第五話 黒歴史の発掘
前出の三章①五十八話「古代魔法の魔方陣」は少し書き換えました!
繋がりは二稿の方からです。つまりはシリルの魔方陣について。
実は、肌身離さずここにも一枚――
シリル様はじっくり溜めを作った後、上着の内ポケットから一枚のカードを取り出す。そしてロレッタに見せる訳でも、ルーシュ様に見せる訳でもなく、自分でそのカードを瞬きもせず凝視して、ニコーっと。ニコニコニコと顔から笑みが零れまくって、地面にタライが必要ですかという程笑い続けている。
いつのブロマイドですか!?
やっぱり聖女等級認定式ですか?
見せて下さい。
ロレッタがシリル様にお願いしようと立ち上がりかけた時、ブロマイドはシリル様の手からルーシュ様の手に移った。
「おぉー。これは………」
ルーシュ様までもが見入っている。
「可愛い頃だな……」
「そうだろう。僕の時代の切り抜き技術は高精度だからね。可愛い頃は全部逃さず絵にして保存してあるんだよ? ちなみに最新のものはエース家のお仕着せを着ているものだ」
「ああ、この前お前がじっくり見ていた時の」
「そうだ。心と目の奥に焼き付けてキャンバスに再現し、それを絵師に渡して量産しているのだ」
「え? オリジナルはお前が描いてるの?」
「当たり前だろう。その為に僕が何年絵を本気で習ったと思っているのだ。素描、クロッキー、デッサン、全て固有の対象を再現する為だけに努力したんだ。モチーフは一つだけ。ついでに粉に混ぜる油の種類まで研究したよ?」
「……リアルな絵も得意だったのか?」
「写生も写意も得意だ」
「じゃあ、なんで魔法陣はあんな感じの自由画というか、想像画というか、デフォルメなんだ」
「それはロレッタが好きそうだったから……」
「確かに好きそうだったな。大切に鞄に入れていた」
「僕としては服のポケットにしまって欲しかったが………」
「濡れたけどな」
「濡れてしまったが……」
そういえばと思い、ロレッタは鞄からシリル様の魔法陣を出して確認する。
魔法で水分分離はしたが、だからといって元通りという訳にはいかない。濡れたものが乾いたという状態だ。
案の上、長靴を履いたクロマルがしわしわに……。
クロマル………。
うぅ…………。
皺を伸ばして伸ばして、アイロンが欲しいと思った。
しかし紙なので最新の注意を払わないと燃える。
そこでふと、聖女の姿絵ではなく、可愛い使い魔コレクション画みたいなものが見たいと思った。
この公爵領の本屋に行ってみようか? 魔獣の本はあるだろうか? お給金はまだまだある。
本も買いたいな? でも本は高いからな? 取り合えず値段を見てから考えよう。
ロレッタはお財布の重さを確認して嬉しくなる。こんなにお金を持ったのは人生で初めてです。
ところで――
そろそろ見せて下さいね?








