【011】『紅の魔導師3(熟考2)』
……しかしな……。
エース侯爵家嫡男であるルーシュは王宮の回廊を歩いていた。ここ数日でシトリー伯爵家の事情と今期の王立学園の卒業記念パーティーで何があったかは大体分かった。別に出席しても良かったのだが、特に主役でもない訳で、いてもいなくても同じだからと思い欠席していた。ちなみに王太子も国王も参加していない。せめてどちらかがその場に居たら結果は違っていただろうにと思う。当然その場で諫められるし、第二聖女がフリーになるなんて事にはならない。
第二王子が嫌だというのであれば、棚ぼた式に下るだけだ。第三王子の婚約者になる。第三王子の婚約者は今の所第五聖女な訳だが、第五聖女は第四王子の婚約者になりスライドしていく。その場合、第五王子がフリーになり、来期の第一聖女と婚約する可能性が高い。そもそも十年一括りで聖女の等級が決まるから、まだ学園に上がっていない第五王子は来期の聖女でも年齢的に問題はない。
少々問題が出てくるのは、王子ではなく聖女の方が年上になった場合だ。一桁ならばそうそう問題はないのだが、二桁は苦しくなる。それは子を産むのが聖女の為、あまり高齢になると難しいという理由だけなのだが。聖女は適齢期に入れば直ぐに嫁ぐのが好ましいとされている。
もしも第三王子と第五聖女が上手くいっているのであれば、第四王子が娶れば良いだけだ。第三王子と第四王子は今年十四歳の双子。顔も髪の色も同じ王妃陛下のお子様。王太子と同腹の兄弟だ。第二聖女との年齢差は三歳。なんの問題も無い。
確か第四王子の婚約者は決まっていなかったはず。少なくとも公にはしていない。普通に考えれば来期の聖女な訳だが、来期の聖女はまだ正式に発表されていない。
聖魔法が顕現している家はいくつかあるはずだが、まだ等級判定まではいかない。魔力量や属性検査、等級が確定するのは大分先の話。婚約者を確定するのは早計だろうし、聖女と言い切れるか危うい年齢だ。つまり幼い。
王家としては大変に悩ましい事なのだが、血統を考えれば聖女は王家直系に一番出やすい。当たり前だ。王妃が聖女なのだから。しかも正妃様のお子様に出るのが基本。そこもやはり血筋的なものだ。その上、聖女とはいうものの、聖魔法は男児にも出る。つまりは聖女の半分は自動的に王族の子女。
そして今期は第三王子と第四王子が聖魔法使いだ。まあ同じ遺伝子を持って生まれた双子だし、力も同等になる。同等なのは良いが揃って留年しなくとも……。王族が留年って……。大変残念な感じだが、聖女科はそれだけ厳しいのだろう。魔法科Sクラスも結構厳しいが……。王太子は留年しなかったぞ? あいつは要領が良いからな。雷の使い手だし。雷の顕現は聖魔法よりも珍しい。
そうこうしていると王宮のラウンジに着いた。ここで王太子と約束をしている。
俺が入れば、王太子宮に知らせが行くだろう。茶でも飲みながら待てば良いだけだ。








