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『ローレン。今夜は多くない?』

「トット様。すみません。旦那様のお留守が分かっているので、今日を狙っていたのでしょう。」

『何しに来てるの?ソフィアも留守なのに。』

「ビビ様。何か情報がないかと探りに来ているのです。」

『何処に飛ばす?王城の森にする?』

「ポポ様。これらはドルト家の手の者なのです……。今宵、王城はパーティー会場ですのでドルト家の方へお願い致します。」

『いいなぁ。パーティー。』

『しょうがないよ、ビビ。今日はローレンが沢山ご馳走出してくれたし、ソフィアの為にがんばろ!』

『僕、ローストビーフが好きだった!

よし、こいつらさっさと飛ばして僕たちでパーティーしよー!』

『『『おー!!』』』


気絶させられていた侵入者たちは、纏めてぽ〜〜ん!と夜空に飛ばされたのだった。




「ロベルト。妹はどうしたのだ?」

「アルベルト殿下。あの後直ぐに帰らせました……父上も流石に分かったのでしょう。」

「そうか。ロベルトは苦労するな……。」

「エドモンド殿下。私はいいのです、家族のことですから……しかし、皆様に迷惑をお掛けしないかと……。」

「……ロベルト。親同士が不仲だからと、私たちまで影響を受ける必要はない。そう思わないか?勿論、公爵家同士なかなか難しいだろうが……皆、ここに居るのは同世代だ。ゆくゆくは共に国を支えていくことになるだろう。なぁ、アル?」

