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『ベン~!!』「お父様―!」

王都ルルヴィーシュ公爵邸の執務室。

突然、光が現れたと思ったら!!

ソフィアとポポがぴょ~んと飛び出して来た。

執務室にはベンフォーレとローレン。

目を見開いた瞬間にはベンフォーレの胸に飛び込むソフィアとローレンの左肩に着地するポポがいた。


「ど、どうした!?ソフィア!!

領地で何かあったのか?」

「あったのは間違いはないのですが、

悪い事ではございません。安心なさってくださいませ。

まずは、お母様から預かって参りましたお手紙を。どうぞ。」

直ぐに受け取ったベンフォーレは慌てて読み始め

「なんとっ!まさかっ!!」と言っている。

読んだ手紙を今度はローレンに渡し、

ローレンも急いで読んだ手紙の内容に驚いた様子だった。


「いったい何時から温泉があったのか……

歴代当主から伝わってきていないのだから、気付いていなかった……というのが事実だろうな……。

ポポは入ってきたのか?どうであった?」

『う~ん。地図に印してあるように、屋敷からそう遠くはないんだ。ただ、道があるような所ではないし……人間が好んで立ち入ることはなかったんじゃないかな。』

「なるほど。」

『温泉自体はこんこんと湧き出ていたし、湯量も豊富。源泉温度はかなり熱いみたいだった。』

「素晴らしいな。成分調査は魔法省に依頼せねばならんし、どのように整備するべきか。」


「お父様……森には多くの動物たちが住んでいます。きっと森や温泉を先祖代々、守ってくれていたのでしょう。

クマごろうとクマじろうは、改めて森や公爵家を守ると言ってくれました。」

「うむ。森の住人たちに敬意を払った計画をせねばな、ソフィア大丈夫だよ。」

「ありがとうございます。お父様!」


一度ソファに皆で落ち着き、お父様とローレンは話し合いをしている。


「ポポ。一緒に移動できるのは私だけなの?」

『そうだよ。僕たちが守護するのはソフィアだからね!』

「だから、私だけなのね…

そう、わかったわ。ありがとう、ポポ。」


明日、陛下に報告をし魔法省による調査の手配をするようになるらしい。

お父様は返事となる当面の予定をしたため、ソフィアに手渡した。

「本当はこのまま共に過ごしたいが……皆、心配して待っているだろうからな。近いうちに私も領地に戻るから、それまでは我慢するか。」

ソフィアを抱き上げながら、お父様はぎゅうぅっと抱きしめる。

おっ、お父様。ちょっと苦しいかも――!!


やっと満足したのかソフィアを床に下ろし、気を付けて帰るようにと言われた。

まぁ一瞬で帰れるのだが…はは、はははっ。

「お父様。ローレン。それでは領地へ戻ります。」

「あぁ。皆によろしくな。」

「お疲れでしょうから、早くお休みくださいませ。お嬢様。」

ポポを腕に抱いて再び光に消えた二人だった。



三日後。

お父様とジル長官、ルイ。そして何故か全く分からないが、アルベルト様がやって来た。

シロは大喜びでトテトテとアルベルト様の後をついてまわっている。

「おとーしゃま!いもーとのうさたんでしゅ。」アルベルト様は若干引き攣りながらも可愛いな、と大人の対応だった。


まずは現地調査をしなければならないので、

公爵家騎士団を先頭にお父様、ジル様、ルイ。ビビたち。クマごろう、クマじろうが向かうことになる。

ソフィアももちろん行きたかったが、道がないし危険なので、少し整備をしてからと言われた。お兄様やアルベルト様も行けないので、まぁ仕方がない。

クマ兄弟は身体に合ったクマ用騎士服を着ている。普段から二足歩行をし、筋肉質な二人は背中に剣を背負って、あっという間に騎士たちとも仲良くなった。訓練にも参加し、いざと言う時は四足で走るため、剣は背中派にしたらしい。頼もしいクマ兄弟!!




