表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/68

61


ピチチッピチュ、ピチチチチッ

可愛らしい小鳥の囀りが聴こえる。


「ん~っ、今日はよく眠れたわ」

体を起こし伸びをしようとしたのだが

『『『おっめでと~!!!』』』

「おめりぇとー!」

ドサドサッとベッドに飛び乗って、しがみついてくる者が……

「フフフッ、おはよう。ビビ、トット、ポポ、シロ、ありがとう!」

『おはよー!』

『ソフィア、顔色いいね』

『ほんとだぁ。元気そう!』

「すごくぐっすり眠れたの!溜まってた疲れもなくなった気がするわ!」

『良かったぁ~!効果発揮してるみたい!』

「んっ?効果?」

『ソフィア~。気付いてないのぅ?』

『僕たちからの誕生日プレゼント』

「シロもまりょくとぉーってしたのよ~」

シロも魔力込めた!?石かな?

手でパタパタと体を確認していたら、キラッ!っと、光るものが……

「あっ!指輪!!」

まだ小さくて、ほっそりしているソフィアの右手中指。ピアスと同じ、瞳と同じ色の石が付いた指輪がしっかりと嵌っていた。

「綺麗ね~!みんなありがとう!!とっても嬉しいわ!!」

『今回は石のパワーにみんなから魔力も込めてもらったから!』

「みんなから?」

『そっ!屋敷のみんなから!公爵領と梟の里も回って来たよ!』

「そっ、そんなに!?……元の石のパワーが強いから耐えられたのかしら?」

『そうだよ!創生の泉のパワーだからね』

「シロもえいえいしたのー」

「フフッ、シロ偉かったわねぇ。本当に嬉しいわ!ありがと!」

『あぁ、これ。梟の里の子供たちから』

どすんと重い音を立てて、ベッドサイドのテーブルに小包が置かれる。

「……、……ま、まずは身支度をするわ……みんなはソファで待っててくれる?」

『『『「は~い!」』』』



梟の里の子供たちからのプレゼントは貴重な

木の実や薬草、梟の里謹製の飛び道具などで、一緒に手紙が入っていた。

子供たちからは誕生日のお祝いと日頃、ソフィアが贈るプレゼントのお礼が丁寧な文字で綴られており、一生懸命書いてくれたのがわかって温かい気持ちになった。

頭領からの手紙もあり、こちらにも日頃の感謝などが書いてあったが……

飛び道具は子供たちが頑張って作った物だが、決して使わないようにと何度も書かれていて、つい笑ってしまった。


フフフッ。頭領に心配かけちゃったのね。

約束すると返事を書かなきゃね。

って……あっ、もしかして!!


「頭領!約束するわ!どうもありがとう。皆にもよろしくね」

天井を見上げて声を張れば、コンコンコンと返事があった。

やっぱり!心配で様子を見ていたのだろう。



食堂に入れば家族からお祝いを受け、お父様とお兄様にはしばらく抱き締められた。


お昼はさくらの皆も一緒に大広間で食事をする。勿論、使用人たちも一緒に。

シロはダンとララに会えるのをとても楽しみにしている。ララとお揃いのドレスを見せたら嬉しくて仕方がないようだ。

満開の桜のようなヒラヒラフワフワの愛らしいドレス。

「ソフィア~。ダンとララはなかよししてくりぇるぅ?」

「大丈夫よ。ダンもララもシロと同じでとってもいい子だもの」

「うふふっ」シロはソフィアにしがみついて、何度もソフィアの顔を覗き込んでいた。




テオ、ローラ夫妻。ソル、エマ、ダン、ララ家族が訪れたので、シリウスとソフィアは玄関ホールで出迎えた。

テオとソルはチャコールグレーで落ち着いた雰囲気ではあるが、桜モチーフの刺繍やボタンなどがあしらわれた正装姿。引き締まった身体にピッタリと馴染んでいる。

ローラとエマは光沢のある薄紫から上品な桃色へのグラデーションが裾から胸元に向かって広がる、大人可愛いデザインで、こちらもまた桜の刺繍が施されていて上品な雰囲気に纏まっている。髪は綺麗に結い上げられ、金細工の髪留めが輝いていた。