「あぁ。シリウスの言う通り。今から切磋琢磨し友情も結んでいければ、この国の未来にきっと繋がるだろう。」

「ロベルトと僕は同い年だ。兄上たちに負けないよう一緒に学んでいこう。」

ロベルトはぐっと口を引き結び

「ありがとうございます。ありがとう……私のような未熟者に……ありがとうございます。」拳を握って涙を堪えるように俯いている。

「ロベルト、そう重く考えるな。これからは私たちも相談にのる。一人で抱え込むことはないというだけだ。」

「はい。アルベルト殿下。」


「さぁ。リラックス効果のある紅茶が届きましたよ。王城料理人の素晴らしいお菓子も頂きましょう!私、楽しみにしていたのです。ふふっ。」

「ソフィ。メイドに任せて座っていろ。」

「お兄様。これくらいでは疲れませんよ!」

「私はソフィアの料理の方が好きだがな。」

「僕も!肉まん、また食べたい!ポップコーンに天ぷらも!」

「エドモンド……。王子が食い意地が張ったことを言うな。」

「では、兄上は要らないのですね。」

「そうは言っていない。」

「ふふっ。いつでもお作りしますよ。さくらにも来て頂きたいですが……難しいですわね。」

「騎士たちから噂は聞いてるぞ。そのうち忍んで行かなければ!とエドモンドと言っていたのだ。」

「アルは城を抜け出すの得意だからな。」

「シリウス!」


「皆様、本当に仲がよろしいのですね。」

「ロベルト様。賑やかでしょう?あっ、そうそうあの時の兄妹を覚えていらっしゃいますか?」

「さくらの時のですか?」

「そうです。今はあの子たちの両親がさくらで働いています。裏で兄妹もお手伝いをしてくれているんですよ。」

「さくらで……。そうですか、良かったです。」

「はい。さくらの店主夫妻も喜んでおります。」

「ちょっと待て!ロベルトはさくらに行ったことがあるのか?」

「はい。行ったと言うか……唐揚げと豚汁を配っているのに出会ったのです。」

「何?そんなイベント聞いてなかったぞ!」

「アル……。あんな目立つ所に来れないだろ?ロベルトも忍びの街歩きだったはずだ、そうだろ?」

「はい。侍従一人と行っておりました。」

「それでも、ずるい!僕もやっぱり行きたい!」エドモンド様……大きい声はお止めください……。はぁぁ。

「分かりました。今度機会を見て、ご招待致します。よろしいでしょう?お兄様。

二階には個室もありますし、ね?」

「……ソフィがそう言うなら仕方ないな。直ぐには無理かもしれないが……ロベルトも来るだろう?」

「!!っ、私もよろしいのですか?」

「勿論ですわ。是非今度は店内にいらしてもらいたいですもの!」

「はい!!では、その時は宜しくお願い致します!」


穏やかな時間の中、他愛もない話をしていたが……ここはパーティー会場。遠くから王子たちやお兄様、ロベルト様を狙う令嬢たちの瞳がギラついている。いけない、いけない。

「私、お母様のところに行って参りますわ。」

「なら、一緒に行こう。」

「お兄様、よろしいのですか?アチラで熱心に見つめていらっしゃるご令嬢たちがいらっしゃいますよ?」

「あれはアルベルト殿下とエドモンド殿下の担当だ。」

「酷いぞシリウス!私たちも捕まる前に他の挨拶に行こう。エドモンド!」

「はい。兄上!」

「ロベルト様はどうされますか?」

「侍従と共に今日は失礼させていただきます。妹がきっと、屋敷で騒いでいるでしょうし……今日は貴重な機会をありがとうございました。」

「あぁ。またなロベルト。」

「必ず連絡するから、さくらでな!」

「ロベルト様。お気を付けてお帰りくださいね。また、お会い出来るのを楽しみにしております。」


ロベルトは深々と一礼して、近付いて来た侍従と一緒に帰って行った。

屋敷に着くと飛ばされて帰って来ている父親の部下を目の前にすることになるが……。


「ロベルト様。機嫌がよさそうですね。」

「あぁ。家族にはがっかりさせられ、ショックもあったが……

アルベルト殿下とエドモンド殿下。シリウス様とソフィア嬢に救われた。

図々しいかもしれないが、同世代の仲間?友人……になれそうだ。

今まで、何の為に必死に勉強するのか悩んでいたが……あの方たちと共にある為と考えれば、これからも頑張れる。

家族には言えないが……私は私の為にドルト公爵家を継ぐと決心したよ。公爵領も栄えさせる!」

「ロベルト様!……ようございました。

私は何時いかなる時もロベルト様の味方であり、側におりますゆえ、どうぞ遠慮なく使ってください。」

「ありがとう。あの家は味方が少ないからな……頼りにしている。」

「かしこまりました。お任せください。」

二人は足取り軽く馬車に乗り込んだ。



「母上。」「お母様。」

「あらっ!シリウス、ソフィアいらっしゃい。皆様にご挨拶を!」

リリアンヌは仲の良いご婦人方と歓談中だった。

「ルルヴィーシュ公爵家のシリウスにございます。ご歓談中失礼致します。」

「同じくソフィアでございます。お見知り置きくださいませ。」

「まぁ、素敵なご兄妹!

近くでお会いしたのは初めてですけれど、洗練されたご様子ですわ!デビューされるのが、楽しみですこと!!」

「ふふっ。ありがとう存じます。まだまだこの子たちは勉強中でして、お恥ずかしい。」

「マドレー伯爵夫人でございますね。母上から度々お話を伺っております。」

「あらっ!良い話なら嬉しいけれど、ほほほほ。」

「勿論、素晴らしいお話ばかりです。ソフィアも聞いているだろう?」

「はい、お兄様。マドレー伯爵領の陶磁器はお母様の一番のお気に入りです。伯爵夫人の優雅な雰囲気が感じとれる陶磁器は最高級品で、国を代表するものだと伺っております。」

「特別な時にしか私には出してくれないのですよ、母上は。」

「!!なんてご立派なお子様たちでございましょう!!それにリリアンヌ様!ありがとうございます!」

「あらあら。本当のことを教えているだけですわよ?また、陶磁器を拝見しに寄らせてもらうわね!」

「勿論でございますわ!」


「こちらは財務大臣夫人の……、」

……、……。

……。

覚えたての情報を兄妹協力して披露する。

領地の特産品や力を入れている事業は丸暗記してきた。


しばらくして、兄と二人でほっと安堵する。

何とかなったわね……と、

人並みが割れて王妃様が現れた。

「あらぁ。シリウスとソフィアもここに居たのね?皆様、楽しんで頂けてるかしら?」

「「「はい。勿論でございます。」」」

「王妃様!ご挨拶の時から目を奪われましたが、そのネイル!大変華麗でございますわ!!」

「うふふ。ありがとう。私は薔薇で、リリアンヌは百合。ソフィアも百合かしら?」

王妃様はソフィアの小さく華奢な手を取ると、更に小さい爪に施された百合を見つける。

「まぁまぁ。可愛いわね、ソフィア!」

「王妃様はエレガントですわ!」

「ちょっと私のもご覧なさいな!」

「あら、リリアンヌ。拗ねないで、ふふっ。貴方のは優雅な百合ね!素敵だわ!!」

「そうでしょう?王妃様のは繊細で……ソフィアの言うとおり、エレガントに美しくてよ!」

「ふふ。ありがとう。」


「王妃様と公爵夫人、ソフィア嬢もなんと素敵なんでしょう!初めて見ましてよ!爪にまでお花が咲いて、まるで妖精ですわ!!」

「リリアンヌ!私たちソフィアと一緒に妖精になれたのかしら?」

「王妃様。何でも鵜呑みにしてはいけません。」王妃様とお母様は顔を見合わせ、うふふふふと笑い合っている。親友同士、楽しんでいるような様子なので周りからは温かく見守られている。

