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第二十七話 敵対派閥




 動画ね……。

 シリルは首を横に振って否定したが大変な怪しさじゃないか?

 なんといってもやたら具体的だった。

 聞かなかったことにして流すか……。


 ルーシュは自分の横を歩くシリルを見る。

 なにか――

 身分もアクランド王国の王、王妃に次ぐ最高位で、容姿も恵まれ、魔法の才も恵まれた至高の存在のはずなのだが……。

 どうもこうも、何かとても残念な感じの生き物に育ってしまった。

 こういうのをなんと言うのだろう……。

 残念な天才王子?

 いや、残念とはいっても、対外的には非の打ち所がないのだが……。



「ところでルーシュ」

「なんだ、あからさまに話題を変えて」

「いや……、あの弟三の姉。貴族の妾志望のスラム街出身のたかりの専門家がいただろ」

「……ああ、あの貴族の妾になることが至上の命題のたかりの専門家ね」

「敵対する派閥を狙うとか言っていたよね」


 ルーシュは足を止めてシリルを見る。


「…………何が言いたい」


 何が言いたいか?

 そんなものはもちろん分かっている。

 まさか念を押すつもりじゃないだろうな?

 それは冒涜だと分かっているのか?


「睨むなよ?」

「挑発したのはお前だろ」

「だってあのたかり専門女子が僕ばかり見るから。ルーシュだっていたのに。腹いせのようなものをしたくもなるだろ?」

「それを世間様では八つ当たりというんだ」

「ロレッタの財布を盗んで、更に弟の食事まで取り上げて、どこをどうしたら僕の妾になれると思うんだ? 頭はどうなっているんだよ?」

「ああいう種類の人間は一定数いるだろ? この前、相対したココ・ミドルトン。正式にはココか。あれもああいう種類の女だ。そして第一聖女もな」

「結構遭遇率高くないか?」

「一割くらいなんだろうが、存在感が濃いというか、目立つのだろう」

「百人いればそのうちの十人か……。多いな」

「……少なくはないし、目にもつくな」

「なんで僕の方に目を付けた? ルーシュの方が偉そうだし、実際魔法省の階級は認めたくはないが上。階級章も襟に付いている。身分の上の者の妾を目指すなら絶対ルーシュだ」

「彼女に取っては、身分が高ければ同じに見えるのだろう。侯爵でも伯爵でもよいのではないか? それにお前の方が柔和に見える」

「へー。柔和ね? まあ、普段から非の打ち所のない王太子を装っているからね」


 確かに装っているし、自覚はあるのだろう。というか立場上装って貰わねば困る。


「ところでセイヤーズ家とライバル派閥に当たるエース家の次期当主のルーシュ君」


 …………長々々々々と呼んだな。

 

「君を侮辱するつもりなんてない。ルーシュとは幼少期からの長ーい付き合いだからね。そんな事は言わずと知れたこと。心配もしていない。そもそも六侯爵家は実際に派閥では動かないし、見せかけの派閥しかない。必要な時は装って使う程度のものだ。そうでなければとっくに王国は内部腐敗して倒れているのではないか? 王家を含む七賢者の家系。賢者会議の決議は王家を含む四票が必要になる訳だ」

「……そうだな」

「この票の割れ方で派閥の強固性が露見する訳だが」

「……炎の賢者と水の賢者。敵対派閥と見せかけて大切なところで票を割らない。実はまったく敵対していない訳だ」

「票の内訳は王家しか知らぬこと。そして票には魔法刻印がなされている」

「そうだ王家しか知らない。知らないが建国からずっと記載し続けている。もちろん一定以上の魔力持ちしか読むことが出来ない上に、厳重に保管されている。保管庫には結界を張ってある。その上、王、王妃、王太子、の鍵が揃わなければ開かない」

「ほう。そういうことは気軽に口外するな。俺と三人の影に漏れた」

「大丈夫。鍵は他にもある。そんな程度では揺るがない」

「で」

「でだ。そういう本質を知らない輩はどこにでも存在する。僕と血を分けた弟がいたよね?」

「……いたな。半分だけだったが……」

「ああいうのが紛れている訳だ。どこにでもね」

「エース家を見張れと」

「まあ、周知徹底程度には」


 それこそ、そんな輩が幅を利かせていれば、侯爵家はとっくの昔に滅んでいる。

 内側からの奸計には細心の注意を払っている。

 曰く、今は助け合いの時代ですから。

 曰く、広い視野を持ちましょう。

 曰く、国境を外しましょう。我らは同じ人なのだ。

 まあ、口当たりのよい言葉でやってくる。その方が効果が高いから。

 ひとの良心と親切に訴えるのが手口だ。


「気分が悪いな」

「……確かに悪いね。王家は膿が二つも出たから少しはさっぱりしたかな……」

「百人に十人。千人に百人。一万人に千人か………」

「そうだよ」

「多いな」

「多いよね」



 シリルはルーシュを見てニコリと笑う。

 目が笑ってないって。


「千人が口裏を合わせた嘘を吹く。無知で無垢な輩が騙される。そうして千人が一万人に膨れ上がる」

「……きつ」

「割とね」


 二人は目が合ってフフフと笑う。

 だから目が笑ってないって。






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― 新着の感想 ―
[一言] そうそう、ロレッタさんや第5さんのような無防備な優しい聖女をエゴモンスター共から守って下さいツートップ!
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