カチコチになりながら訪れた二人に

「さぁさぁ、仕上げよ!」と

ピンクサファイアのネックレスとイヤリングを着ける。

「まぁ、素敵!ローラもエマも良く似合うわぁー!!」

「そ、ソフィア様。これは一体……」

「ああ、そうね。ステラ、鏡をお願い」

玄関ホールの鏡を覗いて、確認した二人だったが「「ヒィーッ!」」と想像と違う反応を示した。

「あらっ、好みではなかったかしら……どうしましょう」

「ちっ、違います!!とても素敵でビックリしているのです!」

「そうです!こんな高価な品を身に着けるなんて……き、緊張してしまって」

「まぁ、本当?!良かったわ!気に入ってくれて!よく似合っているもの。さぁ、ララにはこれよ」

ララにはシロとお揃いの桜の花に配置したローズクォーツのペンダントをかけた。

「わぁー!ソフィアさま~!!キラキラよー!ありがとー!!」

「フフフッ。可愛いわ。家のシロとお揃いよ!」

恥ずかしくてソフィアのスカートにしがみつき、こっそり覗いてたシロの背中を押す。

「シロ。ご挨拶は?」

「シ、シロでしゅ。よろしくおねがいしましゅ」

さくらの皆は動いて話すぬいぐるみのクマに一斉に石化したように固まってしまった……シロは不安そうにソフィアの手を握ってきたが……

最初に正気に戻ったのはララだった。

「わぁぁ!かわいぃ~!ララでしゅ。おしょろいね~。ふたごみたい~」

とことことシロに近づくと戸惑うことなく手を握った。

ニコッと微笑むララを見て、シロも嬉しそうに微笑み返す。

ふふっ、良かったわ。仲良くなれそうね。

ダンも妹の様子に安心したのか、近付いてきて

「俺はダン。ララの兄貴だ。よろしくな、シロ」とシロとララの頭を撫でている。

今日のダンも貴公子のようにカッコイイ。

新緑のような色合いの正装姿だが、チャコールグレーや薄紫の刺繍がバランスよくはまっている。


お兄様も歓迎の挨拶をし、大人たちも何とか状況を受け入れた頃……


『我らはソフィアを守護する者なりー!!

その名は、ビビ!』

『トット!』

『ポポ!

なに、遠慮はいらん。これからはソフィア共々よろしく頼む』


バッバーン!っと、またいつもの如く大きくなったビビたち……が、現れた。


はぁぁ。もうっ!

「ビビ、トット、ポポ!また、その登場!何で普通に現れないの?皆、驚きが増すでしょう?!」

『『『キャハハハハ~』』』

『ソフィア~いつも言ってるじゃん~』

『バッバーン!の方が、カッコイイもん』

『僕たち、登場はこれがいいんだ~』

「もう、早く戻って!皆、怖がるといけないでしょ!」

は~い、と大人しくビビたちは小さくなったが、テオ、ローラ、ソル、エマはぽかんと口を開いていた……あぁぁ、ごめんなさい……。


「す、すげぇ。カッコイイ!!」

「うしゃぎしゃんととりしゃん。りすしゃんが、ぉおおっきいの~!」


ふと見ると、ダンとララは瞳をキラキラさせて、ビビたちを凝視していた。

あらっ?子供には好評なんだ・・・そっか。そうなのね。



わぁーわぁー騒ぎながらも、何とか応接室に入って、一息つく。

「ソフィア様。お誕生日おめでとうございます」急に畏まって、テオが立ち上がった。

すると、メイドから抱えきれないほどの花束を何とか受け取り、ソフィアの前にやって来る。

「こちらは我々とさくらの常連客、そして街の皆がソフィア様にと届けに来た花束です。皆、日頃の感謝を伝えたいと持って来てくれました。我々も同じ気持ちです。

本当に、いつも気にかけて頂いて……本日もこのような衣装と招待までして頂いて……感謝してもしきれない思いなのです。ありがとうございます。

どうか、ソフィア様にとって、幸せな一年でありますように。いつも祈っております」

「まぁ……、……ありがとう。みんな、ありがとう。とっても嬉しいわ」

ソフィアは立ち上がり花束を受け取ろうとしたが、到底ムリな数で……お兄様やステラも手伝って、やっと抱えられた。

色とりどり、さまざまな花が咲き乱れ、それはそれは華やかな花束になっている。

「こんな素敵な花束は初めてだわ!」

ニッコリと微笑んで改めてお礼を伝えた。

その他にも味噌や醤油、小豆に寒天と数多くの食材や調味料も持って来てくれたようで申し訳なくなってしまう。

「沢山いただいて、申し訳ないわ。気を遣わせてしまって、ごめんなさい」

思わずそんな事を口にしてしまったが

「ソフィア様。何をおっしゃいますか。私たちはソフィア様のお祝いに伺ったのですよ。それなのに、こんなに素敵な装いまで揃えていただいて……申し訳ないのは私たちです」

ローラが本当に困った顔をして、ドレスを撫でているので

「ローラ。ドレスはどう?気に入ってもらえたかしら?」と聞いてみた。

「っ!!それは、もうっ!ドレスなんて初めてで!!私がドレスだと思っていた物は、ドレスではなかったと知りました!」

「それっ!分かる!!本物は全然違うもの!生地も着心地も!そして、この美しさ~!昨夜はずっと眺めていたわ」

珍しくエマもテンションが高い。本当に気に入ってくれたようだ。

「私も正装なんて息苦しいかと思っていたのですが……実際はそんな事、全然なくて。やはり体に合った服は全く違うと、初めて感じました」

「私もです!重さもないし、動きやすいし」

うんうん、とテオとソルも頷いている。

「では、たくさん着て、さくらの宣伝もしてくださいね!うふふっ」

「「「「それは、無理です!」」」」

「あらっ、どうして?」

「だって、汚したら悲しいし……」

「大切にしないと、勿体ないですし……」

「でも、しまって置いても何にもならないわ。そうだっ!毎年私の誕生日に仕立てることにしましょ!流行りもあるし、ダンやララは直ぐに成長して着れなくなるわ。来年はもっと早くに準備して、皆の希望のデザインにして。わぁ、素敵!楽しみが増えたわ」

