝なかったら三徹になってしまいます」

「それはそれは」

「三徹はノーですよ?」

「そうだな。俺もロレッタにはぐっすり寝て欲しいな」

「そうですよね」

「そうだな」


 そう言って、ルーシュ様は私の頭をなでなでと撫でる。


「じゃあ、今日は俺のベッドで寝る?」

「え!?」

「寝られないなら寝かしつけてやる」

「!?」

「俺のベッドに入るなら、教えてやってもいいな」

「@※4#%#」


 私の頭はバグった。

 ついでに言葉もバグった。

 更には鼻の奥になにか生暖かいものがたらーっと。

 何かがたらーっと。

 自分の鼻に手を当ててそれが血だと分かった時は、ひーっと青くなり、目の前が真っ白になる。



 天井がぐにゃんと揺れて、世界が反転してブラックアウト。



 遠くから私を呼ぶシリル様の声だけが耳の奥に響いた。





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― 新着の感想 ―
[良い点] こういうお話、大好きです! ……というかロレッタさん、やっぱりルーシュとシリルとで反応が全く違いますね? たとえシリルに同じことを言われても、こういう反応にはならなかった気がします。きょと…
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