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第五十八話 古代魔法の魔法陣




二人が仕上げたリフレッシュの古代魔法陣を受け取ったのだが……。



「…………」



 ???

 シリル様という人は、天は二物を与えず処か、三物も四物も五物も与えている人物なのではないかと、神のお気に入りなのではないかと……。そう疑いたくなる人物なのだが………。



 サブカル??????



 本当は市井の人気絵本作家にでもなりたいのではないだろうか?

 そんな疑いを持ちたくなる魔法陣。



「………魔法陣」



 この勝負貰ったとまで言い切っていたのに………。

 泉と虹が………。

 見たまま………では全くなく、何か猛者補正がしてある。

 可愛いポップアートが成されている。

 具体的に言うと……虹に傘を持った猫? クロマル? とかが長靴を履いて、ランランとしながら音符とか飛ばしている。



 これは………。

 受け取ったロレッタの手がカタカタカタカタと震えた。



「ロレッタ?」



 震える手元が気になったのか、ルーシュ様が覗き込む。



「……シリルの絵を見たのは初めてか?」



 ええ。

 初めてです。



 こんな所までクロマル………。

 可愛い。

思わず笑顔がほころぶ系。



 ぶっちゃけ魔法陣としてはいかがなもの?

 万人が万人そう思うのではないかと思う。

  

どうしよう。

 別方向に振り切っている。

 しかし、魔法たるもの見掛けではない。

 この魔法陣が正解か不正解かというのは、リフレッシュが起動するか起動しないかが大きな所だ。



 よし。

 ここは、誰も欲していないというか。

 さっき掛けたばかりで、リフレッシュを必要としている人は人っ子一人いないが、起動させてみよう。シリル様の描いた魔法陣は、ロレッタが起動させた魔法陣と似ている部分は少ないというか、類似部分は虹と泉くらいだけど……。遣るだけは遣ってみないと何が起こるか分からない。



 紙を見ながら、魔力を込めると、そのまま読み込み、クロマルとか長靴とか傘に光が透過しつつスルーして通り過ぎる。…………普通に可愛いデス。

 魔法陣としては不発というか、素通りというか、無害というか、つまり魔法としては認識されずに終わった。クロマルだし……猫は……聖魔法との相性どうだろう? 反応難しそう。読み込んだ時点でエラーが出てしまう。動物だし。更には長靴というなんとも猫とミスマッチなアイテムが不具合を起こすのではないだろうか? スライムなら行けた可能性はあったが……。



 ロレッタはシリル様の描いてくれて魔法陣を見ながら、しみじみと嘆息した。

 王太子殿下というお立場で、才能があらぬ方向に飛び火している。庶民であったなら流行戯曲のプログラムデザインでもしていたのではないだろうか?



「……シリル様は、幼少期から絵を習っておいでに?」

「もちろん。音楽に乗馬、剣に絵。芸術系も一通りやるのが王太子の責務。むろん相性の良いものが長く続くのだが……」

「何と相性が良かったんですか?」

「乗馬、剣、笛、鍵盤楽器、詩、王族は弓矢は習わないのだが、それというのも弓は弓兵が持つもので、遠距離武器だから、古来より王者は持たぬもの。けれど自分は雷の魔導師なので弓を雷弓として使う為、結構長く習った。絵は家庭教師の技術を全て受け取り、自分なりに応用し、個性を確立する所まで行けた気がする」

「………」


 存外本気。

 個性を確立って。

 つまり自分の絵を持つ所まで行ったと。

 そういう意味で合ってる?

 だから写生的ではないのかな? と納得した。

 脳内補正が入る絵の方が性に合ったのかも知れない。


 シリル様の絵はこのままクロマルコレクションとして大切に保管するとして、ルーシュ様の魔法陣にも魔法を通してみよう。



 しかし――



これは東方の水墨画ですか?

 というような出来で………。


 こちらはこちらで別の意味で惚れ惚れする程の画力……。

 虹が正確に七色、濃淡まで描き分けられている……。

 図案化という書き込みではなく、もはや風景画……。

 魔力が通りそうな雰囲気がする。


泉に虹が架かっていて、水面に映り込みすらしている。

 ロレッタが起動したものとは、明らかに違う、何かもう自分の想像で描きましたというタイプの魔法陣だ。



 どうなんだろう?

 取り合えず――起動。



 起動した瞬間、背中に嫌な汗を掻いた。

 これリフレッシュじゃない。

 聖魔法ですらない。

 見上げた瞬間、馬車の中には何もなかった。

 そんな筈はない、一定量の魔力を持って行かれた感覚がある。



 そう思いキョロキョロしていると、桶をひっくり返したような雨が局所的というか馬車の中だけ降った。



「っ!?」

「ぶっぼっ!?」

「きゃっ!?」




 溺れる!!!!

 馬車の中が、水中に。

 窒息する。


 

 そして馬車が止まった。



 水の魔法だ。

 これ先程掛けたリフレッシュが台無しになるほどの、局所的雨の魔法。

 レイニングでは? もっと高等になるとアシッドレインとかという酸の雨に変わる。



 せめて馬車の外に降って欲しかった。

 ロレッタはもちろんシリル様もルーシュ様も溺れかけながら馬車の外に転がり落ちる。

 タライをひっくり返したくらいの水量が地面に零れた。




 起動しない魔法陣のほうが千倍良かった………。

 


 王太子殿下と、

 次期魔法省長官と

 聖女がうっかり溺れた。



 古代魔法。

 融通が効き過ぎない?




 全員びっしょりです。

 ついでに明日の着替えも。






シリルはなんでもこなすタイプなのですが、どんな絵を描くのか思考中からの改稿2。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ア”ーーーッ! うん、にんげんだもの…欠点はある方がかわいいデス。 ここはいっちょ異世界あるあるの風魔法で乾かす! 間違っても焼いたり電撃してはいけない。
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