皆が唖然とした顔をしたが

「それはいいな。私もさくらの皆にはいつも感謝してるんだ。ソフィの願いを一生懸命に叶えてくれてるからな。皆への衣装は私から毎年のプレゼントとしよう」

「まぁ、お兄様!ありがとうございます」


兄妹二人で皆の反論を受け付けず、話を終わらせた。




大広間での誕生日会が始まった。

お父様とお母様の登場で、再び固まったテオたちだったが、顔見知りの使用人と気安く話す両親を見て、ほっと安心したようだった。

ビビたち、シロ、ダンとララはすっかり仲良くなり、庭に出て走り回ったりしている。

今日の料理は公爵家が誇るメニューがズラリと並び、料理長たちの気合いが感じられた。ソフィアも手伝おうと思ったのだが、お嬢様のお祝いですからと頑なに断られた……



「お嬢様。お祝いが届いております」

執事のローレンが大きな箱を抱えている。

「まぁ、どなたからかしら」

しかしローレンは答えず、開けるように促すので、不思議に思いながらも開けてみると

「えっ!!」

大きな箱の中には小さな袋や小さな箱。リボンを付けたぬいぐるみやキャンディが詰まった瓶など物凄い量が入っていた。小さな袋や箱の中身もクッキーだったり、リボンだったりと様々ある。

そして、一通の手紙。


「親愛なるソフィア様


お誕生日、誠におめでとうございます。

本来は我々もお祝いに駆け付けたいところではございますが、職務があります故、叶わずにおり、大変心苦しく思っております。


どうかお身体を大事に日々、健やかにお過ごしくださいますよう、我等一同願っております。


我等が慕うソフィア様の幸せは我等の幸せであります。


ささやかではございますが、お祝いの品を届けさせていただきました。

城にお越しの際は、是非我等にもご連絡くだされば幸いにございます。


それでは、良き一年を過ごされますように。



ドリエントル国騎士団一同

代表 騎士団団長 アーサー」


……、……、……。??

「んっ?我等が慕うソフィア様?……ドリエントルの騎士団??団長……???えーーーっ!!

どうして?どうして騎士団~?!」

「どうした、ソフィ。あ〜っ、騎士団からか……最近はソフィ人気が、益々爆上がりだからな」

「なんですか?それ!」

「まぁ、当然だろ?元々あった人気にドルト領の事があったからな」

「……、……」

「気にする事はない。騎士団もソフィを守ってくれるなら安心だ」

「……、……、……」


呆然としたソフィアの元に、またしてもローレンが更に大きく、重そうな箱を持って来た。


「私たちの女神ソフィア様


お誕生日おめでとうございます。

私たちの女神が姿をお見せになった素晴らしい日に感謝しております。


こうしてソフィア様に巡り逢えたこと、私たち魔法省の職員にとってはこの上ない喜びであり、幸せにございます。


くれぐれもお身体を大切になさってください。私たちもソフィア様のご指導どおり休息と食事をしっかりとり、運動も心がけております。


お会いできる日を楽しみにしております。



ドリエントル国 魔法省職員一同

代表 魔法省長官 ジル」


手紙と一緒に入っていたのは新開発の魔道具や、貴重な鉱石などだった。


「あ~っ、これは魔法省からか。なるほど」

お兄様はうんうん言いながら、興味深げに魔道具を手にしていた。


どうなってるの?騎士団と魔法省から誕生日プレゼントが届くなんて……。

この一年でソフィアが置かれた環境の変化が集約しているようだった。




デザートが配られる頃には、お母様とローラ、エマはすっかり打ち解け、流行りの洋服や髪型、アクセサリーの話で盛り上がっていた。

お父様もテオとソルから街の様子や暮らしぶりを聞いて、楽しそうにお酒を振る舞っている。

ダンはララ同様、シロを妹のように感じたのかせっせと世話を焼いていた。

フフフッ。皆、楽しそう。


ソフィアがデザートを食べていると、お兄様が何やら畏まった顔をしたバルトとステラを連れてやって来た。

「ソフィ。二人から話があるよう……」


ダダダダッ、バァ~~ン!


大広間の扉が勢いよく開いた。

「ハァ、ハァ。兄上~!……やっぱり遅くなってしまってますよ~」

「エドモント!言うなっ!!今日の父上と母上はしつこすぎた」

「まったく、俺たちまで巻き添えだよ」

「両陛下の執念のようなものを感じました……」

「私もです……」


髪や洋服を乱しながら息せき切って駆け込んで来たのは……

アルベルト殿下、エドモント殿下、ロベルト様とトーマス、そしてステラの弟でバーネット子爵家の令息、カイルだった。


まぁ、ある意味予想どおりと言うか……

ここからが本番と言うか……



何にしても、まだまだ誕生日会は続くことを意味していた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