第五十三話 君が君を評価しないのならば、僕が誰よりも君を高く評価する。その布石のようなもの。
『全身を黒い血に感染しながら、ポーション開発という難事を乗り切った君が可哀想だ。僕は絶対に譲らない。君が譲っても決して譲らない。困難を乗り越えた者への高い評価は重要だ。それを評価するのは上に立つ者の役目。言うなれば王太子の役目。だから譲れない』
王太子の役目って………。
王太子………。
ここで王太子という身分が登場……?
ここ――
ロレッタはシリル様の隣で沈黙しているルーシュ様に視線を向ける。
何も喋らない。
でも、ルーシュ様も商会の人間。
ルーシュ様の意見も貴重だ。
「あの、ルーシュ様はどんな名前が希望ですか?」
「希望はない。呼びやすく、好感を持てる名前が良いというくらいの意見はある。しかし、ロレッタとシリルの意見を比べると、明らかにロレッタの方に弱さを感じる。お前は『恥ずかしい。照れる』というのがシリルの意見を却下する理由だろ? それでは通らない。このままなら軍配はシリルに上がるな」
「………」
ルーシュ様がシリル様の味方に!?
結構シビアな青年です。
『聖女ロレッタ』って。
それだけは……というような名前なのですが……。
「ではNo2とかどうですか? それなら隠語というか直接的ではなくなりますし、陛下の御代の一期第二聖女という名なら、どうにかこうにか私の名も残りますし………これが良いのでは? 直接表現より間接的でなかなかだと思うのですが」
シリル様は首を捻って考える仕草。
もう一押しか!?
「………それに、死後なら兎も角、私は現存してますからね。ロレッタと名付けてしまったら、この人が開発したと分かってしまいますから、誘拐とかあったりとかなかったりとかしませんか? 国内国外、ロレッタですよ。ポーション開発者ですよ? 目立ちますよ?」
「…………」
シリル様が静かに黙り込む。
「ロレッタ? 君は聖女界では第二聖女のお姉様とか第二聖女とか呼ばれている。名前はあまり知られていない。No2の方がむしろ危ない。聖女を取って『ロレッタ』にしよう。それならば、聖女のロレッタとは思われない。決まりだ。商品名『ロレッタ』確定」
「…………」
確定??
ちょっと待て!
確定は待って!!
「人類に感染症の夜明けを築いた、聖女ロレッタ。アリス商会が販売するポーション第一号にぴったりの名だ」
「……シリル様、二号はシリル、三号はルーシュ、四号はカティス、五号はメレディスにしますよ?」
「それは無い。僕らは聖魔導師じゃないから。ただし、弟達が真実一から自分の力で開発したポーションが出来たなら、もちろん却下する謂われはない」
ロレッタは頭の中で、きっと二号は痛み止めの『フレデリカ』になるのではないかと思った。あんな大怪我を越えて立ち上がったフレデリカが開発したポーションならば、彼女の名前を絶対に付けたい。
それは彼女の信念のようなポーションになるはずだから。
公爵様から頂いた礼金はフレデリカのポーション開発に使おう。
痛み止めは、原理としては麻痺させる事になるから、内実毒になる。
取り扱いが難しいし、リーズナブルにしてしまうと別の使い方をされる恐れがある。販売は数を限定して、飲むところまで聖女が見守った方が良い。条件付きの販売にしよう。
ロレッタの中で、一号ポーションはさておき、二号ポーションの名は、本人に確認を取る事も無く、ほぼほぼ確定した。
一周回ってシリル様と同族?????
いつもお読み頂いてありがとうございます!
ココココココココロナになりました。
熱が下がり次第、更新いたしますが、一先ずはこの話を最後に
お休み致します。誤字脱字&感想への返信は復帰後致します。
いつも教えてくれて&感想を書いてくれてありがとう!
ロレッタのポーションが欲しいですね!