しばらくすると、ネイルの方法についての質問が始まった。すると、せっかく練習したのだから二人で踊ってらっしゃいな……と軽い感じでお母様が言う……え、え―――!!踊らなくていいなら別に踊りたくはないのだけれど……慌ててお兄様を見ると面倒な会話に付き合うより、ダンスの方がいい的な顔をしている……いやいや、気持ちは分からないでもないが、社交デビュー前だしダンスは止めとこうよ!とアピールする表情を試みたがスルーされた……。終了……。


ソフィアは諦め、お兄様のエスコートでフロアに出た。大人たちに巻き込まれないよう外側を大きく動きながら踊っている。

途中アルベルト様とエドモンド様。陛下とお父様と目が合ってしまう。まずい……皆キラリと光って見えた。

「お、お兄様。この曲が終わりましたら、先に失礼しませんか?」

「それは、構わないが……簡単には無理じゃないか?ソフィも気付いたろう?

まぁ、身長の問題があるからな……しかし、アルとエドからは逃げられないだろうな。」

「お、お兄様――。何とかなりませんか?」「大丈夫だ、ソフィ。ダンスも上手いし問題ないだろ?」

「大ありです!

デビューもしてない小娘が殿下たちを独占したなどと言われます!

何様のつもりだ。権力を傘に着て偉そうに。病弱娘のくせに生意気だ。屋敷で大人しくしていろ。などとも言われます。」

「……ソフィ。それは言われたことがあるのか?」

「ありません!あぁ、似たようなことを仰る方はいますが……。」

「ガブリエラか?」

「はい。」

「とにかく、ソフィの想像が過分に含まれているのは分かった。大丈夫だ、ここには両親も私もアルとエドも居る。陛下や王妃様だってソフィを守ってくださるはずだ。せっかく練習したんだ、ルルヴィーシュ公爵家の格の違いを見せつけて来い。デビュー前だからこそ楽しめるということもあるだろう?」

「そうでしょうか……?」

「ソフィは今は楽しくないかい?」

「お兄様とこんなに華やかな場所で、思いっきり踊るのは楽しいです!」

「だろう?どうせアルたちには捕まるのだから、楽しめばいい。」

「捕まるのですね……。」

「確実にな。それはそれとして、今は一緒に楽しもう!」

「はい!やはり外仕様のお兄様は輝いていて素敵ですわ!!」

「おいおい。屋敷では残念だと言っているようなものだぞ!」

「ふふっ。そうではありません。どんなお兄様も私は変わらず大好きですから!」

「……ソフィ……。母上のお腹に居る時から可愛かったが、今も変わらず……いや、ますます可愛いな!私の妹!!」

「??(お腹の中から……)ふふっ、ありがとうございます。お兄様!」


小さいながらも優雅にステップを踏み、楽しそうに踊る兄妹は会場で輝いていた。

上質なスカートが翻り、踊りに華やかさを添える。シャンデリアに照らされるシリウスの光沢ある生地が紫に青に色を変えるように輝いていた。


踊り終えて喉を潤そうとしていると、さっと王子たちに差し出された・・・止めて――!

屋敷じゃないのよ――!という心の叫びは伝わらない。

兄は最早クスクス笑っている。

「ソフィア。次は私、その次はエドモンドと決まった!それで今日のダンスは終わりだ!」

「!?そう、で、す、か。分かりました。」

兄は益々可笑しそうで、必死に笑いを堪えているようだが……失敗している。

少しの休憩をして、アルベルト殿下が差し出した手を取ると再びフロアに出た。

皆が気を使って場所を空けてくれる。

「ソフィア。今日のドレスはとても似合っている。シリウスの髪色だな?

