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【244話】街の薬草店2





 そこで一端言葉を切った店主は、私を正面から見た。




 私は店主から強い視線を感じる。

 どうしよう?

 しおらしくカミングアウトするのが正解?

 それとも素っ恍けるのが正解?

 暫し迷ったが、ルーシュ様が素っ恍けた以上、私もそれに習うべきだと思い至る。


 私は店主に向かってにっこり微笑む。



「教会のハンドベルイベントがお好きなのですね?」

「…………はい。三年前に初めて行きましたが、それからは雪の月に必ず行くようにしています。そして聖女グッズを購入するのが一年の最後の楽しみと言えば楽しみです」


 ………聖女……グッズ………?

 何でしょうか? それ?


「………聖女グッズですか?」

「そうです。聖女様の専門店でです」


 ???

 ………聖女の……専門……店……。

 聞き間違い?

 聖女に専門店てある?

 私聖女だよ?

 知らないよ?


「店主はあの店の常連か?」


 シリル様が何か当然のように話題に答える。


 なに?

 どゆこと?

 シリル様は当たり前のように知っている?


「第二聖女のファンの上に、あの店に出入りしているとは見所(みどころ)がある」


 うんうん頷いています。


「こぢんまりした品の良いお店ですから。あそこのグッズはお値段は若干張りますが、とても精巧で忠実に出来ていますから。あの姿絵もそのお店で買いましたが、クオリティーが違います。私がこの目で見た第二聖女様の神々しさにそっくりでしたから」

「素晴らしい慧眼だ」

「ええ。聖女様に関しましては自信がございます。なんせ毎年前列で見させて頂いておりますので」

「おお。昼から並んでいるのか」

「前日から並んでおりますよ」

「おお。前日!?」

「ええ。なんせあれは別名治癒と回復のハンドベルですから。あんな素晴らしいイベントを逃す手などありません」

「話が分かる店主だな」

「ええ。聖女様は神がこの世に使わせてくれた使徒のようなもので。尊い御身なのです」

「その通りだ。店主」


 そこでシリル様は店主の手を取りがっちりと握手をした。


 えぇ!? 

 王太子殿下!?

 市井の者と両手でがっちり握手とか?

 しかも身分バレバレの状況で。


「第二聖女の素晴らしさを語り出したら、一晩では足りぬ。店主の気持ちは良く分かるぞ」

「ええ、ええ。確かに一晩では足りません。三年前まで娘は咳が酷くて眠れぬ夜を過ごしておりました。まだ小さな子が、苦しさに眠れぬ姿というのは……見ていて辛いものがございました。それを、あのハンドベルの音色が――」

「そうだな、あのハンドベルの音が大聖堂に響くと、まるで冷たい空気に溶け出すように、聖なる光が空から舞い降りるのだな。店主のいうことは良く分かる。なぜなら生で聴いたことがある」

「なんと!?」

「あそこにいらっしゃったのですか」

「そうとも、六年前から欠かさず見ている」

「六年前からですか」

「そう、六年前、第二聖女が王立学園中等部一年の雪の月から毎年欠かさずだ」

「なんと羨ましい」

「ただし、最後部で見ているのだがな」

「ああ、なんと残念な」

「そうなんだ。さすがに庶民を押しのけて最前列で見るのは気が引けてな」

「……なんとお優しい」

「年に一度の教会最大の庶民向けイベントだからな。清浄なる光は全て庶民の元へ」

「おお。ご自身が我慢されてまで、前列を庶民に譲るとは。なんと慎み深いのでしょう」

「これも高貴なるものの当然の義務」

「……そうでしたか。頭が下がります」



 店主は先程からなんとを何回連呼したのだろうか?

 大分沢山言っているよ?

 そしてシリル様の素性は最早完全にバレたという。


「あの聖女専門店のオーナーとは懇意でな。良く利用している御用達なのだ」

「そうだったのですか」

「ああ。発売されたものはいくつか持っている」

「そうなのですね」

「実はあそこのグッズが偏っているのには気付いているか?」

「もちろんですとも。あそこは聖女の専門店。別名第二聖女店ですから」

「………知っていたか」

「はい。皆様ご存じです。なぜなら第二聖女様のグッズ八割、聖女様全体が二割ですからね。他の聖女様のピンのグッズはございませんから」

「ふふ。其方も通よの」

「ええ。あなた様もなかなかの聖女マニアかと」

「ふふ」

「ふふ」



 なんでしょう。

 お二人とも目を細めてふふふふふふふふ笑い合っています。

 お顔はどちらともニヤニヤーとしています。



 しかし――

 別名第二聖女店……て。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 強火同担の語り!ロレッタさん、もう御神体扱いですな
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