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第五十六話 詠唱よ永遠に。






『風よ、強靱な刃となれ、ウィンドエッジ』





 現代魔法は詠唱という工程を短縮傾向にある。そもそも戦いの最中に詠唱をする事が推奨されない。時間が掛かるというのがまず大きいし、相手に放つ魔法がバレるというのも適切ではないからという判断からだ。



 現代魔法の使い手は詠唱をしない方、しない方に歩んで来た。

 もちろんイメージしやすいように、詠唱を入れる魔法士は多分にいる。が、文言の系統が違う。

 もっと魔導式中心の詠唱と言うか。


 ロレッタ自身は、発動の初速の為、詠唱はしない現代っ子なのだが……。




 しかし――だからと言って、無言で放つというのも些かロマンが足りないというべきではないだろうか? 


『詠唱』


 それは魔法士を魔法士たらしめている重要なファクターなのではないだろうか? 何故ならば、無駄に格好いい。格好いいは正義だ。どうだろう? 聖魔法というのは別に戦いの最中に使うとも限らないし、魔法詠唱復活の狼煙を上げてみるのは………。




 ロレッタはふうと一呼吸付いてみる。

 ウインドエッジみたいに……良い感じの文言で、みんな知っているものと言えば……。




 少し考えてから、虹とか光の泉とかそういったものを想像してみる。

 そして、そのイメージで魔法陣を構築していくのだ。




『聖なる光、その清浄なる光にて我らの穢れを祓いたまえ、リフレッシュ』



 リフレッシュの詠唱をそれっぽく言ってみた。

 どうだろう?

 虹色の魔法陣が………



 どこ???



 ロレッタはキョロキョロ辺りを見回すと、窓の外に馬車と馬と従者とを全て包み込むようにして、魔法陣が起動していた。



 ああ、なんか想像より大きなリフレッシュがこの辺、半径五メートルくらいに掛かり始めた。馬車と馬と従者と――という中範囲が虹色の光りに包まれ、ルーシュ様とシリル様が呆然としていた。



「………今のリフレッシュは……えっと、ロレッタ?」



 いや、えっと、あの………。

 ロレッタは顔面から火を吹きそうになった。

 いや、なんか、詠唱をしてみたら、魔法が自然に空気に溶け込んで範囲指定外……に飛び出したというか、えっと?




「……今、起動スイッチ古代魔法じゃなかった?」




 シリル様もロレッタに負けず劣らずキョロキョロして、リフレッシュの掛かった馬などを見ている。




「ねえ、ルーシュ、今の魔法陣見た? なんか図が入ってたよね? 噴水と虹みたいな………。なんか入ってたよ? 現代魔法じゃなかったよ? ルーシュもちゃんと見てただろ?」



 シリル様は隣に座るルーシュ様をしきりに揺らしている。



「現代魔法はさ、何というか遊びがないんだよ? 遊びっていうのは勿論遊び心というものではなくて、魔法の余暇みたいなもの。魔法陣でいうと余白の事だよ。僕は少し古代魔法を研究して囓っている。だから一般人より詳しいんだ。学校で教えられているものは徹頭徹尾現代魔法。でもさ、魔法がそんなに狭い物であるはずがないんだ。だって人が使うものだよ? もっと人によって違ったりして、個性のようなそういうものがある世界なんだよ」



 シリル様はルーシュ様に一生懸命訴えかけている。

 ロレッタはロレッタで言葉を失うほど驚いていた。



 今のはなんじゃ?

 なんなんじゃ?





 なんなんじゃ?

 なんなんじゃと思いながらも、今の感覚を忘れないように、ロレッタは何度も何度も状況を反芻した。



「二問目は私が出題者で! 今のリフレッシュの魔法陣を紙に出来るだけ正確に再現すること」

「え!」

「な!?」



 ロレッタはごそごそと胸のポケットから紙を出して二人に渡す。

 もちろん自分でも描くつもりだ。

 そうでなければ、手にした技能が腕からスルリと抜けてなくなってしまいそうだから。




「これは……僕が貰った。今、じっくり見ていたからね……」



 シリル様はそんな自信に満ちた言葉を口にしながらも、何故かペンを持つ手がカタカタカタカタと震えていた。



 ルーシュ様はというと、ペンと紙を持ったまま呆然としている。

 顔には「嘘だろ」みたいな言葉が張り付いている。



 

 いや……。

 ここはひとつ。

 この魔法が定着するように、二人に骨を折って貰うしかない。

 ロレッタはそんな風に覚悟を決めた。










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― 新着の感想 ―
[良い点] ロレッタサン、カジュアルに凄魔法展開しすぎ…
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