「ソフィア様に成分分析をお願いしたいのですが。」ジル様に差し出された温泉は濁りのない綺麗なものだった。

「分かりました。」とソフィアは創生の魔法を使う。

ん~っ、随分と複雑に成分が混入しているが……害のあるものはなさそう。この世界にも温泉はある。分類がよくわからないソフィアは、図書室から温泉についての本を借りて読んでいた。読んではいたが…難しい。

とりあえず成分を書いてジル様に渡そうと切り替えて、ずらずらと書き記す。

ふぅ、間違いないわね。確認したメモをジル様に手渡すと

「こんなにですか?!」と驚いていた。

「飛び抜けて多いというものもないですから、単純温泉でいいのですか?」

「まぁ、そうですね。分類はそうなります……が、ルイも見てくれ。」

ルイもソフィアのメモを見て、驚いた顔をしていた。そして、早速報告書を作成するべく二人は作業を始める。


公爵家騎士団はお父様の指揮の元、温泉までの道を整備していた。しかしそれは、最低限のもの。森や動物たちに負担にならないよう源泉から管で温泉を引くことにしたのだ。森の動物たちは源泉が熱いため、川の水と一部合流している地点を利用している。それが源泉付近にあるようで、動物たちの温泉も維持できるように調整するつもりだ。


お母様は得意の土魔法で管を通すのに適した場所を探っている。地図を見ては岩盤のしっかりした場所を確認し、印をつける。騎士数人を引き連れて、普段とは違う逞しさを発揮しているようだ。


ルーカスは必要となりそうな材料を揃え始めていた。アリーとサリーも手伝いの指示をされ、忙しそうだ。



「シリウス。私が手伝えそうな事はないか?」

「アル、とりあえず温泉まで道ができないと……見に行けない……今は皆に任せるしかないな。」

「そうだな……悔しいが、待つしかないか。私たちはまだまだだな……。

ところでソフィアはどうした?」

「あぁ。先程まではジル長官たちと作業していたが……バルト知ってるか?」

「孤児院へのプレゼントを準備されると聞きました。」

「孤児院へか。ソフィアは凄いな。それに比べて、ドルト家のガブリエラは、はぁ。」

「また、何かやったのか?」

「王城で私たちを探していた。夫人とロベルトは領地に戻ったが、ガブリエラは公爵と王城通い。父上の苦言を何だと思っているのやら。」

「ロベルトも苦労するな。まだエドと同じ歳だし、さくらで愚痴でも聞いてやらねば。」

「ドルト公爵家はロベルトに期待するしかなさそうだからな。気にかけてやりたいと思う。」

「アル!ソフィアの所に行ってみようか。気分転換に手伝いをするのはどうだ?さすがにやれることはあるだろう。」

「それはいいな。よし、行こう!」


「アルベルト様。お兄様。ようこそ!」

ソフィアは私室でビビたちとステラ、シロと一緒に何かを作っている。

「それは何だ?」

「アルベルト様。ん、ん~っと昔の日本のおもちゃですわ。」

?、??

「ソフィ。それは私たちにも手伝うことは?」

「もちろんです!とても助かりますわ!なかなかナイフが使い慣れなくて……」

「「ナイフだと!!」」

「はい。竹とんぼを作っています。子供たちに教えるためにまずは自分でと。あっ、材料はクマ兄弟が取ってきてくれたんですよ!」

完成図を書いたノートを二人に見せる。

「とにかく、ソフィアにナイフは危ない!

私とシリウスで作る!」

「そうだぞ、ソフィ。これは男の子の遊びだろう!アルと私に任せろ!」

「まぁ。ありがとうございます。では、私たちは女の子用のおもちゃを作りますわ!」


『トット~。アルベルトとシリウスは過保護だよねぇ。』

『ビビ。同感よ。ソフィアの包丁捌きなんて見事なのに。』

『そうかなぁ。僕はやっぱり心配だよ。』


ソフィアはおはじきを創ることにした。ガラスの中にお花が見えるようにしたい。創生の魔法なら可能なのだ。きっと喜んでくれるわ、ふふっ。

ステラはお手玉。バルトもお兄様たちに加わり皆で作業を始める。シロは怪我をしないか見張る役だ。

しばらくせっせと作業をし、だいぶ完成品が並んだ。

「そろそろ休憩しましょう。それから、外で竹とんぼを飛ばしてみましょう!」

「これは飛ぶのか。」

「ふふっ、楽しみにしていてください。」

休憩後、皆で庭の芝生に出た。

まずはソフィアが手本を見せると、くるくる回った竹とんぼは高く高く上がっていった。

「わぁー。おとーしゃま、しゅごいでしゅねー!」

「あぁ。随分と高く上がるのだな。」

「ふふっ。懐かしいです。」



だいぶ外は寒くなっている。調査や整備に出掛けたお父様たちに温かいものが必要ね……。ソフィアは空を見上げながら考えていた。

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