第十五話 特別な君へ。
視点がロレッタからシリルへ移ります!
ロレッタの髪は透き通るような水色をしている。そして光が当たると虹色に反射する。これは聖魔導師特有の色だと思う。六大侯爵家というのはそれぞれに家を象徴する色を持っている。
炎の侯爵家は紅。闇の侯爵家は紫色。王家は金と白な訳だが、これは雷の魔導師の金色と聖魔導師の白を連想させる色になる。
では光の侯爵家の象徴色は何色か? というとそれは虹色。もしくは光色。光は無色なように見えて、七色の色を含んでいる訳だ。赤から紫までの七色。どれが出るかは厳密には分からない。
ロレッタの髪の色が、こういう光が水滴を通った時のようなプリズムを表すのは、彼女が水の魔導師でもあり、そして光の侯爵一族から生まれた訳ではなく、水の侯爵一族であるセイヤーズ家から出た事が多くを由来しているのではないかと思う。
「綺麗だね?」
「……ソレハドウモアリガトウゴザイマス」
「何で片言?」
「………ソレハデスネ。トッキュウポーションノイリョクニアテラレテイルノデスヨ??」
「……へー。そういう事になるの?」
「ナリマスネ」
マリオネットみたいで可愛い。
彼女の水色でいて虹色に反射する髪が可愛い。
時々上目使いで僕の方を見てくる仕草が可愛い。
高いポーションを飲んでしまって、どうしてよいか分からず固まってしまった所も可愛い。
シトリー領を蜂でいっぱいにしたいと奇案を出した時のワクワクした瞳も可愛い。
ロレッタの髪がしっとりと僕の指に絡みつく。絡みつきながらサラサラと零れて行く。
ずっと撫でていたいけれど。
それでも――
「ロレッタ」
「……何でしょうか?」
「次官長から話があったのだけど」
「伯父様からですか?」
「そう。ルーシュと僕は魔法省官吏としてシトリー領に出向くらしい」
「へ?」
「裁きの庭でさ、闇の魔導師の特殊血統継承がロストしている事が分かったよね?」
特殊血統継承とはつまり、セイヤーズ侯爵家でいう氷の魔術師。王家で言う雷の魔術師。そして闇の魔導師の中に時々生まれてくる特殊な魔導師。時の魔術師だ。
消失の届け出が出ていたか出ていないかは分からないが、闇の侯爵家はこの特殊な本筋の血をロストしていた。追えていなかった。失っていた。時の魔術師はどこか本流から逸れて野に出ていた。
この特殊な血筋は、各侯爵家が管轄する義務を要する。つまり本家から出さないのが基本。セイヤーズ侯爵家は届け出をして分家させているが、シトリー伯爵家というのは、セイヤーズの管轄というか、一応形式上別の爵位になってはいるが、ぶっちゃけ一部扱いだ。そもそもが元々セイヤーズ侯爵家の土地な訳だし。
実際、ロレッタは王家に嫁がなかったが、それを機に本家の養女になっている。ロレッタの弟もタイミングを合わせながら本流に戻す可能性が高い。仮にシトリー伯爵位を継ぐにしても、セイヤーズ侯爵家が見張っている筈。
闇の侯爵家はいつロストしたのだろう。家系図とは別に特殊血統継承の系譜も残してある筈だ。思ってもいなかったところから漏れてしまった可能性もあるが……。
「僕とルーシュがシトリー領でロスト対象の探索に当たるらしい」
「えー………?」
ロレッタは首を捻る。
「王太子殿下とエース家の次期当主が自ら野良魔導師の探索? どこの領にいるかも分からないのに………?」
「そうそう」
「ちょっと捜査員の人選に疑問を感じるのですが……」
「疑問を感じる時はね、だいたい含みがある時なんだよ?」
「……含み?」
「そう含み」
「僕らが三人で『孤児院寄付金強奪事件』の捜査に当たったよね」
「……ええ。私は付き添いの侍女の筈でしたが、何故か制服着用でしたよね」
「そうそう。また着用する機会が来たという事じゃないかな?」
「…………」
ロレッタは胡乱な目で僕を見上げる。
そういう顔も可愛いね?
「良かったね、ロレッタ。君の作戦『蜂の巣を巣ごと沢山掻っ攫え』が遂行可能だよ!」
「…………」
次は土曜日の投稿予定になります。
(八月は週五イメージで上げて行きます)
投稿時間は……不定時が少し続きそう。








