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【022】『専用ゲストルーム(狭め)』


 我が国の王太子は何故あんな感じになってしまったんだろう? 性格が悪いとまでは言わないが、真っ直ぐではないのは確かだ。まあ、真っ直ぐで王太子が出来るかと言われれば出来ないだろうとは思うが。


 ルーシュは王太子と別れて、エース家のタウンハウスに帰宅していた。王太子は魔道具の眼鏡でも婚約破棄証でもなく、閲覧用の論文を貸してくれて、茶葉の発酵時間が短い茶と共に土産に包んでくれた。大丈夫、閲覧用は急ぎ弟達に作成させるからとか言っていたぞ。第三王子と第四王子はあの王太子の手足となって働かされる未来が見えるな。


 婚約破棄証か。有耶無耶にされそうな雰囲気があったが、王太子が動いてくれていた。シトリー伯爵の印を貰えば、教会が受諾するだろう。時間の問題で正式な破棄が成立する。というわけで、エース家での雇用も自動的に成立する。


 王家にとって、第二聖女を手放す事はデメリットにしかならないと思うが、あれだけ公の場で婚約破棄を宣言したわけだから、今更撤回という訳にもいかない。ただ、王太子も言っていたが、ならば第四王子が婚約すれば済む話だ。行く行くはそうするつもりかもしれないが。第四王子は今期十四歳。結婚の儀は卒業を待ってとなると留年しているから卒業まで四年。その時、第二聖女は適齢期やや過ぎ。ギリギリだが無難なまとめ方ではある。どちらにしてもこの『真実の愛』事件の熱りが冷めてからになるが。


 ルーシュは卓上の呼び鈴を鳴らして、従僕にロレッタを呼んでくるように言いつける。程なくして現れた彼女は、少し微笑んで落ち着いた様子で挨拶をする。伯爵家の子女にしては、なんとも腰が低いというか偉ぶったところがない。一見男爵令嬢に見えないこともない。これがココ・ミドルトンに侮られた理由の一端だろうか?


「部屋は貰ったか?」

「はい、ベッドはふかふかでとても寝心地が良く、机や小さなクローゼットもあり、素敵なお部屋を頂きました」

「そうか。給金等の説明は大丈夫か?」

「はい、離れを取り仕切る副執事の方に教えて頂きました。今のところ最高の職場です」

「………良かったな」

「あの……。働き次第で終身雇用制があると伺ったのですが……」

「エース家に終身雇用されたいのか?」

「はい! 私、第二王子殿下に婚約破棄された身ですので、もう働き口も婚姻先もないと思うんです。ですから安定した素敵な職場があればと思います。でも良いんでしょうか? 確かに募集要項には侍女となっていましたが、メイドの仕事はしなくて良いのでしょうか?」

「……一応、自身が貴族の子女であり、魔導師である事実を忘れないように」

「?」


 ロレッタはきょとんとしていた。いや、そうだろう。魔導師がメイドとはどういう発想だろうか? 侍女でもどうだろうと薄ら思うが。そこはもうどうしようもない。


「離れの一部屋に特定の人間のゲストルームを作る。部屋は狭くても良いが、本棚や机を実用的に配置して欲しい。メイドを一人使って良いから、品良く整えて置くように」

「大切な方なのですか?」

「全然大切ではないが、君に紹介することになると思う。そして寝室には水差しを置いておくように」

「……あの? 水差しの欠かせないタイプの方でしたら、永久水差しにするのはどうでしょうか?」

「それは魔道具だろう? そんな良いものにしなくていい」

「いえいえ、高級なものではなく、私の手作りと言いますか」

「……手作り?」

「はい。聖女科の実習でですね、薬草畑を作っていたのですが、これが水やりが大変で……」

「それで?」

「何か楽な方法は無いかと、あの手この手を考えたのですが……。永久に水が出てくる如雨露があれば、誰でも使えるのでどうだろうと考えまして」

「まさかとは思うが……」

「はい、作ってみました! なかなかの出来でしたので、水差しに応用してみようかと思いまして」

「………」


 ルーシュが紅茶を飲んでいれば、きっと聖女の顔に吹きかけたに違いない。それくらい驚いている。聖女科ヤバいな? 留年者が出るのは必然だ。


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― 新着の感想 ―
これ、もしかして第二聖女がストレートで卒業できないように段々ハードル高くしていった結果では??? だから双子が留年したのでは?
[気になる点] 聖女科ヤバいっていうか、これ事前情報通り第二聖女が図抜けてるだけ…いや図抜けすぎだろ… まさかここまでとは
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