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第二十三話 闇魔導師の血統継承。






 ロレッタと共に現れたアリスターとクロマルを混ぜて、塔でのお茶会続行。この塔は階下は全て図書室となっている。つまり図書塔な訳だ。螺旋階段を利用して、壁面が本で埋め作られている。別段ルーシュのプライベートスペースという訳ではないが、ルーシュがいる事が多い場所だ。


 クロマルはアリスターの膝の上で美味しそうに焼き菓子を食べている。こうして見ると結構表情があるなと思う。その上よく食べる。そう言えば孤児院に行った時、焼き菓子が欲しくて空間魔法を使ったのだったな。つまりは食べる事が大好きなスライムという事になる。やはり体内で溶かすのが好きという事がデフォルトで良いんだな。


 ルーシュはあの不思議な生命をじっくり観察していた。あれが分裂して分裂して豆サイズになってロレッタに同行していたと。正直いつの間に? という感じなのだが。そもそもあの日、俺はロレッタに同行していなかった。自分が公式に出席しなければいけない立場だったからなのだが……。


 それにしても、クロマルはなんの為に同行していた? 結果的には助かったとしか言えない状況だったが。あの時クロマルがいなければ、今頃ロレッタはいなかった事になる。それくらいの速さであの劣化は進んでいた。


 体内の時を操る行為。それは当然禁術だ。禁止されている行為。

 ――でも逆説的に考えれば、何故禁止しているのか? それは出来るからだと考えられる。

 

 この大きな世界の物質質量全てを逆行させる魔術は存在しない。もしも理論構築出来たとしても一秒未満で執行者は魔力切れで死ぬのではないかと思う。


 ただし、小さな細胞だけを限定して、というので有れば可能という事なのだろうか?

 聖女は遅延と促進を細胞に施せる。回復執行というものは、そういう部分がいくらか有るからだ。

 傷の回復を促進させる、もしくは病を遅延させる。――しかし、戻すのだけは不可能だ。よくよく考えるに、聖女のこの部分の技術と時空の魔術師の力が結びつくと、若返りという逆行が可能なのではないか? 時の魔術は止めるか、緩めるか、早めるかの三択が常道。戻すのだけが奇道(きどう)。つまりは戻すのは、時空の魔導師でも出来るか出来ないかは危うい所であり、ここが倫理上は禁術の領域だ。


 その上、あの反動はなんだ?

 あんなの逆行させる意味がなくなる程の可逆だ。しない方が良いくらいの結果に終わる。

 そういう意味でも禁術なのだろうが……。


 ――まあ、攻撃としては180度逆の結論に至るが……。

 逆行させれば可逆で死ぬという事だからな……。有用に早変わりだ。


 最後、カルヴァドス二期の第九聖女の体は腐り落ちていた。若返りに付随する可逆がマストであるならば、自分の体に打ち込むなんて正気の沙汰じゃない。

 

 敵の体に打つならこんな効果的な物はないが……。

 ロレッタには最速で抗体を量産化して欲しい所。



 野良魔導師は金の為ならばなんでもやると言うことか? いや、第九聖女がそんなに金払いが良かったとも思えない……。懐は神官長な訳だし。勿論一般人より大変裕福ではあるが、無限に金銭が入る金蔓の持ち主ではない。


 野良の魔導師も子供を捨てるくらいの状況だから、裕福で幸せという暮らし向きでは無いのだろうな………もしくは全く関係なく、ただただ冷徹な心の持ち主。



 もしも瞬間的に時を操れる魔術師だった場合、敵に回すと戦い方が厄介。細胞への干渉と時への干渉、切り取られた空間で一秒以内でも時が止まったり逆行しては大変な驚異。細胞の逆行は口径摂取もしくは傷口からの感染になるか……。戦いの最中、掠り傷を作らない状況なんてあるのだろうが? それは戦闘とは言い難い。魔導師は後衛でも前衛の剣士が傷付いては意味が無い。

 

 つまりロレッタの光シールドが闇を一番弾きやすい。ロレッタは今までどちらかと言うと、病を治したり、ポーション作りに特化していたみたいだが、これを機に光魔法の戦い方。戦術のようなものを憶えるべきなのではないだろうか? それを誰に教われば良いかというと、教会や歴代聖女ではなく光の侯爵家だ。あれは聖魔導師とは言っても戦える聖魔法だからな。


 光の弓だとか天空の槍だとか。闇と戦えるのは今も昔も光の聖魔法。水魔法を学びたいというロレッタの気持ちを無下にはしたくないが……。闇魔法士と相対する前に、どうしても光の戦術のせめて初歩だけでも……形にして置きたい。光魔法の魔法教師を探してみるか? 魔力は強くなくて良いのだ。ただ教え方が上手くて知識として理解している人間。欲を言えば結界に強い者が良い。



 もぐもぐもくお茶菓子を食べているアリスターとクロマルを見る。アリスターは自分が食べてクロマルに食べさせてと交互に手を運んでいる。気持ち良いくらいの食べっぷりだな?


「美味しいか?」


 アリスターはコクリと頷く。


「………とても美味しいです。甘くて口元に持っていくとバターの香りがいっぱいに広がって、口に入れると、外はカリカリしているのに、中は水分を残してしっとししているのです。僕はエース家の厨房で将来働きたいです。どうか修行させて頂く事は出来ませんか?」

「え?」


 今、この闇魔導師は将来料理人になりたいと言ったのか?


 ロレッタに視線を移すと、まるで母親のような瞳でアリスターを見守っている。頑張れ! という声援まで聞こえて来そうだ。



 なんなの? 君達?? 俺を困らせたい???







暫く11時投稿になります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 焼き菓子魔導師、超平和じゃないですか? 風邪や貧血が治ったり花粉症軽減したりギックリ治ったりするの作ってほしいですね! アルジサマ、今回発声は6文字ww
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