表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

194/434

第十五話 ハニーハンター。






 アクランド王国王太子殿下と六大侯爵令息が揃ってフリーズしています。

ルーシュ様が彫刻のように動かなくなってしまったのは、久し振りだなと思う。

 私の履歴書を見て以来でしょうか?

 あの時は、聖女の履歴書を見て固まってしまったのでした。

 懐かしいな……。

 ついこの間の事ですけども……。



 私が昔を懐かしんでいると、ルーシュ様より先に復帰したシリル様が、ギギギと音がしそうなぎこちない動きで首を回し口を開く。


「ハニー……」

「ハンターです」

「ハニー」

「ハンターですよ?」

「ハニー………」

「……………」



 シリル様がゼンマイ仕掛けのお人形みたいになってしまった……。

 ハニーハンターです! シリル様!!



「………その、つまり、以前に言っていた蜂蜜の話だよね? アレ、冗談だよね?」

「冗談じゃありません! 本気も本気でした」

「…………」

「…………シトリー領を『花と蜂蜜の里』計画の一歩を歩む記念すべき日ですね!」



 ポーション革命に続いて二度目の記念日だ。

 大切な日なので覚えておこうと思う。



「……お前、ロレッタから聞いていたのか?」


 フリーズから立ち直ったルーシュ様がシリル様に問う。


「………一応、淡い夢の一つとして聞いたような……」

「何故止めなかった」

「いや、止めるまでもない、何か空想の出来事だと思っていたものだから」

「………空想って……。全然空想じゃなかったじゃないか。何かスリの子供を商会の下働きとして迎えようとか言い出したぞ」

「…………ほんとに」

「ロレッタが何処か夢見がちで、突飛なのは職安に駆け込んだ事からも分かっていたよな?」

「…………」

「あまり実感してなかっただろう?」

「……いや、もちろん実感していたつもりだったのだが、伝え聞いたものだったから、現実より甘く見ていた感は否めないが……。ここまでとは……」

「聖女なのに職安に駆け込むような子だぞ。意外に行動力があるんだ」

「……ね。吃驚だね……」

「俺なんか、履歴書を見せられた時、職業安定所の『こんにちは仕事』のコーナーで跪かれたんだぞ。伯爵令嬢であり聖女に。正直ドン引きだった」

「……それは確かに……」

「あの時も、フリーズしたな」

「それはするね」

「しかも何故か両手を差し出された」

「なんで両手?」

「左手に履歴書を持って、右手はたぶん手を取って欲しいという意味の右手だったと思う」

「……どちらの手を取ったんだ。もちろん右手だろうな?」

「いや、左手だ」

「………ルーシュ。それは女心の分かっていない行為だ」

「いや、それを言うなら女心ではなく、就活心だ」

「………しかし、礼儀として右手だろう」

「お前は、女の子に跪かれて右手を取った事があるのか」

「……ないな。その位置関係は男女逆だ」

「そうだろ」

「そうだな」




 何故、ルーシュ様とシリル様は職安のお話になっているのでしょうか?

 ハニーハントのお話ですよ?

 戻って来て下さい!

 私の心の声は届かず、メンズトークに花が咲いています。



「……しかし、その男女の立ち位置が逆だったとしても、その状況は羨ましいものがある」

「本気か、シリル。羨ましいとか、病気だぞ」

「いや、羨ましい。僕は絶対に右手を取って、『心配ないよ。君を永久に雇用する』と言ってあげたい」

「ロレッタを終身雇用するのか?」

「する。迷わずに。むしろ迷う意味が分からない。第二聖女だぞ? ちなみに能力的には第一聖女。この十年でもっとも聖魔力が強いと判断された事になる。そんな被雇用者を手放す人間なんかいるのか?」

「いや、跪かれた時点では、まだ聖女とは知らなかった」

「そんな訳ないだろ。髪色と瞳の色を見れば一発じゃないか?」

「いや、俺はお前のような聖女ファンじゃなかったんだ。分からないだろ?」

「ふ、紅の魔術師ともあろう人間が、状況判断が甘すぎではないか?」

「なんだと? 職業安定所に行ったこともない人間がどの口で言う。聖女が職安にいると思うか? 聖女は聖女だ。それ自体が希な存在なんだ。仕事に困窮しているなんて思わないだろ?」

「……確かにミスマッチではあるが……」

「ミスマッチというレベルではなかった」

「しかし、聖女とハニーハントというのも大変なミスマッチではないだろうか?」

「聖女とスラム街の子供という所までは、ミスマッチではなかったがな」

「……そこまでは聖女っぽかった。その後に、『蜂の巣を盗み、トンズラ』辺りから、聖女っぽさが完全に抜けた」

「聖女っぽさどころか、伯爵令嬢というか侯爵令嬢としてかけ離れた存在になったな……」





 ルーシュ様とシリル様がうんうんと頷き合っている。

 ん? 私、ディスられてる??? 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミック】『紅の魔術師に全てを注ぎます。好き。@COMIC 第1巻 ~聖女の力を軽く見積もられ婚約破棄されました。後悔しても知りません~』
2025年10月1日発売! 予約受付中!
描き下ろしマンガ付きシーモア限定版もあります!

TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。コミック1宣伝用表紙
第3巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第2巻 発売中!!
TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。2宣伝用表紙
第1巻 発売中!! TOブックスオンラインストアは画像をクリックまたはこちらから
紅好き。1宣伝用表紙
― 新着の感想 ―
[良い点] disではない…事実確認デスヨきっと… [一言] 書籍も楽しみにお待ちしまーす
[良い点] 王太子殿下と侯爵令息を振り回す、ロレッタある意味魔性の女(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