今度パーティーに参加する時は私にドレスをプレゼントさせてくれ。」

「殿下。それは恐れ多いことでございますわ。今日の殿下も素敵でございます。」

「ありがとう。ソフィアに褒められるのが一番嬉しい。」

「ふふっ。大袈裟ですわ。皆様、殿下に釘付けですのに。」

「ふんっ。地位に釘付けなのだろう?素の私を知りもしないで。」

「なかなかお会い出来ないですからですわ。」

「私はソフィアに会いに行ければそれでいいから問題ないがな。」

「あらまぁ。今日は随分褒めてくださいますのね。ありがとうございます。」

「本当だぞ!ソフィア!!」

「はい。分かっております殿下。」

絶対分かっていないなと思いながら、せっかくのソフィアとのダンスだとアルベルトは思い直す。

「ダンスが上手いのだな。」

「殿下のリードのお陰です。でも、出席が決まってからは必死に練習しましたわ。」

「体調は大丈夫だったか?」

「!っ、ご心配ありがとうございます。屋敷の者が全面協力でしたので。」

「そうか。ルルヴィーシュ公爵家は皆、仲が良いし団結力があるからな。いつも居心地がいいと思う。」

「それで度々、お城から抜け出すのですね?ふふっ。」

「ソフィア!」

「分かっております。公務に支障がないのであれば、いつでも歓迎致します。」

「そ、そうか。ありがとう。」

親しげに会話しながら、優雅に舞う二人に貴族たちは感嘆のため息を漏らしていた。

年齢よりも大人に見える二人は似合いのパートナーに見える。



少し離れた会場の隅では、今夜の失態を悔やみながら歯ぎしりしているドルト公爵夫妻が……いつもは取り巻いているご婦人たちも今夜は誰もいない。陛下に叱責されたのだ。誰もが目に入りたくないと思っていた。



ダンスの締めくくりの相手はエドお兄ちゃん。優しく差し出された手を取り、二人はゆったり踊り始めた。

「ソフィア。疲れてないかい?」

「はい。大丈夫ですよ、殿下。」

「今日は殿下かぁー。」

「ふふっ。仕方ありませんわ、パーティー会場のここはフロアですもの。」

「まぁ、仕方ないか。それより最近は忙しくしていたのだろう?

困っていることはないか?」

「ふふっふふふふ。」

「?何か可笑しかったか?」

「私は皆に心配されて、幸せだと思っただけですわ。」

「それは、そうだろう。皆、ソフィアが可愛いし大切だからな!最近は大人びてきてはいるが、兄は妹を守るものだ!」

「ありがとうございます。」

「そうそう。そろそろ兄上のミントタブレットがなくなりそうだ。最近一日の食べる量を減らし、ケースを眺めて我慢している回数が増えた。」

「まぁ、なくなれば言ってくださればいいのに。」

「あれでも、ソフィアに負担を掛けまいと遠慮しているのだよ。余裕のある時に創ってあげてほしい。」

「分かりました。殿下はアルベルト殿下をよく見ておられるのですね。」

「あぁ。兄上を尊敬しているからな。僕はこの先もずっと兄上の味方だよ。」

「それはアルベルト殿下も心強いでしょうね。」

エドモンド殿下は本当に優しく穏やかな笑顔を見せた。




や―――っと、王家主催のダンスパーティーが終わった。

帰り際、我が殆どソフィアと話せてない!などと陛下は言っていたが、体力も限界だ。

お父様が陛下を宥め、その隙に失礼して来た。

馬車に乗り込むとひょいとお父様の膝に乗せられる。うん、恒例のやつ。

「ソフィア。疲れたろう?眠っていいぞ。」

「お父様。」父を見上げると目を細め優しく髪を撫でてくれる。

これは抗えないとゆっくり目を閉じた……ソフィアは直ぐに眠りに落ちていく。


「シリウスもソフィアも頑張ったわね。」

「母上、ありがとうございます。」

「皆、ご機嫌だったわ。よくあんなに覚えたこと!」

「ハードな一週間でした……後はソフィアのデビューまでやりたくありません。」

「その前にシリウスも社交界に出るだろう。そろそろ私たちに付いて来てもいいのだぞ。」

「父上。私は留守を守る必要があります。ソフィアが万が一でも、少しでも、危険な目に遭うのを阻止せねばなりませんから。」

「まぁ、それはそうだが……。」

「ふふっ。もう少しよいではありませんか、ベン。早ければ良いというものでもないでしょう。」

「分かった。」




シリウスとソフィアの長い一週間は

無事に終わった。

もう少しで一度公爵領に戻る。


今年は早めに王都に戻る予定なのだが……








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