第八話 三枚特別限版。
「ロレッタは裏の絵が気に入ったの?」
シリル様にそう聞かれて、ロレッタは頷く。
そもそも表の絵は自分の絵なので……気に入ったか? と聞かれてもはいそうですとはなかなかならないだろうと思う。
この枚数が限定の魔力判定時のブロマイド。
ロレッタはグラデーションになった夕日を凝視する。
赤、橙、黄色と細かく、でも混ざり合っている訳ではなく、虹のような層になる形で描いてあるのだ。
ほんの少し前、シリル様は絵の具にも拘ったと言っていた。
絵の具と言うのは、色を出す有機物と油を混ぜて色を作るものなのだが……。
この夕日に使われた鉱物は魔石ではないだろうか?
微量魔力を感じてならない。
魔石を砕いて絵の具にした?
でもどうして?
力のある石を粉にしてしまうなんて………。
しかし、先程から角度を変えて何度も見ているが、魔法陣のようなものが浮かび上がらない。魔石が使われていると仮定した場合、魔法陣がどこにもないなんてことは考えにくい。どこかに描かれていると思うのだか………。
魔力を通せば直ぐにでも分かるのだが、それは出来ない。
この絵に込められた魔法が発動してしまう。
何かの条件下で発動する一回切の魔法に見えるのだ。
これは魔法陣クイズの続きではないだろうか?
結局報告書も濡れてしわしわになってしまったが………。
しかし、報告書はしわしわでも特に問題はないはず。
読みにくいくらい?
馬車の中にレイニングが発動したお陰で、報告書を書く人間は有耶無耶になっている。 ルーシュ様とロレッタが1ポイントずつで、リフレッシュの魔法陣はどちらも完成しなかったという結果。まだクイズの途中。
ルーシュ様の問題がまだ出されていない。公平を期する為にも、取り敢えずは全員一回ずつ出題者にならなければいけない。
ルーシュ様をチラリと見ると、やはりロレッタと同じで魔力等級検査の絵の裏側をじっと見ている。
怪しいですよね?
どう見ても仕込んでありますよね?
しかも一見全然分からないくらいの高等なやつが……。
シリル様からお題が二問出た事になると、全部で六問解かないと公正ではないので、実質あと三問。ロレッタが一問でルーシュ様が二問。
これはシリル様の最後の出題になるのかな?
ロレッタは少し焦りながら、ルーシュ様を確認する。
うぅ。先に解かれてしまう。
報告者を書くのはやぶさかではないのだが、魔法クイズで負けるのは、何か少し複雑というか。ロレッタの取り柄は魔法くらいなので、そこは頑張りたいというか。
そうこうしているうちにルーシュ様が夕日に透かして見だしたのだ。
「ほう」
と言いながら、会得した表情。
あ、アレ、分かったやつだ。
分かってそれが見事で感心しているやつ。
くーっ。
完敗だ。
ルーシュ様が2ポイントでロレッタが1ポイントになる。
完敗した以上、ロレッタも痩せ我慢せずに夕日に透かした。
「――!」
文字と魔法陣が浮かび上がる。
古代文字だ。
古の魔法陣。
現代語のように直ぐには読むことが出来ない。
一文字一文字辿るように読む。
『赤い空の下、魔力の宿りし大地で、いつかの集う場所』
これはきっと繋がりの魔法陣なのではないだろうか?
ロレッタはそんな風に理解した。








