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第四十六話 光の見える場所。






 ロレッタは領地に行く準備をあれもこれもと慌ただしく整えていた。ポーションを作ったりポーションを作ったりポーションを作ったり。忙しさの九割方はポーション作り。そしてその作り方と使い方を双子王子に叩き込むという………。


 言葉は悪いが文字通り叩き込んだ。神官長が残してくれたメモでポーション自体は完成に漕ぎ着ける事が出来たのだが、メモには薬草の産地や干し方など詳細に書かれており、その通りに作ったら成功した。聖女科所有の薬草は、聖女科の薬草畑で採れたものも多いし、干し方も全てカラカラ月日に拘り無しなのだが、白い小さな花を付けるラン科の一種類は、根ごと使うとか、半乾燥で使うとか。色々雑多な注意書きがあった。薬草って繊細なんですね? 取り寄せるのに時間が掛かったらどうしようと思ったが、王都の薬屋に売っていた。もう買おうよ? と内心で思った事は秘密だ。


 まあ、この根が毒な訳なのだが、毒は少々なら薬だ。使い方による。

 強く細胞に衝撃を与える薬だ。飲んだ張本人としては、なんとなく理解できる。



 そしてそこから使用するという段階で、もう一つハードルがある訳だ。つまり患者が飲んだ後に聖魔法を展開しなければならない。これが既に聖魔法式が完成しているので、解くだけなのだが数がエグい。そしてスピードも必要。この数と速さのハードルを二人の王子に越えて貰わねば困るのだ。



 しかし――失敗する事、失敗すること。失敗すると失敗した分だけポーションが無駄になるので、後半はポーション無しで練習した。つまりぶっちゃけ想像以上に成功しないという……。


 これは単純に演算能力なので練習あるのみなのだが、とてもじゃないが短時間では無理という事になり、ならばどうすれば? と考えに考えた末、魔法式をその場で紡ぐんじゃなくて、式はもう魔法陣に落とし込んで、この魔法陣の起動スイッチだけ押せばいいんじゃね? という事になり、この起動スイッチになる魔法陣を描き始めたのだが、同じ魔法陣を描き続ける事は少々心に拷問レベルの負荷が掛かり、魔法陣に十掛けの魔法陣を掛ければいいんじゃね? いや百、千……となり、やっと成功した頃には、右手が震えていたという………。使い過ぎ。



 その後、第五聖女の元へ行き、執行見本を見せて、明日からは第三王子が担当でという所まで漕ぎ着けるのが辛かった。しかしこれ感染症には絶大な効果で一回でも打てば二次感染症だけは治る。問題は感染症を押さえた後の復元だけど、壊れたものを復元させるのは不可能なので、壊れていない細胞の方を爆発増殖させる必要がある。


 これが聖魔法の力で、本来ある細胞から細胞の複製作業を倍以上の速度で増やす事なのだが………。ロレッタの場合は血だったから少し事情が違う。血は厳密に言うと部位によって違う血という事はない。足を流れる血も手を流れる血も一緒だ。そもそも全身を巡っているものだし。


 聖魔法式の微調整をしたいところなのだが……。ロレッタの場合は怪我ではなく百パーセント感染症。その上、感染直後だったという条件下であり……。しかし感染の重度としてはロレッタの方が上だった訳だが……。



 ……理論としては汚染された血を捨てた訳ではなく、汚染要因になっている部分を最小単位で書き換えたという感じだ。これが何故可能だったかというと、それはその直前まで時が止まっていたからだ。感染直後に止まったのは大きかったな……。



 感染症が治った事により、目の怪我は治る筈だ。しかし治癒速度は意図的に上げなかった。上げれば治るが、元の機能通りに治るという訳にはいかない。怪我が治るだけだ。目は大変小さな臓器だが、その精密度では群を抜いている。角膜と水晶体の復元は……と考えると……これが難しい。



 一端怪我を治してから復元させる? というのは逆に難易度が上がるかも知れないとの思いからの処置だが。骨折で言えば、くっ付いた骨をもう一度折るなんて、そんな事は推奨できないけれど、関節や大きな部位とは少し事情が異なるだろうか?



 取り合えず直してから第二段階に進むか?

 もしくは高度治癒魔法を掛ける時に一緒に復元させるか?

 後者が理想だが、理論構築すら出来ていない。

 時間がもっと必要という話。 



 『蛍』というポーションは感染症のポーションなのだ。今まで、人類が敵うことが出来なかった最小単位の敵。これによって命がどれだけ奪われたか………。




 それは人類にとって夜明けのポーションなのだが……。復元ではない。

 ここが次の難題だ。聖女に終わりはないのだな……としみじみ思う。




 そうは言っても……。

 今、この瞬間に感染症で亡くなっている人がいる。

 成功した以上、遣るべき事は実用化。

 エース領から戻ってくるまでに、販路などの諸々の箇所をクリアーして販売まで漕ぎ着けないと。



 なんせ……。

 シリル様に任せて置いては、プロマイドのように不良在庫の山だ。

 


 良い商品なら売れるという単純な問題では無い。

 どうやって売り出すか……?

 王都ではなく、聖女が不足しやすい地方から行く?

 その場合はシトリー領では人が少な過ぎる気がするし、やっぱりエース領?

 でもそれだとシリル様的に、納得がいかないかも知れない。


 やっぱりここは……一番貧しいシトリー領の建て直しとポーションの売り出しを平行させる?

 思考がどんどん迷走して行くのが自分でもわかり始めた頃、ポーションは単独では売れないんだった? 聖魔法のケアが必要なんだったという……一番最初の問題に立ち返るのだった。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖女業務ブラック過ぎて心配です!234倒れる前にシリル樣ルーシュ様に改善を期待。
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