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第十三話 いつでもハグは安定スルー?





 ロレッタはシリル様の腕に抱かれながら、脳内高速展開を始める。シリル様の手の温もりとか伝わって来て、それが心地よくも有り思考が捗ること! 商会の案件に心が鷲掴みになってしまった状態。ロレッタの中で商会と蜂蜜と木箱がまるで線のように繋がってしまったのだ。


 この三つが繋がったものは、この世にない……かどうかは分からないが、少なくともアクランド王国にはない。もちろん北国に行けば万年氷や万年雪があるのだろうが、そこまで北に行く予定はないし。完全防寒で北の果てに旅をして、何年か掛かりで氷菓を食べるのではあまりにリスクが高い。というか最早只事ではない。


 王都で、可愛いデイドレスを着ながら、美味しいお茶と共に食べるから楽しいのだ。きっと素敵なカフェになる。テラスを付けてもよいし。シトリー産の花(勝手に咲いている野の花というか蜂用)をカフェ内にふんだんに飾り付けてもよし。その空間にいるだけで素敵な気分になるだろう。


 その上、紅茶にリフレッシュとか回復のポーションを一滴垂らしたらどうだろう? ポーションはロレッタが作れるし、リフレッシュが添加されたお茶なんて、とても気分がよくなるので、付加価値として他のカフェの三倍くらいのお値段で出せるのではないか?


 お金へ続く金色の道にしか見えない。これは遣るしかない。カフェの名前はどうしよう? 聖魔法が添加されている茶葉を使うならその辺も名前に入れた方が良いだろうか? 『聖アリスの庭』とか『アリスの聖氷菓』とかどれも可愛い気がする。


 ロレッタは、抱きしめてくれているシリルの手にゆっくりと自身の手を重ねた。


「シリル様、シトリー領を花と蜂でいっぱいの土地にするのはどうでしょうか? つきましては蜂の巣を巣ごと掻っ攫って来ないといけません。蜂は巣に近づくものを攻撃する習性がありますからね。私の聖力が回復したら蜂の巣探しに行き、片っ端から毒消しの魔法を掛けながら励みたいと思います」


「え?」

「ですからシトリー領を蜂でいっぱいにしてですね」

「シトリー領を蜂でいっぱい?」

「そうです。蜂と花と蜂蜜の里とかなんとか謳い文句を作って、蜂蜜と言えばシトリー産というくらいに、生産業の一つにしてはどうでしょうか? うちの領地、驚かないで下さいね? 借金がそれはもう沢山あって、傾いだ感じなのですよ? だから名産品があればと思うのですが、蜂も花も投資額が少なく始められるかな? と思いまして。なんせ蜂の巣を森から頂戴するのは只ですからね!」

「……頂戴……只……」

「そうです! 巣ごと掻っ攫うんですっ」

「………へー」

「それともやっぱり出資出来ない者は、商会幹部には成れないのでしょうか?」


 ロレッタは不安そうな顔でシリル様を見上げた。


「……いや、全然平気。ロレッタの分は僕が払っても良いし、セイヤーズ侯爵に立て替えて貰っても良いし、そもそもまだ私的プランニング状態で、立ち上げてもいない商会だし、冷凍木箱の卸値を担保にしても良いし、遣りようはいくらでもあるから安心して。三人で始めよう」

「嬉しいですシリル様」


 ロレッタはシリル様にギュッと抱きつく。

 そしたら彼も抱き返してくれた。


「……時にロレッタ」

「なんですかシリル様」

「ロレッタと僕がこういう風に抱き合うのは何回目か知っている」


 ロレッタは小さく首を捻った。


「クロマルに出会った時が一回。神の庭で一回。今が一回で計三回です」

「憶えていたんだ?」

「憶えていますよ? シリル様」

「その割には淡泊じゃない?」

「淡泊ですか??」

「そう。もう少しキャーとかヒャーとか顔を赤らめたりとか、そういのない?」

「………一度目は加速による事故。二度目は今際の際。三度目は落下阻止で合ってますよね?」

「……合ってるけども」

「………『きゃー』とか言った方が良かったでしょうか? ちょっと手遅れ感がありますが、今から……」

「え? 今から??」


 ロレッタは大きく息を吸い込んだ。


「ちょっと、待った!!」

「え?」

「いい。今からはいい。止めておく。何か嫌な予感がする」

「嫌な予感??」

「そう。何かイメージと全然違う何かが始まりそうな予感」

「………」

「止めておこうね、ロレッタ」

「…………」









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― 新着の感想 ―
[一言] 今、キャーって言われたら…たぶん…(笑)
[良い点] ピピー!教育的指導! とツッコむ人が居ませんねえ… 10代女子的にというか聖女的にと言うか伯爵令嬢的にというか、ロレッタさん、危機感持って〜
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